学校・幼稚園コラム
シンガポール公立小学校 徹底解説

※当記事は2013年現在の内容です。2017年版はこちらからご覧ください。

国際的に評価される教育立国シンガポール
「ローカルスクールに興味はあるけれど、実情がわからない」という読者からのご要望にこたえて、シンガポール公立小学校を徹底解説します。

シンガポールのローカルスクールとは

 シンガポールは国家戦略として「教育」を掲げており、教育立国として国際的に高く評価されています。近ごろは、日本からもこのシンガポールの教育に高い関心が寄せられており、視察にくる教育関係者が増え続けています。読者の皆さまからも「ローカルスクールに興味はあるけれど、実情がわからない」と、その詳細を知りたいという声が多く寄せられています。

 シンガポールの基礎教育をになう公立校(現地校)のカリキュラムはどのような仕組みなのでしょうか。Springが徹底解説します。

◎二言語教育を中心にしたカリキュラム

 シンガポール公立校は、小学校6年制、中学校4年制、高校2年制(※1   小学校卒業後には複数の進路があります。後述のPSLE図表参照)をとり、シンガポール国民と永住権(PR)保持者が通っています。各校の空き状況によって、帯同家族ビザ(DP)保持者である外国籍の子女も受け入れているほか、学生ビザを取得して入学できるケースもあります。

 教育省(Ministry of Education、以下MOE)によると、公立小学校・中学校・高校における外国籍児童・生徒(※2   DP保持者および学生ビザ保持者)の割合は全体の約4%で、ここ数年において大きな変動がなく推移しています 。

 公立校の最大の特徴は、母語と英語を中核とする二言語教育で、義務教育ではないローカル保育園・幼稚園からその基礎教育は始まります。授業は、「母語」を除けば全科目英語でおこなわれます。シンガポールの公用語であるおもな民族語、すなわち中国語・マレー語・タミール語のいずれかを「母語」として入学時に選択します。それらの言語が母語でない生徒の場合、学校を通じて MOEに母語学習免除の申請をすることもできます。中国語の重要性が語られる中、最近では非中華系でも中国語を選択するケースが増えています 。

◎小学校卒業試験(PSLE)

 小学校低学年では母語のほか、英語と算数に比重がおかれます。3年生以降では、追加科目として理科や社会が導入され、放課後にはダンス・理科・アート・楽器演奏など各校によってさまざまなクラブ活動(CCA)の場が提供されます。4年生修了時の試験結果で5年生以降のクラス分けが行われ、卒業試験(Primary School Leaving Examination、以下PSLE)にむけて学習がさらに本格化します。
 PSLEとは、将来の進学コースを決定づける小学校卒業試験のことで、 1週間にわたり口頭試験(英語および母語)、リスニング試験(英語および母語)、筆記試験(英語・母語・算数・理科の全教科)がおこなわれます。

詳細は教育省(MOE)ウェブサイトにてご確認ください。www.moe.gov.sg

◎基本情報

長期休暇: 6月および11月中旬~12月末
授業時間: 1部制(7:30-13:30)または2部制(7:30-13:30、および12:00-6:00)
      学校により異なり、段階的に1部制への完全移行が進められる予定です
対象年齢: 6歳-11歳
      (1月生まれが学年で年長、12月生まれが年少。外国人子女の場合、
                                 学年をおとすなどの特別措置がとられることもあります)
1クラスあたりの人数: 約30人
一か月あたりの学費: 永住権(PR)保持者$103 、外国人(non-ASEAN)$513
          (※2013年現在。そのほか教科書、ユニフォームなどは別途購入)
給食   : なし。休み時間に校内の食堂で軽食を購入するか、持参したお弁当を食べます

※2013年6月25日現在の情報です

公立校で使用される教材例(1年生) 公立校で使用される教材例(1年生)

◎ 公立校に通わせる日本人の皆さんに聞きました

  現地公立校で学ぶということは、現地の常識・環境に身を置くことを意味します。シンガポールの場合、生徒は毎朝、国旗掲揚、国歌斉唱、国民としての誓い(National Pledge)を立て、シンガポール人としての価値観を習います。実際日本人が通った場合、どのような点が大きな違いとなるのでしょうか。実際にお子さまを公立校に通わせる日本人の親御さんに聞きました。

公立校に通わせる日本人の皆さんに聞きました。

◎公立校に決めた理由は?
◎家庭での学習について
◎公立校で戸惑ったことは?

Aさん一家の場合( 5年前後滞在予定)

理由:英国や米国に駐在した知り合いが現地公立校にお世話になっていたので、自分たちがシンガポール駐在になって子どもたちを公立校に通わせることは自然な選択でした。ローカル幼稚園を経て小学1年生から入学できたので、英語・中国語ともに比較的スムーズになじめたと思います。授業料がインター校などと比べて安いのも魅力的でした。

家庭学習:中国語だけ家庭教師をつけています。PSLEについて比較的ゆったり構えているのは、駐在予定が数年のためです(小学校卒業前後か中学・高校のいずれかのタイミングで他国か日本に移動予定)。普段は塾に通わせ、長期休暇中に一時帰国し、日本の小学校に通わせています。友人は補習校や通信教育を受けている人も多いです。

戸惑った点:学校や地域により、校風や学習量もさまざまのようです。シンガポール人は共働きの家庭が多いようですが、日本人のお母さん仲間を見る限り専業主婦が多いので、子どもの学習を見てあげる余裕があるようにも思います。インター校よりも生徒の出入りが少ないと思っていましたが、同級生がシンガポール国内で転校するケースも多々あり、意外でした。

Bさん一家の場合(長期滞在予定)

理由:これからの時代英語だけでなく中国語ができることは必ずプラスになると思い選びました。シンガポールに長期滞在するので、生徒の転校が多いインター校や日本人学校よりも、現地校で長期的な友人関係を築いて欲しいと考えました。

家庭学習:PSLEにむけ努力させたいので、英・中・算で家庭教師をつけています。また、日本語補習授業校にも通わせています。 芸術系・スポーツ系のお稽古が好きなので、勉強とのバランスを考えながら続けていますが、時間のやりくりに苦労しています。

戸惑ったこと:多民族国家で価値観が違うことが当たり前なので、あまり違和感はありませんでした。あえて言うならば掃除の時間がないことくらいでしょうか。ただ、毎年2月のTotal Defence Day(全面国防の日)では、学校で日本軍が占拠していた時代のことを赤裸々に取り上げるので、日本人なりの歴史観を親子で話し合うようにしています。

 ◎Spring編集部より

 公立校でのタイトなスケジュールや、PSLEの大変さが強調される中で、実際に通わせている日本人の親御さんの感じ方はさまざまのようです。それは学校によって校風や学習量が大きく異なるうえ、小学校卒業後にシンガポールで進学するか否かの進路によって取り組み方に差があるからだと感じました。

 国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)や生徒の学習到達度調査(PISA)などの国際的な教育指標で上位にランクインしているシンガポールの教育については、今後も注目していきたいと思います。

※2013年6月25日現在の情報です
※入学情報・その他の詳細につきましては関連機関にお問い合わせの上、ご判断ください。

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