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月経不順について教えてください

日本メディカルケアー 鍋島 寛志医師
月経不順について教えてください

1. 月経ってなに?

初経年齢は平均12歳、閉経は平均50歳。40年近くのあいだ、女性は月経とつきあっていかなくてはいけません。毎月毎月、出血、生理痛、そして生理前のイライラ…。月経って何であるのでしょう?

月経は妊娠できる、というサインです。女性は生まれたときには卵巣に卵ができていて、初経が来ると、月に1つ排卵します。卵が育つと、子宮内膜という妊娠したときに胎児のベッドになる部分が厚くなり、胎児が着床しなければ、その子宮内膜が剥がれて血液と一緒に出てくる、これが月経です。

図1 月経のしくみ 図1 月経のしくみ 図2 月経のリズム 図2 月経のリズム

日本産婦人科医会『思春期ってなんだろう?』より引用
(http://www.jaog.or.jp/all/chart/index.php)

2. どうして月経不順になるの?

まず月経が来て数年、ローティーンの間は、体が完全には成熟していないので多少の月経不順は普通のことで、原則的に治療の必要はありません。また、ホルモン治療を成長期に始めると、エストロゲンの作用で身長が伸びづらくなることがあるので、治療が必要な場合でも、この時期は慎重に薬を選ぶ必要があります。

それでは、体が成熟し、安定する時期になっても月経が不順なときはどんな原因があるのでしょうか?

〈多嚢胞性卵巣症候群〉
卵巣に卵胞(卵の入った袋)が多く、排卵しづらいために起こる月経不順で、もっとも多い原因です。欧米人では多毛や肥満などの症状を伴うとされていますが、日本人は月経不順だけのケースが多いようです。

〈視床下部性無月経・月経不順〉
視床下部の機能が落ちて、生理が来ないタイプの月経不順です。ストレスや急激なダイエットなどがきっかけになります。というのは女性ホルモンは脂肪で活性化されるので、急に体重が減ると女性ホルモン不足になるためです。脂肪は敵、と思いがちですが、ある程度の脂肪は女性らしさを維持するために必要不可欠です。

〈下垂体性無月経・月経不順〉
下垂体は、視床下部と卵巣の間の中継点です。下垂体のホルモンが減ったり、プロラクチンという乳房からお乳を分泌させるホルモンが上昇すると、生理不順になることがあります。妊娠してもいないのにおっぱいが出るときは、小さな下垂体腫瘍が原因になっていることがあるので、注意が必要です。

3. 治療したほうが良い?自分でできることは?

月経周期は28日と言われています。では、1週間生理が遅れたら異常でしょうか?基本的には、きちんと排卵して1ヵ月くらいで生理が来ていれば、多少周期がずれてもあまり問題ありません。しかし、排卵しているか知るのは意外に難しいので、月経不順が気になるときは基礎体温をつけてみましょう。シンガポールの薬局でも基礎体温計(Ovulation Thermometer)は購入できます。受診のときにグラフを持ってくると、より正確な診断をつけることができますし、自分で体調を知ることもできます。もし2~3ヵ月以上生理がこない場合は、ホルモンバランスがかなり崩れていたり、子宮内膜ポリープや子宮内膜増殖症ができることもあるので受診をおすすめします。

4. どんな治療をするのですか?

現在赤ちゃんがほしいかどうかで、治療の方針は変わります。挙児希望の場合は、排卵をしているか検査し、卵を育てる薬を使って妊娠を手助けします。その際、卵管が通っていなかったり、ご主人の精子が少ない場合は排卵しても妊娠しないので、基本的な不妊症の検査も同時にすることが一般的です。

挙児希望が無い場合は通常ホルモン剤(ピル)を使います。ピルは、なぜか日本人は抵抗がある方が多いのですが、ホルモンバランスを整えて無駄な排卵を抑えることによって将来の妊娠率を高める目的もあるので、しばらく妊娠は考えていないが、いずれ出産を考えている方には、特におすすめしたい治療です。プロラクチンが上がっている場合は、それに応じた治療もします。

月経不順は必ずしも治療が必要なわけではありませんが、将来の妊娠に影響する可能性もありますので、ぜひ産婦人科でご相談ください。

日本メディカルケアー 鍋島 寛志医師

秋田大学医学部卒業、東北大学大学院修了、医学博士。東北大学と関連病院で産婦人科医として勤務し、2012年来星。2015年日本メディカルケアーに着任。『未病を治す(病気になる前に予防する)』をモットーに、健診や予防接種などを含めた予防医学の観点から診療を行う。日本では主に不妊内分泌外来を担当。

日本メディカルケアー

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