グローバル教育
丸紅株式会社 常務執行役員 丸紅アセアン会社 社長 馬宮 健 氏

企業からの声 ~Focus On The Future~
グローバル時代を迎えた今、企業が求める人材、教育とは何でしょうか。
企業の方からお話をうかがいました。

丸紅株式会社 常務執行役員
丸紅アセアン会社 社長 
馬宮 健 氏

Q 御社のご紹介をお願いします。
当社は1858年に、近江商人の伊藤忠兵衛により創業され、大手総合商社として発展してきました。日本と海外を含めた事業拠点は131あり、当社の従業員数は4300名(そのうち海外の駐在員は約800名)、グループ全体では世界で約4万6000名となります。アセアン・南西アジア域内には、海外駐在員のうち3割強が駐在しており、地域としては最も多く、今や北米やヨーロッパを超えています。

皆さんの中には、商社=トレードと思われる方が多いでしょう。もちろんトレードが主たる事業ではありますが、投資型に移行してきている分野が多数あります。例えば、南米上流の銅鉱山、ベトナムのダンボール工場、インスタントコーヒーの工場への投資など、当社100%出資で行っているものもあります。もはや商社としてのビジネス領域はトレードにとどまらず、世界各国でさまざまな企業や組織と連携し事業創出に貢献しています。その領域は、資源やエネルギーにはじまり、電力、航空・船舶、食料、化学品など多岐にわたります。
私が管轄しているアセアン・南西アジア地域はIT関連や不動産、そして金融関係のビジネスが盛況です。人口が多く都市化も進んでいるため住居不足が深刻になり、都市部の高層住宅への需要が高まっている地域も多く、既に高層マンションがかなり乱立していますが、今後も不動産には優れたビジネスの機会があると感じています。金融ビジネスでは、ノンバンクの分野でマイクロファイナンスや車関係のファイナンスを扱っています。他にも最近ではヘルスケア関連で病院やウェルネスにも積極的に出資しています。

Q どんな人材を求めていますか。
当社の社是に「正・新・和」とあります。「正」は公正にして明朗であること、「新」は積極的に創意工夫を図ること、「和」は互いに人格を尊重し協力することを意味しています。創業以来今日に至るまで、そして未来に向けて社を牽引してくれる人材として「正・新・和」を備えていることはもちろん、「コミュニケーション能力」が高く「多様性・寛容性」を備えている人材を求めています。

現代ではコミュニケーションツールとしてSNSが主流になりつつあります。その手軽さや利便性は言うまでもありませんが、一方、対面で人と人とが直接会い、間合いを取りながら折り合いをつけるという感覚が希薄になっており、リアルな「コミュニケーション力」を養う機会が減っていると感じます。

私どももコロナ禍では在宅勤務を余儀なくされ、打ち合わせや商談などオンラインで実施することが増えました。しかし、新たな日常様式になった現在は、なるべく会社に来て「集う」機会を大切にしています。オンラインはとても便利ですが、全てが置き換えられるわけではないからです。すでに動き出しているプロジェクトや、相手がわかっている恒常的な業務はオンラインでも問題ありません。しかし、新たに始まる事業や、それぞれのアイデアを出し合って協働する場合は、対面で会ってこそ、その後の業務が円滑に進みます。会うことでその人の人となりが理解でき、信頼へとつながります。ビジネスは根本的に人と人とのつながり、すなわちきちんとしたコミュニケーションを取ることで成り立っていますので、日頃から人と接する機会を大切にしていただきたいと感じます。

とくに海外で仕事をする場合には、他国籍の人と接点を持つ機会が多いため「多様性」と「寛容性」も求められます。「自分の生きてきた世界が全て」という考えを持っていると、いわば自分だけの物差しで相手を測ることと同じになります。すると「自分以外のものは全ておかしい」と考え、異なる文化や生活様式を受け入れることが難しくなるのです。国際社会で活躍するためには、いろいろな物差しを持つことが相手の理解を深めるとともに、自らの価値観も相手に共有してもらえることにつながるのです。

当社では例年、新卒一括で100名程度の学生を採用しており、「キャリア採用」として中途採用者(第2新卒採用を含み)も数十名採用しています。多様な人材を求めており、海外大学出身者、外国籍の人材も歓迎しています。

Q  女性の活躍について教えてください。
女性の視点で見ると物ごとの見え方が異なり、男性だけでは全く気がつかないような新たな気づきが出ています。当社では「女性活躍推進 2.0」を制定し、会社として女性を積極的に採用していく方針を打ち出しています。しかし、女性だからという理由だけで優先的に採用することはしておらず、あくまで通常のプロセスを経ての採用となっています。
採用の強化だけではなく、出産などのライフイベントがあっても活躍し続けられる環境づくりや、成長機会の拡大、計画的配置・登用の推進といった施策を打ち出しており、女性が結婚や出産を機に辞めるケースはほとんどありません。

Q 日系企業としてのアイデンティティーはどのように大切にしていますか。
世界で仕事をするにあたり、日本の企業としての良さ、「正・新・和」を重んじる丸紅としての良さが世界に通じていると自負しています。公正にして明朗である「正」は信頼につながっており、積極的創意工夫である「新」は丸紅と組みたいという求心力になっています。人格を尊重し協力する「和」はビジネスを超えた真の友好につながっていると実感しており、責任を持ってやり遂げるとういう企業文化に行き着くのです。それが世界中で多くのビジネスを継続できる何よりの土台だと自信を持って言うことができます。これは、丸紅が日本にルーツを持ちビジネス基盤を作り上げてきたからこそ成長できた現在の姿です。創業の精神を忘れずに世界でも同じ立ち位置で歩んできたことが我が身に返ってきており、身の引き締まる思いがします。

日本企業に共通しているのは「細部へのこだわり」が強いことです。日本人は丁寧にものごとに取り組むため、日本人としては多少雑だと感じられる場合でも海外に行けばとても丁寧という評価になる場合も少なくありません。モノづくりを中心に仕事の仕方そのものに対する質の高さは誇るべき点です。その一方で、慎重すぎてリスクに対する許容度が低いことも事実で、新たなビジネス創出には不可欠な積極的にリスクを取りに行くことが苦手です。また、重大なものごとを決める際のプロセスに時間がかる点は改善が必要と言えるでしょう。日本企業として「丁寧な実務」と「意思決定のスピード」の両立が多くの場合課題になると思います。特に意思決定に時間がかかる点は、疑問に思う人が多くいる印象です。

Q 海外で暮らすご家庭へメッセージをお願いします。
私自身も帰国子女であり、会社に入ってからもインドネシア、アメリカ、ナイジェリアなどにいた立場から「経験は何よりも勝る」と感じています。若い頃からいろいろなことを経験していると、さまざまな物ごとに対して柔軟に頭が回るようになると思います。そういう意味でお子さまにはぜひ、チェレンジ精神を持ち「積極的に海外に出てください」とお伝えします。外から日本を見ると「これおかしいな 」「日本は遅れている」と客観的かつ冷静に見えるものです。実際にシンガポールから日本を見ると、日本国内にいた時と比べ全然違う見え方がすることでしょう。その視点が重要なのです。価値を測る「物差し」は、日本国内にいると日本限定の物差しになってしまいます。ぜひ、外に目を向け、今までとまったく異なる物差しで日本をそして世界を見つめて欲しいと思います。

教育に関しては、「日本型の教育」が全てだとは思わない方が良いと感じます。今後20年というスパンで考えると今とは比較にならないほど海外との接点が増えてくるでしょう。日本から海外に出て学ぶ人、海外から日本に来て学び仕事をする人が大幅に増えるに違いありません。つまり日本の中でも多様な人種が集い、異文化が触れ合うと考えられます。そのときは物ごとの尺度や価値を測る物差しも「日本型」だけでは通用しません。つまり、日本の教育だけでは太刀打ちできないことも出てくるでしょう。もちろん、日本の教育には素晴らしい点が多いと思います。しかし、それが全てではないのです。 シンガポールには学校がたくさんあり、学ぶカリキュラムも豊富です。お子さまの性格や滞在年数などを鑑みて広い視点で選ばれることをおすすめします。


国際社会で活躍するためには、いろいろな物差しを持つことが、相手の理解を深めるとともに、自らの価値観も相手に共有してもらえることにつながります。
「自分の生きてきた世界が全て」という考えを持っていると、いわば自分だけの物差しで相手を測ることと同じになります。すると「自分以外のものは全ておかしい」と考え、異なる文化や生活様式を受け入れることが難しくなるのです。

馬宮 健 氏
1987年 丸紅株式会社 入社、2013年 海外電力プロジェクト第一部長、18年 丸紅インドネシア会社社長、21年執行役員、アセアン・南西アジア統括、アセアン支配人、丸紅アセアン会社社長、23年 常務執行役員

丸紅株式会社
丸紅は、国内外のネットワークを通じて、広範な分野で、輸出入(外国間取引を含む)及び国内取引の他、各種サービス業務、内外事業投資や資源開発等の事業活動を多角的に展開。主な事業内容は、情報ソリューション、食料、化学品、フォレストプロダクツ、金属、エネルギー、電力、インフラプロジェクト、航空・船舶、金融・リース・不動産、建機・産機・モビリティ、次世代事業開発、次世代コーポレートディベロップメントなど。

※2023年11月25日現在の情報です。最新情報は各機関に直接ご確認ください。

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