徹底的に考えよう、本当の英語力
英語を使って仕事をするビジネスパーソンや海外に住む日本人が増加しているだけでなく、日本国内に住んでいても外国人や観光客に出会うなど、英語に触れる機会は急速に増加しています。英語が話せることがごく当たり前となる時代に、「本当に求められる英語力」とは一体何でしょうか。
Springは、「英語を本気で武器にする」をテーマに、シリーズでお伝えしていきます。初回は、さまざまな分野で英語を操りながら世界を舞台に活躍する日本人に注目し、英語ができることで「世界がどう広がるのか」「世界の見え方がどのように変わったか」、英語を身につけるまでに「どのような苦労があったのか」「社会で必要とされる実践的な英語とは何か」といった疑問に迫っていきます。
日本・日本人のグローバル化
2017年 | 前年比 | 5年前比 | 10年前比 | |
海外に住む日本人※1 | 約135万人 | 1%増 | 7%増 | 25%増 |
海外に住む子女数※1 | 約8.3万人 | 4%増 | 23%増 | 35%増 |
海外日系企業数※1 | 約7.6万人 | 5%増 | 24%増 | 55%増 |
訪日観光客数※2 | 約2,870万人 | 19%増 | 30%増 | 30%増 |
日本に住む外国人数※3 | 約256万人 | 8%増 | 64%増 | ― |
※1:外務省調べ(子女=小・中学生) ※2:日本政府観光局調べ ※3:法務省調べ
海外に住む日本人の推移(地域別)
過去9年間でアジア諸国に住む日本人の数が著しく増加している
Story 1
海外経験ゼロから、外国で働くまでの道のりを支えたもの。
それは、猛勉強と自分の強みをとことん考え抜いたこと。
高 勇人さん(P&G International Operations SA Singapore Branch)
Q 海外滞在経験やご経歴について教えてください。
社会人になるまで、海外経験はありませんでした。日本の公立の学校を卒業し、大学では化学を専攻した後に大学院まで進みました。その後、P&G Japanに入社し2013年からアジア本社へ異動となり、現在シンガポールに赴任しています。
Q 社会人になってから「英語が強みになっている」と感じることはありますか。
英語ができてマイナスになることは一切ありませんが、英語は話せることが当たり前の現在の職場の中で、それ以外に“+α”で自分の担当する領域や分野で人に負けない「強み」を持つことが求められていると感じます。
Q 英語はどのように習得しましたか?
社内文書や会議は基本的に全て英語です。電話で英語を話せなければ全く仕事が進まない状況に追い込まれ、入社して直ぐに危機感を感じ猛勉強しました。例えば出社前にNHKのラジオ講座を一時間ほど勉強してから出社したり、毎日30分間英語で上司と電話をしたりしました。一年半後にはシンガポールへ異動となりましたが、努力の甲斐があり今では多国籍の人々と毎日英語で仕事を進めるまでになりました。
Q 英語学習を頑張っている子どもたち・海外在住のご家族にアドバイスをお願いします。
私は英語を話す目標がないと勉強や頑張りが続きませんでした。「英語を使って何をしたいのか」「自分の好きなこと、強みは何か」と英語学習の合い間に考えてみると、日々の学習の達成感や楽しみが増すと思います。
会社の同僚に誕生日を祝ってもらった/ケーキを持っているのが高さん
Story 2
たった2年の幼少時の海外体験。
人に対して偏見を持たない心、チャレンジし続ける根性はその時に培った。
田中 七瀬さん (Singapore Dance Theatre バレリーナ)
Q 海外滞在経験やご経歴について教えてください。
5歳から7歳までアメリカに住み現地校へ通っていました。日本へ帰国後は公立の学校へ通いました。帰国後も母が家で毎日英語のラジオを流してくれていたので、今でもリスニングは強みに感じています。高校3年生の時にイギリスのバレエ団へ3年間留学した後、現在はSingapore Dance Theatreに所属しています。バレエは5歳から始め、小学6年生の文集では「海外で通用するバレリーナになる!」と宣言をしていました。
Q 英語が強みになっていることで、何が変わりましたか。
幼少期から培った英語は、世界のどこでも生きていける自信につながっていると思います。日本にいると親が何でもやってくれて甘えてしまいがちでした。しかし、高校生の頃からバレエのオーディションを受けるために一人で世界各国を飛び回っていたため、チケットやホテルの手配、世界中のバレエ団とアポイントなど、全部自分でこなしていました。やらざるを得ない環境が自然と自分を自立させてくれました。今では何が起きてもたいして驚かない根性がつきました。
Q 英語学習を頑張っている子どもたち・海外在住のご家族にアドバイスをお願いします。
私は自分がやりたいことに脇目も振らず突き進んでいったことで、自分の夢をシンガポールの地で叶えることができました。なりたい自分をイメージしながら「根性」と「打たれ強さ」があればどんなことでも乗り越えられると思います。ぜひ皆さんも情熱を注げる何かを見つけてみてください。
くるみ割り人形を踊る田中さん
Story 3
アジアにおいてさまざまな分野で活躍する日本人の方にお話をうかがいました。
Q 「英語が強みになっている」と感じた具体的なエピソードを教えてください。
Bさん:英語で話すことに不慣れだった頃は、自分の英語が「正しいかどうか」を考えることで精一杯でした。頭の中で組み立てた文章に自信が持てずに発言しないまま会話が終わってしまうことも数え切れないほどありました。しかし仕事で英語話者のクライアントを担当するようになった今では、完璧な英語でなくても相手に自分の意見を伝えることが先決だと思うようになりました。例えばシンガポール人と話をする時もアメリカ英語よりもシングリッシュ(シンガポール人の話す中国語混じりの英語)を使った方が距離を縮められるということに気づきました。
世界の英語スピーカー約15億人
「ネイティブ」と「ノンネイティブ」の割合
Oさん:何かをリサーチする時や世の中を知るためには、英語での情報量が圧倒的に多いと感じます。また、仕事の選択肢が増えたり、雇用条件が良くなったりする利点もあると思います。銀行勤務後に転職した国際会議の企画会社では自分が唯一の日本人だったので、米国本社とのやり取りなども全て自分で担当しました。苦労もありましたが、英語が話せたことで若いうちから多岐にわたる仕事を任せてもらえたことは、今振り返っても本当に良かったと思います。
Q 英語学習を頑張っている子どもたち・海外在住のご家族にアドバイスをお願いします。
Iさん:英語はあくまでもツールなので語学そのものを目的にするのではなく、好きなこと、興味があること、目標とすることに「英語で」触れるような機会を作ることが上達につながると思います。どんな言語でもプロフェッショナルとしてきちんと使いこなせるようになるためにはそれなりの努力が必要です。それを楽しみながらできるために、モチベーションにつながる刺激や、憧れの職業やロールモデルのような存在があると大変でも頑張れると思います。
【Bさん、Oさん、Iさんのバックグラウンド】
Bさん:幼稚園から大学まで日本で教育を受ける。初めての海外は大学生。シンガポールで米系リサーチ会社でマーケット・アナリストとして就職。
Oさん:1~3歳はタイ、小学から大学までは日本で教育を受ける。外資系銀行や金融系国際会議の企画会社に勤務(スイスに1年駐在)。その後香港に8年、シンガポールに10年滞在。
Iさん:2~5歳はインド、小学6年から中学3年までオーストラリアで現地の学校に通う。帰国後は日本の公立中学に編入。大学卒業後、テレビ局勤務を経て米国に大学院留学。
編集後記
今回の取材を通じて、英語を武器にできると活躍の場や選択肢が広がり世界がぐっと近くなることを再確認しました。ネイティブ並みの発音を意識する人も多いですが、まずは心が通じること、そして、興味関心を深掘りすることが英語の上達の近道であると感じます。次号からは、年齢別に効果的な取り組みをご紹介していきます。
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