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【特集】小学校進学を考える ~後編~

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【特集】小学校進学を考える 後編 ~海外生・帰国生を歓迎する小学校~


現在、海外の日本人学校や日本語補習授業校に通う児童生徒数は約4万人に上ると言われています。また、インターナショナルスクールや現地校に通う児童・未就学児も相当数増えていると推測されます。幼児を持つ海外駐在・滞在中のご家族は、「帰国子女としての小学校受験・進学」について調べたり、帰国後の小学校で「授業についていくための日本語力があるか」「海外で学んだ英語は維持できるか」などいろいろな悩みもあると思います。  そこで今回の特集「前編」では、幼児教育の専門家に小学校進学について伺い、「海外生・帰国生を歓迎する小学校」には、英語教育や探究学習での取り組みをお聞きしました。
「後編」も、教育の専門家からのアドバイスと学校の取り組みをお届けします。ぜひ、ご覧ください。
※文部科学省「海外で学ぶ日本の子供たち(2024年度版)」より。

今回ご紹介する小学校
●立川国際中等教育学校附属小学校
●東京学芸大学附属小学校
●東京農業大学稲花小学校

幼児教育の専門家に「海外滞在中に育む力」について伺いました。

幼児教室「こぐま会」代表
久野泰可氏

1948年、静岡県生まれ。横浜国立大学教育学科を卒業後、現代教育科学研究所に勤務し、86年「こぐま会」代表に就任。常に幼児教育の現場に身を置き、その実践を通して幼児期に大切な「思考力」を育てるための独自のカリキュラム「KUNOメソッド」を確立。その中で「ひとりでとっくん」100冊シリーズや、多くの「具体物教材・教具」を「こぐまオリジナル知育教材」として開発する。著書に『子どもが賢くなる75の方法』(幻冬舎)、『「考える力」を伸ばす AI時代に活きる幼児教育』(集英社)など。 

海外で幼児期を過ごす意義と育む力

海外で多文化環境にいるお子さんは、「それぞれ考え方・文化に違いがある」ことを知る経験を積んでいます。海外滞在中に「たくさんの国のお友だちに接する」ことは、お子さんにとって心の成長、そして国際性の土台につながる非常に重要な体験と言えるでしょう。

私は現在、トルコで幼児教育に携わっていますが、当地での子どもの動き方、先生の対応の仕方は日本と大きく異なります。どちらが正解でどちらが誤りということではなく、「そういうやり方もあるのだ」と気づかされます。この「違いを認める」ということは、多くの日本人にとって、案外苦手なことではないでしょうか。海外在住中に異なる文化に親しむ機会があれば、親子でその苦手を克服できるでしょう。

帰国後は「同じ日本人同士でもそれぞれ違いがある」ことにも目を向ける必要があります。海外滞在中でも帰国後においても、多様な人々と関わる機会を設けること、あるいは異なる学年のお友だちと交流し、さまざまな視点と寛容な心を育みましょう。

日本語と日本人としての素養

海外にいると、日本語力や日本の文化が身につかないことを危惧される保護者も多いでしょう。幼児期の日本語の習得には、「読み書き」ではなく、「話を聞くこと」「自分の考えを言葉にすること」が重要です。先日、シンガポールで日本人会クリニックの言語聴覚士の方とお話をする機会がありました。その言語聴覚士の方と私がともに同じ考えだったのは、「具体物を使って体験し、その体験の中で聞く・話すことが、効果的な日本語習得につながる」という点でした。

また、日本語には季節感や季節の行事が密接に関わっています。たとえ気候や文化が違う国に滞在していても、できる限り日本の年中行事を家庭で体験してみましょう。具体的なものに触れることが難しい場合には、映像を通して過去の体験を思い出したり、親御さんが話を聞かせてあげましょう。

学習環境が意味すること

インターナショナルスクールのプレスクールに通園するお子さんと日本式の幼児教育を受けているお子さんでは、お子さんの学ぶ様子にも違いが表れています。例えば前者では「個」を重視する反面、座って学ぶことが苦手になることもありえます。一方、後者では、文部科学省および厚生労働省が公表している「幼児期が終わるまでに育ってほしい10の姿」にも記されている通り、「協働性を育む」ことが重視されています。「集団行動」を大切にする反面、自己主張をしたり人前で手を上げるたりすることが苦手なこともあるでしょう。ぜひ保護者の方には、園の教育方針や外国の先生または日本人の先生からの学びが、自分のお子さんに合っているか、将来どの様な学び方をさせたいかという視点で、学習環境を選ぶようにしましょう。

学校の先生に聞きました。
どのように子どもの力を育んでいますか?

英語力・国際性の育て方

外国生活が長く日本の学校生活に戸惑っているお子さまには個別に配慮しています。

 敷地内にある米国テンプル大学ジャパンキャンパスやブリティッシュ・スクール(BST)での英語体験、英語話者の先生との日常的な対話の中で、国際性を自然に身につけていきます。また、海外育ちでも日本育ちでも区別なく共に過ごし、異学年とも交流することで「多様性」を受容します。

日本語の力・日本人としての素養の育て方

 第一言語の日本語は、学習指導要領に基づき国語は週9時間、日本語による道徳は1時間学びます。国語では心情の理解などの「読解力」だけでなく、主語・述語による文章構造を意識した、「日本語の言語技術」を鍛えます。

食事などのマナーや時と場に応じた姿勢、態度、さらには日本人としてのアイデンティティの基礎を確立し、相手をいたわり思いやる心や共感する力、自己調整しながら人と協働していく態度など、いわゆる「非認知能力」も高めていきます。

聖心女子学院 初等科・中等科・高等科

 

感謝と尊敬の気持ちをもって人と関わることが、「日本人の心」を育てます。

聖心女子学院初等科
Sr.大山 江理子校長

日本語と日本人としての素養の育て方

自国の文化や価値観を理解することは、グローバル化する今日においてとても大切です。日本の文学に親しみ、百人一首大会や能教室などの体験を重ねながら日本人としての感性を磨きます。また、漢字や語彙の学習を通じて日本語の奥深さも学んでいます。祝祭日や伝統行事の体験を味わい、周囲の方への感謝と尊敬の気持ちをもって人と関わることは日本の豊かな心を育てることにもつながります。

帰国学級児童は、 海外経験をテーマに探究学習することもあります。ぜひ、海外体験を大切にしましょう。

千葉大学教育学部附属小学校
佐藤 一馬 副校長

英語力・国際性の育て方

英語が堪能な児童が多いため、ネイティブ教員による「外国語活動」でより高度で専門的な内容を学びます。「国際性」は本大学教育学部での重要な研究テーマでもあるため大学附属ならではの環境を生かして「異文化間能力」を育んでいます。大学に来ている留学生を授業に招き多文化に触れたり、児童が滞在していた国の文化・慣習を発表し合う時間を設けています。

日本語の力・日本人としての素養の育て方

日本語よりも英語の方が自分を表現しやすい児童には、国語の時間内に個別に「日本語指導」を行います。帰国学級独自の課外活動として「帰国遠足」を実施し、浅草など下町に行き風俗博物館を訪れ昔の衣食住を学んだり、落語を聞いたりと日本文化に親しみます。

考える力・探究力の伸ばし方

「総合学習」の時間に、個々にテーマを決めて探究し資料制作・発表しています。帰国学級の生徒は海外での生活経験と関連させたテーマを設けることが多く、社会科の授業でも、日本社会の仕組みを学びながら滞在国との比較や違いに目を向け、視野を広げる学びを展開しています。

ご家庭では「もっと知りたい」「挑戦したい」というパッションを 応援しましょう。 

ローラス・ インターナショナルスクール・ オブ・サイエンス
日置 麻実 学園長

英語力・国際性の育て方

 授業の共通言語は英語で、たとえ日本人同士でも校内のコミュニケーションは全て英語で行っています。子どもたちが世界で活躍する「イノベーター」になることを理念としているため、世界でのさまざまな問題を授業で取り上げ、視野を広げグローバルな視点を身につけていきます。

日本語の力・日本人としての素養の育て方

 国語や空手のレッスンを通じて、心身を鍛え、礼儀作法など日本人としてのアイデンティティを学びます。日本語を維持したい場合には、ご家庭で日本語で会話する時間を持ち、日常生活の中で日本文化を体験したり、日本人としての考え方に触れましょう。

考える力・探究力の伸ばし方

 学校ではプロジェクトベースの学習やサイエンスの実験を通じて、考える力や探究心を育みます。「サイエンスマインド」を身につけ、「エンジニアリング・デザインプロセス」を使った問題解決を重視し、自ら考え行動する力を養います。

 

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◆帰国後の英語保持どうする?
◆国際教育プログラムの学校を探す
 日本の国際バカロレア(IB)枚一覧
 1B初等教育ブログラム(PYP)とは?
 ケンブリッジ国際とは?
◆帰国後の体験談
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今回ご紹介する小学校
●立川国際中等教育学校附属小学校
●東京学芸大学附属小学校
●東京農業大学稲花小学校

 

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 今回も「海外生・帰国生を歓迎する小学校」をご紹介します。
子どもたちに寄り添ったサポートや可能性を伸ばす学びをご参照ください。


 

2025年1月10日現在の情報です。最新情報は直接お問い合わせください。

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