英語に苦労したインター校生活
私はずっと日本で生活をしていたため、海外に行って生活をするというのは自分の覚えている範囲では初めての経験でした。そのため、気候や学校での生活、言語、習慣が全く異なる地に引っ越し、新しいことが次々と私の中に入ってくるため、毎日が驚きでいっぱいでした。英語を勉強した機会はなく、カタカナ語や挨拶程度しか話せませんでした。質問すら出来ず、何を言われているか理解できなかったので、劣等感と悔しさと悲しさで孤独を感じ、毎日のように泣いていました。
毎日とにかく他の生徒に追いつくために「聞いた言葉や文章を自分で使えるようにする」ことを繰り返しました。クラスメイトや先生も、ジェスチャーを使ってコミュニケーションをとってくれました。「自分はこれが分からない」ということを主張すれば必ず誰かが助けてくれました。誰かの助けを借りて人に頼ることは悪いことではないと気づき、言語以外にもコミュニケーションの方法はたくさんあるということも知りました。
英語が理解できるようになり年度終了まであと2週間という時期に、「この1年間で本のレポートを32本書く」という課題があることを知りました。入学当初に言われていたことが理解出来ていなかったのです。慌てて本を読みレポートを書き、約1週間でなんとか仕上げることが出来ました。この経験のおかげで、どんなにハードなプロジェクトやレポート課題にもめげずに取り組むことができるようになりました。
日本への本帰国、そして新しい環境へ
本帰国が決まったときは、シンガポールで過ごすことで日本の素晴らしさを改めて実感していたため、帰国することが嬉しいという気持ちが大きかったです。
桐朋女子には、校内に帰国生が多く、帰国生のためのネイティブの先生による授業や放課後の英会話クラスがあり、今まで培った英語力がキープしやすいと考え、帰国後すぐに受験し、編入学しました。
入学してみると、とても積極的なクラスメイトが多く、インター校の生徒との差をあまり感じませんでした。私は人見知りをするタイプだったので、多くのクラスメイトが話しかけてくれて馴染みやすかったのですが、先輩と後輩の関係が理解できず、同級生が先輩に敬語を使う様子を見て最初はとても不思議に思いました。
勉強面では地理・歴史・生物は日本で小学5年生まで習っていたことしか知らなかったので、追いつくのに時間がかかりました。また、国語の漢文も全く勉強したことがなかったため、大変でした。まだ習っていない単元は学校で開設されている帰国生のための講座に通って補うようにしました。
言語の壁がない「数学」が得意科目
現在、私はとても数学や理科などの理系の科目が好きです。シンガポールでの数学や理科の授業は日本で学んでいたことと全く変わらなかったので、言語に関係なく理解でき「数学は世界の共通言語だ」ということを知りました。帰国後もシンガポールで学んだ数学の勉強が生かされています。
現在は化学部に所属していますが、最近「数学部」を作るために活動を始めました。将来はシンガポールで身につけた英語力と理系能力を生かせる職業に就きたいと思っています。
シンガポールの皆さんへ
シンガポールには、さまざまな国の料理があり、さまざまな国の文化や祭日を経験できます。この多民族国家の中で日本人が持つ努力家で真面目な一面を改めて感じることがあるのではないでしょうか。努力することが得意な日本人は、シンガポールのような多国籍国家でもきっと輝く存在になれると思います。ぜひ、あきらめずに頑張りながら、シンガポール生活を楽しんでください。
お母様より
シンガポールで生活を始めた頃は、親の都合により、友だちと離ればなれにならなくてはなりませんでした。全く違う学習環境で苦労する姿がかわいそうで、子どものために選択したつもりが間違っていたかもしれないと悩んだりしました。でも、子どもは親が思っているよりずっとたくましく、いろいろなことに一生懸命にチャレンジしていたと思います。現在、日本で忙しいながらも充実した学生生活を送ることが出来ているのは、シンガポールで苦労した経験が生かされているからだと感じています。
※桐朋女子中学校・高等学校に関する情報はこちら
https://spring-js.com/japan/962/
『海外生の今』バックナンバー
https://spring-js.com/global/global02/kaigaisei/
※本文は2012年11月23日現在の情報です。