早稲田アカデミー・インター校
校長 五十嵐敢先生
母の実家がある仙台で生まれ、父の仕事で宮城、秋田、茨城と移り住んだため、小学校も中学校も、入った所と出た所が違う学校生活を送ってきました。転校というのは、子どもにとってみれば、「決まったからしょうがない」としか言えないものです。妹や母は秋田から離れる時に泣いて反対したそうですが、私にとってはもう決まったことだし、むしろ東京に近くなるという印象だったのを覚えています。
住む所が変わるということは、子どもにとっては学校が変わるということです。すると、友だちも含めたすべてが一度リセットされてしまいます。だんだん来なくなる手紙や、電話をしなくなる友だちなど、引っ越しによって人間関係が勝手に新陳代謝されてしまうようなものです。
方言のきつい土地柄が多かったので、言葉も違いますし、服装も違う、東北では出稼ぎが残っていましたから、お父さん、お母さんの家の中での位置も違う。違うことだらけの中で思春期を過ごしてきました。
しかし、今となってみると、いろいろな土地でいろいろな人に会ったことは、すべて自分に生きていると感じます。私自身が海外に赴任し、様々な土地から「転校」してきた生徒さんたちを見る立場にいるから、一層そう思うのかもしれません。
ですから、シンガポールにいらした皆さまにぜひ伝えたいことがあります。それは、子どものころにはわからなくても、お子さまはこの土地で何か必ず素晴らしいものをつかむこと、そしてシンガポール人も含め周りも「転校生」ばかりだから、新しく来た人に優しいということです。学習面での心配事があったとしても、「案ずるより産むが易し」で、周りが大丈夫、大丈夫と思っている方が、学ぶ本人にも心配を与えません。教育環境としてのシンガポールはほとんどが整っていると思います。ですから、この土地でしか見つけられないものを探そうという気持ちでいる方が、より前向きになれるのではないかと思います。
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