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いつ、どんな対策をする? 海外生・帰国生が挑む!医・理・工学部受験2024 (後編)~知られざる”帰国生入試”の合格戦略~

前編はこちら

近年、大学受験において理系進学への関心がますます高まっています。「前編」では、海外生・帰国生の受験対策や帰国生入試合格に向けた7つのポイント、海外在住中からできる「数学対策」についてお伝えしました。今回は、医学部・工学部の帰国生合格体験記をご紹介しています。医学部受験の近年の傾向や入試までのスケジュールも必見です。ぜひご覧ください。

河合塾 海外帰国生コース責任者
藤田真由美さん

1992年学校法人河合塾に入塾。教材作成部門、大阪校、大阪校医進館(医学部特化校舎。現大阪北キャンパス 東大・京大・医進館)などを経て、2020年より本郷校海外帰国生コース、2021年より現職。 これまでの指導クラスは、医学部医学科、東京大学、京都大学、慶應義塾大学など幅広い大学、学部に及び、多くの受験生(帰国生・一般生)を合格へと導く。

 

医学部受験 近年の傾向は?

日本には医学部を設けている大学が81校ありますが、一口に医学部受験といっても入試日程や選考方法はさまざまです。近年は、国公立大学が後期日程を廃止する傾向にある一方で、推薦入学制度を採用する大学や、地域の医師不足を解消することを目的とした「地域枠」の募集定員が増えています。医師をめざす受験生は、推薦制度を選択肢に入れることよって、受験の機会が広がり医学部入学の可能性が高まるでしょう。「帰国枠入試」を実施する大学は、わずか15校前後です。募集定員も若干名で、一般選抜よりも「狭き門」と言えます。早めに情報を集めチャンスをつかみましょう。 

※富山大学(2022年度~)、岐阜大学(2023年度~)が後期日程を廃止 

一般選抜

⚫︎ 募集定員が最も多い。学力上位層の受験生が合格ボーダーの1点を争う大激戦 

⚫︎ 国公立大学は、1次試験で「大学入学共通テスト」、2次試験で各大学の「個別試験」が課される 

⚫︎ 私立大学は、1次試験で「英語、数学、理科2科目」、2次試験で面接

⚫︎ 小論文を課すパターンが一般的 ・    帰国生が挑む場合は、「海外の高校で好成績を収め、かつ日本のカリキュラムも網羅したうえで、日本の上位層とボーダーラインを争う」ことになる 

帰国枠入試

⚫︎ 保護者の都合や海外赴任で、日本の教育を受けられなかった高校生が対象

⚫︎ 例年9月に始まり、翌年2月まで各大学がそれぞれの日程で選考する長期戦

⚫︎ SATやAレベル、IBDPなどの統一試験のスコアのほか、TOEFL、IELTS、現地校での成績(GPA)、推薦状などが求められる

⚫︎ 「数学、理科2~3科目、(英語)」、大学ごとの個別日程で面接、口頭試問、小論文などが課される 

学校推薦型選抜・総合型選抜

⚫︎ 出願開始時期は総合型が9月、学校推薦型は11月。年内に合否が出るケースも。一般選抜と併願できる

⚫︎ 評定平均(国公立4.3以上)や出身地域の出願条件が厳しいため、一般選抜より倍率は低い

⚫︎ 公募制、指定校制、地域枠など受験形態に応じた対策が必要 

⚫︎ 合格したら入学することが前提

⚫︎ 書類審査、面接試験

⚫︎ 小論文などの人物評価を重視 

⚫︎「大学入試共通テスト」を利用する国公立大学が多い。個別試験を課す大学もある 

 

藤田さんからのアドバイス 

各国の統一試験は英語漬けの海外滞在中に必ず受験を! 帰国後、日本式の試験対策に集中できます。取得したい参考スコアは下記の通り、ハイレベル! 

医学部、東大理科一類 の場合

TOFLE110
SAT1500
IBDP40
IELTS7.0

 

入試形態の多様化が進む中でも「合格のために必要なポイント」は変わりません。海外の高校で履修する科目は、満点をとるつもりで勉強しましょう。土台となる基礎学力があれば、帰国後、日本式の学力を積み上げることができます。大学側は、帰国生に対して語学力だけでなく、海外経験で培った豊かな「人間力」に期待しています。志望理由書や面接で、将来どのような社会貢献をしたいかということとつなげてアピールしましょう。志望校は、高校1年生のうちに、ある程度絞り込むこと。志望校の出題傾向を知ることで、戦略的な対策をたてられます。特に医学部志望の方には「どんな医師になってどのようなことを実現したいのか」といった志望動機も、モチベーションアップの一助になります。かつて医学部受験は「2浪、3浪も当たり前」とも言われていましたが、今は現役生主体です。「絶対に医師になる」という強い意志を持つことが肝要です。

医学部・工学部合格を果たした帰国生たち ~Interview~

Case ❶
医師になりたいという目標が心の支えに
~海外在住時と帰国後で異なる対策を~

富山大学 医学部医学科 2年 
岡本 和さん

滞在国 : フランス、アメリカ 
滞在期間 : フランス 4年間(小学2~5年生)、     
          アメリカ 3年半 高校1年(日本の中学3年)~4年(日本の高校3年)

■ 医学部を目指したきっかけ 

日仏米の湿度や紫外線の量など環境が異なる3ヵ国に滞在する過程で、皮膚に突発的な痒みが誘発された経験から皮膚科の医師に興味を持ちました。痒みが誘発されるとその都度患部を冷やす必要があり、精神的に不安定な状態に陥ります。痒みの原因や肌について調べて肌の構造や神経、ランゲルハンス細胞、T細胞やサイトカインについて自分なりにまとめて行くうちに、医学に興味を持ったと同時に、根本的原因・機序・治療法が解明されていない皮膚病が多いことを知りました。将来皮膚病で悩む患者さんのQOL向上のため患者さん一人ひとりの住環境や肌に合う治療を行う医師になりたいと思い、医学部を志望しました。

■ 高校時代の主な成績 

GPA 5.0、SATスコア1350、TOEFLスコア94 

 ■ 受験対策で意識したこと 

海外在住時と帰国後の予備校時でそれぞれ異なることを意識して生活していました。海外在住時は、1次選考で重要なSATやTOEFLスコアの向上、そして高校の成績維持に力を入れ取り組んでいました。アメリカの高校で習う理系科目は基礎的な内容だったため、授業で取得できることはすべて吸収する意識をしていました。数学に関しては、高校卒業に必要な単位を早取りして数Ⅲ内容を扱うアドバンスクラスを受講していました。現地高校の授業だけではなく日本の参考書も活用し、数学、化学、物理、生物などの基礎は十分に身につけておくことをおすすめします。基礎を理解しておくと、帰国後予備校で学ぶ際にかなり楽だからです。帰国後は、理系科目の基礎で理解の不十分なところを再確認し、演習問題を解き始めました。学力向上は2次選考通過に必須ですが、医学部の帰国枠入試は小論文や面接が課されることが多いので、それらの対策にも重きを置いていました。面接対策としてどのような医師になりたいかや大学入学後何を学びたいかなど明確なビジョンを見つけたり、小論文対策として社会情勢や医療の現状を把握したりすることを重点的に行うと良いと思います。

 ■ 将来の夢

入学前から興味のあった皮膚科や小児科はもちろん、今後授業や病院研修などに刺激を受けながら将来を決めていきたいと考えています。そのためにも大学生活を有意義なものにしたいので、今後も多くの活動に参加してさまざまな人と関わっていきたいです。

 ■ 海外生へのメッセージ 

大学受験期間は、辛くなったり行き詰ったりすることもあると思います。特に国立大学を目指すと、自分自身や勉強との長期戦になります。そんな時に医師になりたいという将来の目標がモチベーションを維持し心の支えになってくれると思うので、それを心に留めておくと良いと思います。また、自分なりの息抜き方法を見つけ適度にストレスを解消することが継続的に受験に取り組むうえで大切です。医学部入試の帰国子女枠は毎年少なく限られているため不安になることもあるかもしれません。実際に私も当初は不安しかありませんでしたが、自分の可能性を狭めることなく、目標に向かって頑張ってほしいです。皆さんが希望する道へ進めるよう応援しています。

Case ❷
海外での成績を上げ、とにかく基礎を大切に 
~募集要項は早めに確認を~

東京大学 理科一類 1年(工学部応用化学科志望) 
西澤 天太さん

滞在国 : タイ 
滞在期間 : およそ19年半(生まれてから高校卒業後程度まで)

■ 工学部を目指したきっかけ 

元々化学と数学が好きで、特に高校時代にインターの授業や実験を通して化学に興味を持ったため、大学では化学系の学科に行こうと思っていました。せっかく理系に進むのなら日本で最も研究環境が整った東京大学に行こうと思い、東大の化学系研究室を片っ端から調べていきました。その中で、有機半導体の有機材料の研究に興味を持ち、工学部を志望しました。

■ 高校時代の主な成績 

A-level: 
Chemistry, Physics, Mathematics … A* 
As-level: 
Computer science, Further mathematics … a 
(Asの最高グレードがa、A-levelがA*です。) 
Cambridge A-level First place in Thailand for 
“Best Across Three Cambridge International A Levels” 受賞
 Cambridge As-level further mathematics
 “High Achievement award in Thailand” 受賞 
IELTS 7.5

■ 受験対策で意識したこと 

タイにいた頃は学校の勉強を頑張り、統一試験でできるだけ良い結果をだせるよう努めていました。ボランティアなどにも参加し、並行して大学のリサーチを行いました。私は、リサーチをする時期が出遅れたためIELTSの取得が遅くなってしまいました。大学によって必要な資格試験や書類などはまちまちなので、募集要項を早めに確認することが大事だと思います。志望理由は、思っているよりも何倍もの時間がかかるので、早めに進めると良いでしょう。2次試験対策については、とにかく基礎を大事にしました。日本の教科書で基礎を叩き込み、演習問題を解く。そして、問題で詰まったらその分野の基礎をもう一度学び直しました。河合塾で教わった知識も演習に応用できるところを吸収し自分のものにしていく。それを繰り返して、何とか合格することができました。  受験は辛く長い道になるので、心が折れないように適度に休憩を取ったり、たまには息抜きをすることも大事です。

 ■ 将来の夢 

まだ定まってはいませんが、博士課程まで進み有機材料の研究を続けたいと考えています。卒業後は、研究職など化学関係の仕事に就きたいです。

 ■ 海外生へのメッセージ 

海外滞在中は、現地でしか出来ない経験をしたり学校での勉強を頑張りましょう。そして、出来るだけ早い内に志望校を考え、出願できないという事態を避けるためにもその出願資格等を確認しておきましょう。大学受験は大変だと思いますが、受かってしまえば楽しい生活が待っています。そのためにも今できることを頑張ってください!応援してます。

気になる! 医学部学費ランキング

(2024年度河合塾調べ)

医学部をめざす際、重視すべき要素のひとつが学費です。私立大学の6年間の学費総額は2,000~5,000万円近くと高額です。一方で、国際医療福祉大学や慶應義塾大学、東京慈恵会医科大学など「特待生制度」を導入している大学も多くあります。経済的な理由で受験をあきらめず、最新情報を集めましょう。

※産業医科大学は修学資金貸与制度で11,504,600円。自治医科大学は修学資金貸与制度で0円。 
⚫︎「6年間総費用」は2024年度募集要項(一部HP)で公表されている学費に基づいて試算。募集要項に記載されていない大学も含むので、必ず入学時に確認してください。 

国立大学

6年間総額:3,496,800~4,139,760円

 

2025年1月10日現在の情報です。最新情報は直接お問い合わせください。

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