小学６年生からローカルスクールへ

　シンガポールに来た当時、私は日本の学年で小学6年生でした。シンガポールのローカルの小学校に編入しましたが、当初英語は“Hello”くらいしかしゃべれず、授業はただ座っているだけでした。先生やクラスメートが積極的に話しかけてくれましたが、全くわからず反応もできず、恥ずかしいのと申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

　「日本に帰りたい」とばかり思っていたその頃の楽しみは、水泳、バレエ、ピアノのお稽古でした。いずれも日本でも習っていたものをシンガポールでも続けることができ、言語能力を必要としなかったのが良かったです。また、学校の中国語の授業は英語以上についていけなかったため、中国語も習い始めました。中国語だけでなく中華料理や中国の文化なども教えてくださるとても良い先生にめぐりあい、徐々に楽しく学ぶことができました。

　シンガポール時代の一番楽しかった思い出は中学校での部活動、ソフトボールです。ソフトボールのスポーツ推薦でローカルの中学に上がり、代表チームや社会人チームにも所属したので、同年代だけでなく年齢も職種も違うさまざまな人との出会いが世界を広げてくれました。

　日本語については特別な勉強をしませんでしたが、シンガポール滞在中も日本語の本を読むのが大好きだったので、日本語が衰えたとは感じませんでした。

3ヶ月の塾通いと高校受験

　やっとシンガポールの生活にも慣れ、友達もたくさんできて将来の目標に向かって頑張り始めた中学3年が終わるころ、日本への高校進学を決意しました。ローカルスクールは1月から始まり10月末で終わるので、この決断はまさにぎりぎりのタイミングでした。それから入試までの3ヶ月間、帰国枠受験で必要な英・数・国を塾で勉強しました。一番苦労したのは数学です。学習範囲がシンガポールと日本の中学では全く違っていたため、受験までに全範囲を学びきれませんでした。

　日本の高校に無事入学できたものの、進学校だったため勉強全般が大変でした。特に社会・理科は中学校の基礎が全くなかったので一から勉強し直しました。勉強は苦労しましたが、振り返ってみると楽しい高校生活でした。

大学そして社会人へ

　現在は、大阪大学で国際ビジネスコミュニケーションのゼミに所属し、英語ずくめの学生生活を送っています。 また高校から始めた陸上競技を大学でも続けているため、その練習が週に5日ほどあります。

　来春からはIT企業のSE（システムエンジニア）として働く予定です。東南アジアを中心に海外へ行くことも多いと思うので、シンガポールで習得した英語と中国語を活かして仕事に従事していきたいです。そして、シンガポール滞在で培ったコミュニケーション能力をうまく活かせたらと思っています。

シンガポールの皆さんへ

　シンガポールにいると、周りに日本人が少ない状況の方、英語ばかり勉強することにつらい思いをしている方もいらっしゃるでしょう。小学生でシンガポールに来た時の私もそうでした。また、日本と異なる勉強や日本への帰国を意識した学習など、何かと大変だと思いますが、ぜひ好きな習いごとやスポーツも大切にしてください。勉強でつらい時きっとそれらが別の形で助けてくれると思います。私にとってはソフトボールや陸上に打ち込んだことが心の支えになりました。

　今の生活で何か難しいことがあっても、シンガポールでいろいろ頑張ったことを思えば何のこれしき、と思えるようになりました。今、皆さんがシンガポールで経験していることは、将来絶対に役にたちます。あきらめずめげずに自分を信じてください。

お母様より

　娘が1学年落としてローカル校に入学できたのは小学5年生の4学期でした。英語、中国語の授業が始まり、年が明けるとすぐPSLE（ 小学校終了国家試験） の準備をしました。ローカルの中学に進学し、ようやく慣れたと思ったら日本の高校入試の準備が始まり日本の高校に進学しました。そしてやっと追いついたころには大学入試の時期になっていました。娘にとっては波乱万丈、激動の時代だったと思います。そんな過酷な環境の中でも、常に友達や周りの方々に助けられ、それぞれの時代を謳歌し目標意識の高い自立した娘に成長してくれました。娘がコミュニケーション能力、自己表現力、語学力を身につけることができたのにはシンガポールの生活が大きく関わっています。4月からはいよいよ社会人です。大きく世界に羽ばたいてくれることを願っています。

※大阪大学に関する情報はこちら
https://spring-js.com/japan/674/

『海外生の今』バックナンバー
https://spring-js.com/global/global02/kaigaisei/

※本文は2012年9月25日現在の情報です。