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グローバル教育

企業からの声

三井物産株式会社 専務執行役員、アジア・大洋州 本部長 アジア・大洋州三井物産株式会社 社長 森本 卓氏

2019.01.10

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「人を育てる」という意味では、日本人でも外国人でも同じだと考えています。

一つのメッセージとして、“Bloom once where you are planted.”(「植えられた場所で、一度咲きなさい」)と伝えています。与えられた条件を嘆く前に、「よし、一回咲いてやろう」と精一杯頑張る気概を持って欲しいからです。これは、当社が目指す企業文化でもあります。

グローバル時代を迎えた今、企業が求める人材、教育とは何でしょうか。
企業の方からお話をうかがいました。

三井物産株式会社 専務執行役員、アジア・大洋州 本部長 アジア・大洋州三井物産株式会社 社長 森本 卓氏

Q.御社の紹介をお願いします。

当社は総合商社として長きにわたり、人の暮らしと国づくりを通して世界経済の発展に貢献してきました。1876年に旧三井物産が、第二次世界大戦後の解体を経て、1959年に現三井物産が設立されました。シンガポールに支店が開設されたのはその前身である第一物産時代の1957年のことです。現在は世界66の国と地域に136の拠点を擁し、連結決算対象会社は472社、従業員数は42,000人を超える大規模な組織になっています。

戦前、旧三井物産は「貿易立国」という日本のビジョン・ミッションに沿い、材料の輸入や加工製品の輸出を主な事業としていました。現三井物産はグローバルなネットワークと総合力を活かし、時代の変化を敏感に捉えながら新たなビジネスを開拓し続けています。

Q.「人の三井」と称せられるほど、「人」を大切に「教育」を重んじると伺いました。社員教育はどのようにされていますか。

「人を育てる」という意味では、日本人でも外国人でも同じだと考えています。総合商社はグローバルで幅広い事業を手がけていますので、いかに社員を育て、やる気を出させるかが肝要です。一つのメッセージとして、“Bloom once where you are planted.” (「植えられた場所で、一度咲きなさい」)と伝えています。ここの土地は痩せているとか、陽が当たっていないなどと嘆く前に、「よし、一回咲いてやろう」と精一杯頑張る気概を持って欲しいからです。これは、当社が目指す企業文化でもあります。厳しい環境でも花を咲かせ実をつけられる人は、どこに植えてもまた茎をのばし、花を咲かせるでしょう。そして、このような人は誰からも信頼され尊敬されるものです。これは古今東西共通でしょう。

植物を育てるには必要な要素があります。それは、土壌(企業文化や職場そのもの)、水(給料)、太陽の光(上司・先輩の導き)、肥料(すくすくと育てるための教育)、農薬(悪い虫がつかないように指導)そして二酸化炭素(職場環境)です。成長しようとする意志は自分自身の力に他なりませんが、会社は適切に水や肥料を与え、社員の成長を支えることが重要な役割だと考えています。

当社には、いくつもの教育プログラムがあります。昨年の着任以来、当地でも優秀な現地スタッフを育てるための研修に予算と時間をかけています。変化が常態化する環境の下でも、本社・各拠点・駐在員・現地スタッフ・連結対象会社のグループとしての総合力で、将来に向けて新しいビジネスを創出していくためです。どこで雇われたかに関わらず、皆が日々切磋琢磨し、自らの成長も感じながら互いの多様性を認め、包摂的に一つの目標に向けて頑張っていく社風があります。

今後、当社の成長の源泉は、よりグローバルな市場に益々シフトしていきます。人を育て、世界各地の市場で活躍できる人材を求めながら、「ダイバーシティ&インクルージョン(職場の多様性と包摂性)」を実行することが、次の世代に対する責任だと考えているからです。

教育を大事にする姿勢は、社内だけにとどまりません。当社の教育に関する社会貢献活動についても、お話ししましょう。アジア・大洋州域内では、8つの活動を行っています。例えば、71年にオーストラリアで日豪の相互理解・親睦促進を目的とし設立された「三井教育基金(Mitsui Education Foundation)」があります。全豪から大学生を選考し、3週間の日本研修で文化・歴史・ビジネスなどを学んでいただくもので、累計で337名を輩出しています。92年にインドネシアで設立された「公益信託三井物産インドネシア奨学金」では、日本とインドネシアの交流と同国の発展に寄与する人材の育成を目的としています。累計で44名の学生を支援し、内7名は日本で博士号まで取得しています。この他にも、シンガポール、ベトナム、タイ、カンボジア、ミャンマーで教育の発展に直結する社会貢献活動を行っています。

Q.グローバル企業として日系企業のアイデンティティをどのように伝えていますか。また、工夫されている点はありますか。

日本企業として日本人が大切にする価値観、つまり、「誠実さ」や「勤勉さ」、「謙虚さ」や「自己犠牲の精神」などは日々の仕事の中で体現していくよう努めています。日本で生まれ世界に羽ばたいた会社として、三井物産の心と価値観や歴史を伝えながら、「人々の暮らしづくりから、国づくりまで」(Helping people thrive and nations grow)、現業を通じて世界経済の発展に貢献している、と社員に認識してもらうためです。

アジア・大洋州地域は、世界経済の中でも高い経済成長率を有する地域です。過去に戦争や内戦、貧困や飢餓などの困難な状況を経験した国も多く、戦後の復興と経済成長を見事に実現した勤勉な日本人と日本企業に対する一定の「尊敬(Respect)」を持っていただいている、と強く感じています。

現在私は、アジア・大洋州の東はニュージーランドから西はパキスタンまでの15ヵ国25拠点を管轄しています。経済の状況だけでなく歴史や文化、宗教においても実に多様性に富んだ地域ですので、スタッフを束ねるためにアジア・大洋州本部の「長期ビジョン」を8ヵ国11名のメンバーで作成し掲げています。その一つに“Local Depth for Global Reach, Global Reach for Local Depth”(「地域創生は世界展開のために。世界展開は地域創生のために。」)があります。その土地に生まれ育った人がその国の文化や産業、企業を最も良く理解しているものですが、グローバル企業としてはその土地に留まるだけではなく、世界経済へと繋がる発展性をも追求しなくてはなりません。逆も真なりで、グローバル市場からローカル市場へ入っていくビジネスもあるため、その相関性を日々の業務の中で常に意識してもらうよう努めています。これらのビジョンは、私の社内メールでボトム・メッセージに入れ、日常的に目にしてもらいながら具体的行動を呼び起こしています。

Q.御社が求める人材について教えてください。

当社の長い歴史の中で変わらぬ価値観に、「挑戦と創造」、「自由闊達」、「人材主義」があります。ボーダーレスにグローバル化している世の中では、異文化に対する適用力、多様性への受容力、そして大学で学んだ専門的知識が求められます。また、人格の土台として、誠実であり信頼できること、そして物怖じしない胆力は、当社に限らず必要な素養でしょう。グローバルである環境は今や当たり前となりました。世界を相手に闘わなければ、日本における次の経済成長はないでしょう。その意味では、変革を恐れずリードし、多様性を受容しながらリスクを積極的に取る姿勢、そして何より、謙虚さとグローバルに通用する教養を備えることはもはや必須の条件だと感じています。

新卒採用では大学名や英語力などで足切りをすることはありません。人物本位で、当社の理念や価値観に共感して将来それを体現してくれる学生に来て欲しいと考えています。例年6,000~8,000人を超える応募がありますが、そのうち4,000~6,000人は、現場の社員と人事担当者が実際に一人ひとり面接を行い、学生の目線に立った採用をしています。なぜそこまで採用活動に力を入れるのか、と聞かれることもありますが、これこそが「人の三井」と呼んでいただいている所以と考えています。仕事は常に人と人との営みです。特に商社は世界中を飛び回り、現場を見て話を聞き、それを価値ある情報に変えていくという地道な作業の積み重ねです。それゆえ環境の変化を自ら察知し、変化を続けるビジョンを行動に移せる人間的魅力のある人に来ていただきたいと思っています。

一部の方には有名大学出身者しか入れないと誤解されているようですが、学生さん自身が最初から諦めてしまい応募されないのは残念だと感じます。多くの個性が光る多様な学生さんが、果敢に挑戦してくださることをお待ちしています。

Q.海外で暮らすご家族へメッセージをお願いします。

教育の土台として学ぶものは多種多様ですが、倫理的・道徳的な価値観や全人的な教育は、家庭教育を通じて育まれていくものだと信じています。アジアの著名な政治家の方が「日本人はなぜあんなに躾がいき届いているかを知りたい」とおっしゃいました。躾を通して育まれる人格は「コミュニケーション能力」の基礎として、お子さまの将来に大きく影響する資質となるでしょう。親御さんにはぜひ、あらゆる能力の基礎になる家庭教育の大切さを改めて感じていただきたいと思います。

マザー・テレサのお言葉に「思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから」とあります。この言葉の意味するところを、子どもの頃からご両親に教えられていれば、お子さんが社会人になっても活躍できる資質が、自然と身に付くのではないでしょうか。

会社概要

三井物産株式会社

総合商社として、世界66の国と地域に136の拠点を擁し、連結決算対象会社は472社、従業員数は42,000人超。鉄鋼製品、金属資源、プロジェクト、モビリティ、化学品、エネルギー、食料、流通事業、ヘルスケア・サービス事業、コンシューマービジネス事業、ICT事業、コーポレートディベロップメントの各分野において、全世界に広がる営業拠点とネットワーク、情報力などを活かし、多種多様な商品販売とそれを支えるロジスティクス、ファイナンス、さらには国際的なプロジェクト案件の構築など、各種事業を多角的に展開している。

『企業からの声』バックナンバーはこちら
https://spring-js.com/expert/expert01/fof/

森本 卓 氏

京都府出身。

1981年早稲田大学商学部卒、三井物産株式会社 本店入社。

87年サウジアラビア駐在。

96年米国ハーバード・ビジネス・スクール・エグゼクティブ・コース修了。

2002年米国公認会計士(CPA)試験合格。

ニューヨーク本店勤務を経て13年執行役員、16 年常務執行役員。

17年より現職。

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