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vol.14 「心のより処」

シンガポール日本人幼稚園 園長
一色 省治先生

シンガポール日本人幼稚園 園長 一色 省治先生

 日本人男性の平均寿命が80歳を超えたとはいえ、この歳になると、ずいぶん長く生きてきたなと思うことが最近よくあります。そしてその多くの部分で、何がしかの不安を抱えていたことも思い出します。

それは、学校を卒業し大阪で教員になり40年余り、自分なりに一生懸命やってきたつもりではいますが、あの時はこうすればよかったのではないか、そして今はもっとやれるのではないかという、どこまでいっても満足できない職業病のせいかもしれません。

人生においてのさまざまな局面で、まるで波のように引いたかと思うとまた押し寄せて来る不安や心配、これに打ち勝ち笑顔でいられる「心のより処」とはいったいどこにあるのでしょうか。

家族との団欒に安らぎを見いだす人もいるでしょう。気の置けない友と飲み、語りあう時間を喜びとする人もいるでしょう。スポーツで汗を流し、あるいは趣味の何かに没頭することでしばし現実から逃れることができるかもしれません。ちなみにクリスチャンである私は聖書を開きます。

いずれにせよ大切なのは、自分の存在意義が認められ、自分には居場所があるという安心感ではないでしょうか。その安心感が「心のより処」につながっていきます。

大の大人でさえそうであるなら、親を含む小さな世界がすべての子どもにとって、自分が愛されていると感じること、必要な存在だと思えることがどれほど大切なものとなるでしょう。まさしくそれこそがお子さんにとっての「心のより処」と言えます。

「君は愛されるため生まれた」という歌をご存じですか。その歌詞の中にあるように、「君の存在が私にはどれほど大きな喜びでしょう」と声に出して言ってあげて欲しいと思います。

あなたの愛する子どもたちに、家族に、そして友人に。その「心のより処」のために。

最後に、有名なエピソードを紹介したいと思います。マザー・テレサがノーベル平和賞を受賞した時、記者が「世界平和のために私たちができることは何ですか」と問いかけました。彼女の答は「今すぐ家に帰って、家族を大切にしてください」だったのです。

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