シンガポール日本人学校小学部クレメンティ校 校長 栗田 典年氏 現在小学校で使用されている学習指導要領は、2年間の移行期間を経て、平成23年度(2011 年度)から完全実施されています。今回はシンガポール日本人学校小学部クレメンティ校校長の栗田さんに解説していただきます。 はじめに 現在小学校で使用されている学習指導要領は、2年間の移行期間を経て、平成23年度(2011 年度)から完全実施されています。教科書も一新され、本校においても新しい教育課程に基づく指導が展開されています。今回の改訂では、「ゆとり教育」への批判と相まって、学習内容と学習時間の増加が大きく取り上げられました。しかし、実はそれ以上に重要なことが示されています。それは、「言語活動の充実」というものです。 今回の改訂で、第1章総則に「児童の発達段階を考慮して、児童の言語活動を充実する」と明記されています。具体的には学年ごと国語科の内容に指導事項として示されていますが、第1章総則に記されているという意味は、その内容をできる限り各教科等で取り入れていくと解釈すべきです。 各教科等での言語活動は、大まかにまとめますと、【記録】、【要約】、【説明】、【論述】、などといったものが考えられます。 そこで、本校でも本年度の研究をこの点に絞り、授業改善を図ろうとしているところです。授業にどのように「言語活動の充実」が取り入れられようとしているか、授業の設計図ともいうべき「指導案」のほんの一端を紹介します。 授業の実際 改善のポイント 前述の2例は、授業の中にできる限り言語活動を展開しようとしたものです。 1 年生算数では、ブロック図を用い考えさせ、自分の意見を記録・表現しやすくしています。また、ペアワークを仕組み、それぞれの意見を必ず説明する場面を設定しています。全体では、発表や説明が苦手な子どもでもハードルが低いため、活発な学習が展開していました。 4 年生体育は、読者の皆さんからは「へえ、今の体育ってこうなんだ」という声が聞こえてきそうです。大多数の皆さんの学習した体育は、ほとんどの時間を先生の指示による運動そのものに費やしていたイメージを持たれているでしょう。しかし、最近では児童各自がそれぞれの目標を定めそれに向かって工夫しながら運動していくという、体育科としての「問題解決学習」の形態が取られています。 そこで、この事例は、ゲームの際の作戦を重視し、言語活動を十分に盛り込んでいるものです。NBA の試合でプレーヤーがコーチを囲みボードで作戦を練っている場面をよく見ますが、あのイメージです。また、お互いのアドバイスも仕組み、少しでも言語活動を充実させようともしています。 まとめ 「今までの授業との違いは?」と問われれば、正直答えに窮します。今までも各教科等では、考えをまとめ、ノートやボードに記録したり、それを発表・討議したりするなどの言語活動は当然行われてきました。近年では、「コミュニケーション能力」というキーワードでも強調されてきました。 それでも、あえて今回の指導要領改訂で明記した主旨を踏まえ、改めて日々の授業を振り替える必要があります。授業の中で当然に行われていた活動に焦点を当て、国語科を基礎としながらも、各教科等でも「言語活動の充実」を図っていこうという姿勢が問われているものと考えています。 もとより、上記の授業が素晴らしいものであるということではありません。ただ、指導要領改訂を真摯に受け止め、全職員が授業向上のよいきっかけとしようとする意欲的な活動であるとご理解いただければ幸いです。 ※本文は2012年11月23日現在の情報です。