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日本人学校英語教育への取り組み

シンガポール日本人学校中学部 英語教育への取り組み

2012.11.23

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~英語力とコミュニケーション能力の向上を目指して~

シンガポール日本人学校中学部での英語教育は、英語科(「英語」と「English Experience(Ex)」)の授業のほか、実技4教科(保健体育、音楽、 美術、技術家庭)を英語で学ぶ「イマージョン教育」を展開しています。
 中学部は、卒業後大半の生徒が日本の高校へ進学することを希望しているため、受験に向けた英語指導を充実させています。一方で、海外で学ぶからこそ身につけられる英語教育も重視しています。今回は中学部にうかがって実際に授業の様子を見学させていただきました。

英語科「英語」と「English Experience(Ex)」

 英語科の授業には「教科書に沿った英語の授業(英語)」と「英語を実際に使って活動する授業(Ex)」の2種類の授業があります。

 英語の授業は1クラスを3レベルに分けて少人数で行われます。教科書の同じ単元を扱いながら、日本人教師が基礎を教えるレベルからネイティブ教師が英語だけで授業を行うレベルまで対応しています。

 Exの授業ではレベル分けをせず、ネイティブ教師が中心となり合計3名の教師陣で英語を使った活動を指導しています。教科書で学んだ知識を使い、実践型・体験型の学習を提供しています。

【英語(中2)】

◎Basicクラス

 日本人教師が教科書の内容をしっかりと教えるクラスです。授業の導入に前回の復習を行い、文法や発音などを確認していきます。次に教科書の基本文を学び、プリントを使って否定形や疑問形、短縮形にする場合のポイントを押さえました。取材当日は8人の生徒が和やかで楽しい雰囲気の中、集中して学習に取り組んでいました。

◎Intermediateクラス

 日本人教師が教科書を中心に応用問題も展開するクラスです。授業の導入に外部試験への生徒の関心を高める取り組みの一つとして英検のリスニングの問題を実施しました。教科書を使った学習は、生徒に応用表現を活発に発表させながら早いテンポで進みました。同じ構文を使いつつ、読解力が必要な問題にもチャレンジしました。

◎Advancedクラス

 ネイティブ教師が教科書の内容を英語で確認した後は、その単元の文法を使った独自のプリント学習を行いました。まずはプリントに描かれている部屋の絵を説明し、次はそこで実際に何が起きているのか想像して説明する練習をし、最後に自分の「夢の部屋」を考えて発表するという段階を踏んだ授業が楽しく展開されました。教室内には教師が毎週選ぶ英語の新聞記事が貼られるなど、学習意欲を高める工夫が見られました。

 

◎英語科主任:畑 宏幸 先生のお話

 学習指導要領の改訂に伴い、英語科の授業は週3時間から4時間に増えました。3時間の英語の授業は習熟度別に3レベルに分け指導します。生徒の習熟度は年4回の総合考査の結果や授業中の熱意などから総合的に判断しています。総合考査の範囲は共通の学習部分だけですが、全体のレベルが高いことを反映して通常の公立中学より問題量が多くなっています。増加した1時間分をExの授業に充て、クラス全員が一緒に英語活動に取り組んでいます。

 当地は英語を実際に使う環境があるので、生徒たちの英語学習へのモチベーションは非常に高いといえます。それに応えるため、毎週1回英語科で部会を開き、ネイティブ教師も含め教師全員で担当クラスの様子、教材作り、授業準備など共通で確認することを話し合います。また、より発展的な内容を授業に織り込んだり、TOEIC Bridge®を生徒全員に学校で受験させたりといった独自の取り組みも行っています。

◎Ex 担当 Roger R.CALAIS 先生のお話

 英語の授業で学んだ言語知識を「実際に使ってみよう」という授業を展開しています。コミュニケーションの実践の場を提供することを目的にしているので、プロジェクト形式の活動を多く取り入れています。直近では、1年生は自分たちの学校を紹介するビデオの製作発表、2年生は日本の文化を紹介するビデオの製作発表、3年生はスピーチコンテストに取り組みました。

 また、例えば3年生の美術で「アボリジニのアート」を学ぶことを受けて、Ex授業では「アボリジニの自分のストーリー」を英語で書いてみるといった教科を横断した連携を考えた授業も展開しています。

 日本人の生徒は勤勉なので日本人学校で教えることは楽しいです。

実技4教科(保健体育、音楽、美術、技術家庭)のイマージョン教育

 「イマージョン(=浸す)」という言葉の通り、英語に浸す学習環境を作るためにネイティブ教師が中心となって英語で授業を行います。学習指導要領に沿ったカリキュラムでありながら、イマージョン教育ならではのユニークな工夫が随所に施されています。

【体育(中1女子・中3男子)】

 中1女子は体育館で平均台を使った器械体操を行いました。平均台やマットを準備するときに「『並べる』って英語で何て言えばいいの?」と英語のできる友だちに確認しながらネイティブ教師に質問する様子が印象的でした。英語が理解できない生徒も教師とジェスチャーでコミュニケーションを取りながら、平均台の上でポージングを決めていました。

 中3男子はプールで水泳の授業を行いました。ネイティブ教師が見守る中で各自がクロールや平泳ぎ、バタフライの練習をしました。途中ゴーグルが壊れてしまった生徒は、自らネイティブ教師に相談し新しいゴーグルと交換してもらうなど、英語でのコミュニケーション能力の高い生徒の姿もうかがえました。

【音楽(中2)】

 今回は「アイリッシュ音楽」について学びました。ネイティブ教師がプロジェクターと映像を使ってアイリッシュ音楽で使われる楽器や独特のスタイルなどを説明し、生徒たちは用意されたプリントに記入します。教師が一人ひとりの理解度を確認しながら授業を展開していました。

 アイリッシュ音楽を使った舞台作品「River dance」も鑑賞し、アイリッシュダンスの足さばきと音楽の表現力の高さに生徒たちは驚いた表情を見せました。音符の名称を英語で確認する場面では、ネイティブ教師が「Who can write a quarter note ?」と質問すると、真っ先に挙手した生徒が黒板に「4分音符」を書くなど、積極的に授業に参加する様子も見られました。音楽担当の日本人教師も生徒たちが理解をしているか常に確認していました。

授業の際にプリントが配布され、生徒は映像を見ながら単語を記入していきます。

【美術(中3)】

 今回の授業は、オーストラリアの先住民族・アボリジニのデザインを使ったブーメラン作りです。アボリジニの歴史や文化、アボリジニが表現するシンボルのデザインをプリントや映像で学んだ後、自分なりのストーリーを作成し、オリジナルのブーメランを作成します。ネイティブ教師が卒業生のデザインを紹介しながら、「自分自身のシンボルを探してみよう」と生徒たちにアドバイスしました。

 美術担当の日本人教師も必要に応じてサポートをしていました。

プリントと映像を通じてアボリジニのシンボルを学び、これらを使ってデザインした自分オリジナルのブーメランを作成します。

英語科「Ex」の授業とも連携し進めています。

【技術家庭(中3・家庭科)】

 この日は「クッション作り」。生徒それぞれがデザインしたクッションを作り上げていきます。当日はネイティブ教師のほかに、家庭科担当の日本人教師も加わっていました。英語が堪能な生徒でも、裁縫用具やミシンの部品の単語を知っている生徒はほとんどいないので細かい説明や作業が必要なときに日本人教師がフォローします。ただ、あくまでも日本人教師はネイティブ教師のサポート役で通訳はしません。生徒自らネイティブ教師にアドバイスを求め、自分のデザインをどうやったら実現できるかを相談し、教師もわかりやすい単語を連ねてゆっくりと会話していました。

編集部の感想

 学習指導要領に沿って高校受験に向けた指導も行いつつ、実技教科も英語で学んでいることに驚きました。「編入したばかりの生徒はなかなかネイティブ教師に話しかけられないが、何かをきっかけに一度言葉が出るようになると急に質問できるようになる」という話に、生徒たちに対して単に「英語を学ぶ」時間を与えるだけではなく、言語学習で最も大切な「外国の人を前にして感じる壁を乗り越える機会」を与えているのだと思いました。美術とExの授業でテーマが共有化されるなど、教科間の横のつながりを意識した取り組みは、これからますます必要になるアプローチだと実感しました。

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