前回は「母語の確立」について大切なポイント3点のうち2点につい てお話しいたしました。 今回は最後の3点目についてお伝えします。
3. お子さんの様子を見ながらストレスをためさせない工夫をする。
これについては、簡単なようで実はとても難しいことだと思います。 次のような経験がある方も多いと思います。
◎「命令口調」で言ってしまう。
(例)「日本語で言いなさいって言っているでしょう?後であなたが 困るのよ!」「日本に帰ってから困ってもお母さん知りません!」
◎いちいちうるさく言って、英語を日本語に直して話させたい。
(例)「お母さんに英語で言っても分かりません」「日本語で言いなさ い!」
◎「家庭ではきちんと日本語で話しているからきっと大丈夫」と安心し ている。
◎インター校やローカル校の勉強で精一杯で、なかなか家庭で日本語 へと導く余裕が無い。
親御さんは毎日仕事や家事、子育てに追われ忙しくされていること でしょう。各ご家庭の状況もそれぞれ異なっていると思います。
忙しいとは思いますが日々のお子さんの様子をしっかり見守り、ス トレスがたまったせいで、不眠や体調不良、情緒不安定につながって いないかについて、充分に心を配ってあげて下さい。
幼稚園や学校、習いごとの先生に相談をしたり、お子さんの様子に ついて聞いてみるのも一案かもしれません。ご家庭では気付きにくい ことでも、客観視できる立場の方ですと気付き易い場合もあるでしょ う。
ご家庭ではお子さんが努力していることを充分に褒め、前回お話し した方法も少しずつ家庭で実践してみて下さい。時には休ませたり、 長期の休みにはリフレッシュさせるなど、メリハリをつけていくこと も母語の確立に大きく役立つと思います。短い期間で確立しようとせ ず、長い目で見てあげるようにしましょう。
幼児期には「楽しんで覚えていく」ことがとても大切です。お子さん 自身が「英語も好きだけど、日本語も好き」と思えるように、英語も日 本語もそれぞれの魅力を感じられるような工夫が必要でしょう。
今のお子さんは思春期を迎える年齢が早いと言われているので、年 齢が上がるにつれ、思わぬ抵抗や反発に合うことがあるかもしれませ ん。そもそも多言語環境で育ちながら「きちんと母語を確立していく」 ということは並大抵のことではありませんから、その点をよく理解し、 広い心で見守ってあげる寛容さも必要だと思います。
「決して諦めないこと」「継続は力なり」「細くても 長く続けること」を目標に、親子で頑張って欲し いと思います。