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専門家の声 Specialist

笑顔になれるコラム

vol.3 「気軽に話してみましょう」「学校を身近に」

2016.01.08

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古今東西、お子さんの年齢を問わず子育ての悩みは尽きません。学校選択、言語環境や文化の違い、帰国後の不安など、海外ならではのストレスが加わり、お子さまが適応しきれず不登校になったり、身近に気軽に相談できる人も少ない親御さんの悩みは深くなりがちです。
これまでシンガポールで数多くのご家族を見守り、アドバイスをしてきた専門家の方たちにお話をうかがいました。その温かいメッセージをシリーズでお届けします。

ラッフルズ・ジャパニーズクリニック 心理士 山形 千尋 先生

「気軽に話してみましょう」

私がカウンセリングを担当する方の約3~4割がお子さんに関する悩みの相談です。小学校低学年頃までは言語の発達を心配する方が多いのですが、多言語の環境で問題を見極めにくいこともあります。心配でしたら気軽に専門家に相談すると良いでしょう。

学年が上がると、問題行動やお友だちの悩みが増えます。お子さんによって、インター校のような自由な雰囲気の中で積極的に自分を出せる方と、内気で、言われたことをこなしていくのが好きな方など、性格や好みは個人で違います。兄弟でも順応の仕方が異なりますから、焦らずに「この子」には何が合うのか、何が辛いのか、と観察してみましょう。言葉足らずなお子さんや日本語が得意でないお子さんは特に、意識して根気よく話を聞いてあげることも大切です。高学年以上になると、不登校や成績不振、「やる気がない」など、診断名がつかないような悩みが増えてきます。「今の学校で頑張らないと他に行ける場所がない」というプレッシャーを必要以上に感じる方もいます。

早くなじむように、成績が上がるように、とお子さんのペースを引っ張ろうとするのではなく、親御さんご自身が肩の力を抜くことが意外と功を奏します。「こんなにしてあげているのに」と親の心が前のめりになると、お子さんにも伝わり、余計についてこられなくなります。スローダウンして「そういうこともあるよね」と、一度お子さんと足並みをそろえてみると、その子なりの頑張りや達成感、そして必要なサポートが見えてくる場合もあります。

親御さんには、異国の地という外部環境のストレスは、ご自身が思っているより大きいこと、そしてそんな中で悩んでいるのはお一人ではないことをお伝えしています。「いつ帰国するかがわからない」という状況にストレスを感じるのも、とても自然なことです。具体的な悩みでなくても、何となくもやもやしていることがあれば、人に話すと自分を客観視でき思考が整理されます。話しながら「何であんなことで怒っちゃったのかしら」と、思わず笑ってしまう方もいます。身近な人でも心理士でも、誰かに話を聞いてもらい頭が整理されると、お子さんのお話をゆったりと聞いてあげる余裕もできやすいでしょう。親御さんが笑顔になるだけで、子どもも笑顔になります。

シンガポール日本語補習授業校 伊藤 敏一 校長

「学校を身近に」

私はシンガポールに赴任する前、日本の公立小学校で教員や校長を経験し、また教育委員会で学校教育を中心に指導主事として教育行政にも関わってきました。

昨今どの学校でも不適応や学習障害のような例は見られるようになりました。日本では入学前に市区町村ごとに「就学時健康診断」が行われ、診察や面談を通して、特別な支援が必要な子どもであると分かれば、さまざまなサポートと選択肢を用意しています。また入学した学校で不登校になったり、更なる支援が必要となったりした場合には、同じ学区内や市内に学習支援機関があり、そこで授業を受けることで学習を継続することもできます。海外で生活しているご家庭には、このような手厚い公的な支援が行き届きませんので、お子さんの様子について悩んだり不安に感じたりしていらっしゃるかもしれません。こうした場合は一時帰国する機会にでも、市区町村に立ち寄って相談してみても良いでしょう。

また、発達障害のお子さんの中には学習能力は高いものの、人の気持ちや場の雰囲気などを想像することが苦手で、対人関係がうまく築けない子もいます。危険な行動をした時に「危ないから」「そんなことをしたら痛いから」と注意しても、具体的にその危険性を想像できない場合もあります。このような場合には、「ルール」を明文化して見える所に貼っておくことも有効策の一つです。ご家庭でも学校でも「ほら、ここに書いてあるね」「ルールだったよね」と示されると、ストンと納得するようです。もし、お子さんにご両親の真意が伝わっていないと感じたら、それぞれのお子さんに合った「伝え方を工夫する」という発想を持ちましょう。

多くの学校では、子どもたちへの接し方や情報を共有し合いながら、さまざまなケースに対応できるようにしています。それぞれのお子さんに対して一貫して適切な対応ができるように、家庭と学校の連携は欠かせません。学校の先生は医療的な専門家ではありませんが、さまざまな子どもとの関わりから、ご家庭での接し方についてアドバイスできることも多いように思います。ぜひ学校を身近に感じて話をしてみることをおすすめします。

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