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みんなが知りたい! 「バイリンガル」の育て方 ~英語保持の心得~

2017.09.25

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海外で生活するご家族にとって、英語習得への関心は絶えません。しかし、子どもたちが学んだ言語を忘れてしまうことについては、あまり認識されていないようです。英語保持の心得について、海外子女教育振興財団外国語保持教室アドバイザーも務める、大妻女子大学大学院 服部 孝彦 教授にお話をうかがいました。

服部 孝彦 教授

服部 孝彦 教授

服部 孝彦 教授

自身も元帰国子女。米国ケンタッキー州立ムレー大学客員教授等を経て現在、大妻女子大学・同大学院教授、早稲田大学講師、言語学博士。国連英検統括監修官、海外子女教育振興財団外国語保持教室アドバイザー、元NHK英語教育番組講師。著書に文科省検定中学英語教科書『ニューホライズン』他142冊。日米間を一年に何往復もしながら、米国の大学での講義・講演、国際学会での研究発表を精力的にこなす。

忘れることは当たり前のこと

言語能力のうち、とりわけ音声に関しては、子どもは小さいほど習得も早い一方、単語などは簡単に「忘れてしまうもの」なのだという認識を持ってください。「忘れる」ことは自然現象であり、当たり前のことです。しかし、保護者は子どもが英語を忘れてしまったことに落胆し、責めてしまうことがあります。大事なことは、「何を忘れてしまったのか」ではなく「まだ保持できている英語」に焦点を当て、子どもの自信をなくさせないことです。

<言語忘却のメカニズムを理解してサポートしよう!>
言語の4技能
言語には4技能あり、それらは「Productive(能動的)」な技能と「Receptive(受動的)」な技能の2つに分けられます。この2つを比較すると、能動的な技能である「話す・書く」力の方が圧倒的に忘れ易いということが科学的に証明されています。また、受動的な技能である「読む・聞く」力を蓄えていれば、仮に流暢に話せなくなったとしても再び能動的な技能の力をつけ、かつての英語力に近づくことが可能なのです。その意味では「読む・聞く」力は英語力の根幹をなす力といっても過言ではなく、失ってしまうと0からのスタートになってしまいます。

言語忘却のメカニズム

言語忘却のメカニズム

言語忘却のメカニズム

―では、言語忘却にはどう対応すれば良いの?-
◆ 「忘却する」とは、脳の中にある単語の知識を取り出す力が「錆びつく」ということ。
→毎日使うことで、遅らせよう!
◆ 「発音」は一度身につけると、ほとんど忘れない。
→ 自信を持たせるために、積極的に褒めてあげよう!
◆ 「聞き取る力」も忘れにくい。
→英語特有の強弱のリズムは憶えている。 大人が聞き取ること
ができなかった英語の音を、子どもは聞き取れているはず。
その点も認め、褒めてあげよう!
◆ 「英語ができてよかった」ということを常に体験させ、モチベーションを上げる。
(例: 同級生が知らない英語の記事を発表・説明するなど)

言語習得に適齢期はある?

9~12歳の臨界期が終わる以前に英語環境にいると、ネイティブ・スピーカー並みの発音を習得することができます。抵抗なく仲間に入ることのできる小学校低学年で海外に行き、高学年で帰って来るというのが一番英語習得に取り組みやすいでしょう。9歳以降の抽象的な考え方ができている年齢であれば認知力も発達しているため、英語を保持しやすくなります。

年齢による言語忘却

小学校1・2年生 基本的な英会話能力は身につくが、忘れるのも早い。
小学校3年生以降 この年齢になるときれいな発音を失うことはほとんどない。

小学校5・6年生
それ以降

読み書きができ、認知力のあるアカデミックな力を
持つようになり忘れにくくなる。
英語の「習熟度」が高いほど忘れにくい。

英語を保持するためのヒント

● 本人の興味に合わせて「読む」

「読むこと」はとても大切で、目安として1ヵ月に1冊程度英語の本を読んでいれば保持は可能です。読むことは高度な認知力を必要とするため、英語が保持できている子は読むことが好きな子が多い傾向があります。保護者は子どもに本を読ませたいと思うがあまり、自分で勝手に選んでしまいがちです。しかし、気をつけなければならないことは「子どもに選ばせる」ということです。保護者は子どもに対して非常に期待度が高いため、つい、いろいろなことをやらせたくなるものです。しかし、「本人の興味」を尊重することが一番大切であることを忘れてはいけません。

● 上質な英語を「聞く」

「聞くこと」が大切なのは言うまでもありません。私がよくおすすめするのはドキュメンタリーを聞くことです。例えば「ディスカバリーチャンネル」はしっかりとした英語のナレーションが多く、上質な英語が耳に入ります。帰国後は英語に接する機会が減るため、できるだけ質の良い英語をインプットすることが大切です。

帰国後の取り組み方

英語圏にいる方は、一般的に1日8時間程度は英語に接しているものです。帰国後は、勉強という感覚ではなく以下のポイントに心がけながら、好きなことを毎日少しずつ続けることが大切です。
◆ 最低でも1日30分 …… 1週間に1度まとめて英語に取り組むので はなく、毎日少しずつ続けることが効果的。
◆ 保護者が子どもと一緒に英語に取り組む …… 勉強だと捉えず、楽しく触れるよう努める。

帰国後の「学校選び」のポイント

「学校選び」では、単に進学実績を見るのではなく、先生が帰国生のことを十分理解しているか、帰国生のためのカリキュラムが整備されているか、そして帰国生の割合などにも注目しましょう。帰国生やその保護者をサポートしてくれる核となる先生がいる学校であれば、全校に帰国生受け入れの意識が普及しているため、帰国生はのびのびでき、英語が身近なものであり続けます。いかに寄り添ってくれるか、カリキュラムがきちんと構築されているかを見極めることが重要です。

保護者の皆さまへ

私は常々「帰国後は引越しの荷ほどきをするよりも先に、まずは『英語保持の環境』を整えてあげてください」とアドバイスをしています。親御さんには、お子さまにとっての絶対的な味方でいていただきたいと思います。お子さまはその都度、環境に適用しようと必死に頑張っています。たとえ新しい環境で辛いことがあっても、親御さんが温かく見守ってあげることで、めげずに踏ん張ることができるのです。

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