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笑顔になれるコラム

vol.5 「加点法と減点法」「材料作りで『自信』につなげる」

2016.06.25

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古今東西、お子さんの年齢を問わず子育ての悩みは尽きません。学校選択、言語環境や文化の違い、帰国後の不安など、海外ならではのストレスが加わり、お子さまが適応しきれず不登校になったり、身近に気軽に相談できる人も少ない親御さんの悩みは深くなりがちです。
これまでシンガポールで数多くのご家族を見守り、アドバイスをしてきた専門家の方たちにお話をうかがいました。その温かいメッセージをシリーズでお届けします。

「加点法と減点法」
学習塾KOMABA 塾長 石川 晋太郎先生

学習塾KOMABA 塾長 石川 晋太郎先生

「加点法と減点法、絵の評価って珍しく加点法なんだよね」とは、友人の絵描きの言葉。更に聞くと「加点法だから、どんな絵でも必ず褒めるところがある。例えば並んだ二つの絵、どちらが優れているかなど気にすることなく評価できる」のだそうです。

これは、子育てでも同様のことが言えます。息子がはじめて立ったとき、 ボールを投げたとき、ひらがなを読んだとき、その一つ一つの瞬間、私も妻も息子も「笑顔」であふれていたことを覚えています。

ところが、私の仕事の一つである受験指導は完全なる「減点法」です。いかに減点を少なくするか必死になって教え、子どもたちも必死に覚えテストを繰り返し、受験に挑みます。いつの間にか「減点」を恐れるがゆえに、子どもが確かな成長(=加点)をしているのに、それに気付かず他と比べて出来ないこと(=減点)ばかりに目がいってしまう、そんなことが起こっているのです。子どもたちが掴んでいく幸せは、決して「減点法」ではかるものではありませんから、気をつけて指導しなければなりません。

私はこれまでいろいろな子どもたちを教えてきました。学校生活がうまくいかない子、自分を上手に表現できない子、障がいを持った子、海外生活で悩みを抱えている子。かつてアフリカで勤めていた小学校では、生徒の約半数が孤児でした。どんな背景を持った子どもに対しても確かな成長を見逃さず、それを心から喜ぶ。そうすれば必ず子どもだけでなく私にも「笑顔」が生まれました。

仕事上「うぬぬ、この問題が解けぬのか!」という思いは消せませんが、「うぬ、でもこの子は以前と比べたらあんなことやこんなことができるようになったではないか!」という「加点法と減点法」のバランスを保ちながら、子どもたちを導いていきたいです。それは同時に父としても、決して忘れないようにしたい志でもあります。そうすれば、自然と皆に「笑顔」が生まれるのだと信じています。

「材料作りで『自信』につなげる」
学校法人創志学園 クラーク記念国際高等学校 保志 悦宏先生

学校法人創志学園 クラーク記念国際高等学校 保志 悦宏先生

私たちの学校で一番大切にしていること、それは生徒に「自信」を持たせることです。そのために必要なことが3つあります。一つ目は、生徒の好きなことや得意なことを思う存分伸ばすこと。二つ目は、そのために努力をさせて、達成感を味わわせること。三つ目は、生徒を褒め認めることです。

日本・韓国・中国・米国の高校生を対象とした調査で、日本の高校生の7割強が「自分はダメな人間だと思うことがある」と答えました。他国に比べて突出した数字で、自己肯定感の低さが浮き彫りになっています。教育現場でも「自分に自信がありますか?」と問うと、多くの生徒が「ない」と答えます。しかし、サッカーが得意な生徒に「サッカーは自信がありますか」と尋ねると、「それは自信がある」と答えます。これは自分の得意なことに気づいていないがゆえに、「自信」を持てていないことに他なりません。とてももったいないことだと思います。周囲の大人も、生徒のできることを見過ごしている可能性が十分にあります。

本校は通信制の高校ですが、生徒たちは全日制と同じように毎日朝から夕方まで学校で学習し、カリキュラムの中で好きなことや得意なことを学んでいます。生徒の中には過去に学校に行けなかったという経験を持つ子もいますが、好きなことを学び基礎学力をつけていくうちに、集団生活の中でリーダーシップやチャレンジ精神を育み、徐々に花開いていきます。卒業後は難関大学や海外に進学したり、専門の道を目指す生徒もいます。未完成の子どもたちは「自信」をつける機会を何度も得ることで、挑戦を恐れず大きく飛躍できるのです。

ところで、私たち大人は自分に「自信」を持てているでしょうか。子育てで必死に努力をしているにも関わらず、苦しんでいる保護者の方も多くいらっしゃるでしょう。大人にできること、それは、まず子どもができることにしっかり目を向け、お子さんが自信をつけるための「材料」作りをすることではないでしょうか。お子さんが「自信」に満ち前向きに取り組む姿を見れば、それこそが、私たち大人の「自信」につながるのではないでしょうか。

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