特集記事
大学の挑戦  慶應義塾大学 ~真の国際化を目指して~

経済の再生を目指す今の日本。世界と対等に渡り合える人材の育成は日本にとって喫緊の課題です。教育分野での開国、日本の内なる国際化のために、最高教育機関である大学が新たな挑戦を始めています。
「世界で活躍できる人材」の育成・獲得に向けて各大学が取り組む国際化戦略とは何か、シリーズでお届けします。

150 年以上の歴史に裏づけられた国際化

 慶應義塾大学は創立者福澤諭吉の意志を受け継ぎ、その歴史を通じて国際化を推進してきました。グローバルに活躍する人材が求められる中、本学では各国の大学・研究機関との学術交流・学生交換プログラムの更なる充実をはかり、また国際センター、日本語・日本文化教育センターや各学部・研究科による特色を持った国際交流・国際連携活動を着実に実施してきました。その結果、現在大学で受け入れている留学生数は2012 年度に約1,200 人、派遣留学生については短期プログラムの学生も含め約500 人となっています。

国際化拠点整備事業(グローバル30)によるさらなる国際化

 2009 年度に採択された文部科学省による「国際化拠点整備事業(グローバル30)」(以下G30)を通じて、慶應義塾大学の国際化は大きく進展しました。G30 においては、英語で学位取得可能な学部・研究科のコースの設置や、ダブル・ディグリー等の国際的教育プログラムの新設・拡充、大学間交流協定等の拡大、留学生受入体制の充実等が図られてきました。これにより、留学生の増加と共に、日本人学生は本学にいながらにて、異文化・国際体験が可能になりつつあります。

① 英語で学位取得可能なプログラム
 従来から、一部の部門において実施されていましたが、このうちG30 により以下の学部・研究科において新たに英語のコースを開始しました。特に情報技術とその社会での活用を英語で学ぶ「GIGA プログラム」は、慶應義塾の歴史始まって以来初めて、日本語能力を要件とせずに学部を卒業できるプログラムです。
● 環境情報学部(GIGAプログラム):http://ic.sfc.keio.ac.jp/
● 大学院経済学研究科
● 大学院システムデザイン・マネジメント研究科

② ダブル・ディグリー・プログラム
 グローバルな視野を持ち世界を舞台に活躍できる人材を育成できるよう、いくつかの大学院ではダブル・ディグリー・プログラム(以下DD)を実施しています。G30 によりDDの拡充が図られ、大学院経済学研究科、大学院理工学研究科において海外の協定校との間でのプログラムが設置されたほか、3 研究科(大学院経済学研究科、大学院商学研究科、大学院メディアデザイン研究科)が関わるCEMS MIMプログラム(欧州のマネジメントスクールとの大学院学生交換プログラム)もおこなわれるようになりました。

③ 大学間交流協定等の拡大
 現在、海外のトップクラスの大学約250 校と交流協定を締結しており、そのうち、100 校以上の大学と学生交換を実施しています。

④ 留学生受入体制の充実等
 全学の学生向けに開講されている「国際センター講座」カリキュラムの見直し・拡充が行われました。英語により授業が行われる「国際センター講座」科目が日本、東アジア、東南アジアを中心とした内容に体系化され、留学生の学習ニーズに応えるものへと整備されました。「国際センター講座」以外にも、各学部・研究科において特色ある「英語設置科目」(語学科目は除く)が設置されており、現在180 以上に上っています。

在学生の国際的な学習活動支援

 一方、G30 以外でも、慶應義塾大学では次のような取組みをおこなっています。
① 海外トップクラスの大学における短期海外研修プログラムの拡充・実施
 全学部の学生を対象にした短期海外研修プログラム(夏季・春季)が2013 年度に英国、米国の大学で9 プログラムが実施され、約240 名の学生が派遣される予定です。その他、学部・研究科にて実施されている独自の単位取得可能な短期プログラムも50以上設置される予定です。
② 休学中の学費減免制度の実施
 2009 年度より、「休学」扱いで留学する場合の学費減免制度が実施されています。従来は、学部で認められた私費留学の場合に学費減免制度が適用されていましたが、「休学」扱いの語学研修や上記以外の私費留学の学生にも学費減免を適用することで、学生にとって渡航しやすい環境を整備した結果、さまざまな形で海外で学ぶ学生の数が増加しています。

未来創造塾 ―慶應義塾のグローバル・ゲートウェイ―

 2015 年4 月の湘南藤沢キャンパス(以下SFC)開設25 周年に向け、SFC に「未来創造塾」を開設します。「未来創造塾」は慶應義塾のグローバル・ゲートウェイと位置づけ、地球視点の課題に取り組む一大拠点です。最大650 名収容の大規模滞在型教育研究施設には、世界中から優秀な学生や研究者を積極的に受け入れ、世界最高水準の研究教育を推進します。学生は言語やデジタルスキルなどの基礎力を強化する滞在型授業、社会で活躍する卒業生や先輩による協創型滞在プログラムを体験し、グローバル社会で生きていくために必須の素養を集中的に身につけることができます。

「一身にして二生を経るが如く」

 福澤諭吉は慶應義塾が創立された幕末の時代を、「恰(あたか)も一身(いっしん)にして二生(にしょう)を経(ふ)るが如く」と表現しました。まるで一人の人間が二つの時代を生きるような、大きな変化を目の当たりにした時代を反映させた言葉です。私達が生きる現代も当時に勝るとも劣らない大きな変化に直面しています。慶應義塾大学は、グローバル社会を豊かに生き、リードする人材を育成します。

慶應義塾大学 http://www.keio.ac.jp/

※本文は2013年4月25日現在の情報です。

過去の掲載大学はこちら https://spring-js.com/japan/japan01/challenge/

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