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「インター校生・現地校生のための国語(日本語)学習」編

2019.01.22

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<必見!Springウェブサイト限定!>
取材にご協力いただいた教育機関の先生方から
貴重なアドバイスをいただきました。

早稲田アカデミー インター校
五十嵐 敢 先生

【共通】

Q. 日本語と英語を両方ネイティブレベルに学ぶことは可能だと思いますか。そのためには、日本語はどの時期にどのような学びをすることが必要だと感じますか。

可能ですが、ネイティブレベルなら小学生低学年がポイントになるかと考えます。
日本語には3段階の重要な時期があると考えています。まずは、小1-2の段階で文字と発音が結び付くかどうか、音読ができるかどうかというポイントです。
次は、小4で、この学年から漢字の画数が増え、抽象語が入ってきます。ここでは部首を知っておき、音読しなくても目で見て漢字の意味をとらえることができるかどうかがスピードを分けます。同時に10歳から12歳までは知識世界の背景を作る時期ですので、男子は図鑑やスポーツ選手の選手名鑑などで「まるごと世界を手に入れる」こと、女子は小説やドラマ、漫画などで「ストーリーや登場人物の行動パターンを学ぶ」ことが教室外でできるとよいと思います。
最後の段階は中学生からで、自分の考えを書けるようになるという作文・小論文が必要なのではないかと思います。語彙面ではインター生/現地校生は苦労することがありますが、細部の読みを必要とする読解問題よりも、自分の考えを日本語で論理構築できることが将来的なIBや大学入試で必要とされる能力を育てると考えます。
共通するのは、インター校/現地校生活だけの時期はなるべく短くして、無理のないペースで日本語環境をすぐ作ることです。2年以上空白があくと、同学年内容のキャッチアップは非常な困難を伴います。

【幼児編】

Q. 海外で生活しながら日本語を母語として習得するために、気をつけるべきことや考え方をご教示ください。

ご家庭で、安易に英語で会話しないこと。子供には「主語・修飾語・述語」というフルセンテンスで会話させること。質問の答えを先回りして、親が言葉を補わないこと。無理やり本を読ませないことという4点です。

Q. 幼児期に家庭で取り組める具体的なことを教えてください。読書の仕方のアドバイスや読み聞かせにおすすめの本などがあれば教えてください。

読書の仕方にはアドバイスはなく、その人なりの読みの世界を構築するには何の本と出会うかがカギだとは思います。個人的な意見として、ご両親が幼児期に読んだ本を読み聞かせするのがよいかと思います。それは、絵本や幼児期の本をご両親の側が読むことで、ヒーリングにつながるということと、同時に幼児期の本に寓意されていることに気づくチャンスがあるからです。もちろん、親子で感覚を共有でき、親の発音の仕方を子供が学ぶということにもつながります。ご両親が子供のころの話をしたり、創作の怖い話をしてあげることもよいかと思います。ナラティブ(声による物語)な「お話し」は、子供のころは驚くべき吸収力で受け取ります。

Q. 小学校入学前の年齢、幼稚園の年中・年長の時期にひらがなの読み書きはやっておくべきでしょうか。

自分の名前と家族の名前と住所を日本語で書けることは大切だと思います。ただし、ひらがなや漢字の書写は、小さいお子様の場合、必ずご両親どちらかが隣にいて練習させることが大切です。隣にいないと、独創的な筆順を自分で作り上げることがあります。

Q. 英語環境のせいか、家庭でも特に兄弟間などで日本語よりも英語の方が簡単に出てきてしまいます。たしなめたりすると、日本語を強制されたように感じて嫌いになってしまうのではないかと心配です。おすすめの対処法があれば教えてください。

お勧めの対処法はありません。子供は、友達と話せる言語、言い換えれば冗談と悪口が言える言語から伸びていくからです。それでも、言葉にもマナーがあるという意識を持つことは大切です。そのため、日本語では「テーブルマナーとして、きれいな言葉を使っていこう」というという声がけになると思います。子供に注意するより、ご両親の側が、言葉に気を付けることが有効です。

【小学校低学年編】

Q. 「母語としての日本語の学習」という意味で、この時期に保護者として注意すべきことはどのような点でしょうか。

筆順、音読、面白い本をリビングに置いておくという3点です。また、丸付けをご両親がこまめにすることで「ちゃんと見てくれている」という気持ちがこどもに生まれます。

Q. カタカナや漢字はドリルなどで練習させていますが、なかなか身が入らず定着しないようです。おすすめの具体的な学習法があれば教えてください。

隣にご家庭の方が座って、そっと見ていることです。また、書くときに「小さい声で読む」ことをアドバイスするといいかと思います。(歌いながら書く子供は、それはそれで構いません)自学自習ができるのは中学生以降と、一部の中学受験生だけではないかと思います。

Q. 普段話していると日本語は年齢相応にできているように感じますが、先生方が「日本語がおかしい」と気づくようなポイントがあれば教えてください。

英語の名詞に「する」を付けて、日本語化するところです。同様に「助詞」(てにをは)の省略や、受け身(受動態)でうまく説明できないことは目立ちます。英語での構文と日本語の構文が違うため当然の現象ですし、それが問題になることはありません。私はネイティブの日本語スピーカーですが、未だ英語の読み書き会話は中学生レベルで、それでも海外で仕事ができています。

Q. 国語の教科書を一緒に読んだり本の読み聞かせなどをしていますが、他に気軽に取り組める学びの形があれば教えてください。

暗唱だと思います。といっても、あえて構える必要はありません。早口言葉や、落語の「寿限無」(じゅげむ)、四字熟語のクイズなど、「発音することの喜び」を刺激することがコツです。

【小学校中・高学年編】

Q. この時期の国語力維持・向上について、注意すべきことがあれば教えてください。

漢字検定を受けるなどして、漢字・語句の棚卸しをすることです。海外生活では、子供は思ったより語彙の世界と出会っていません。そのため、該当学年より下げた級から確実に漢検を取得することをお勧めします。本人の自信にもつながります。

Q. 日本語より英語の方が語彙が多く、なかなか日本語の言葉の幅が広がらないようです。対処法があれば教えてください。

日本で暮らした自分の昭和50年代を振り返ってみても、さほど言葉の世界は広がっていなかったように思います。ただ、学習以外の領域、テレビ、漫画を含む本、ゲームなどの世界から語彙を得ていた記憶はあります。ですから、例えば、ゲームは必ず日本語版で遊びなさいとか、日本のテレビを一緒に見る(高尚なものでなく、バラエティやお笑いも結構です)、一緒にカラオケで歌うなど、普段の生活に日本語を入れるとよいかと思います。
当校では、「ブラックジャック」「ガラスの仮面」「動物のお医者さん」「とめはね!」などの70-00年代の漫画をそろえていますが、これは当時の日本をグラフィカルに知ることと、昭和の漫画は語彙に長けていたと考えるからです。

Q. 中学受験を考えていますが、インター校生でも受験の国語力を養うことはできるでしょうか。家庭でできることがあれば教えてください。

一番お願いしたいのは、漢字の丸付けと、記述問題の直しを手伝ってあげることです。本人は漢字を「だいたいあっていれば〇」と考える傾向があり、記述にはパラフレーズ(言いかえ)が必要なため、得点できているか本人にはわからないことがあります。
そして、「受かったら帰国する」ではなく、将来のプランを考えて日本に帰ることを明確化することです。子供は親の考えを、言語を越えて見抜きます。日本に留学するためにはこれくらいの語学力が必要だという考えを持たせるといいのではないでしょうか。

Q. 理科や社会などを日本語で学んでいないので、帰国後が心配です。何とか国語の教科書程度はできても、日本で他の教科の勉強にはついていけるでしょうか。

足りないのは知識量であって、社会や理科の根本的な考え方はインター校/現地校でも習えていると考えます。仮に四国の県名が全部言えなくても、ワラビ(蕨)を知らなくても、それは日本に帰った後に生活体験としてすこしずつ身に付きます。まずは学校の理科・社会を大切にすることがよいかと思います。

Q. 英語も日本語も中途半端になっていくようで親子ともに自己嫌悪に陥っています。子どもたちにどんな言葉をかけていけば良いでしょうか。

「大丈夫、大人になったら英語と日本語に橋がかかるよ。」ではないでしょうか。発達段階や受験という特定の時期で周りと比較せず、長い目で二言語を育てるという気持ちと、学び続けられる環境の構築が大切かと思います。また、テストは偏差値で日本の生徒と比べるのではなく、過去の自分のスコアと比べることが基本です。周りの平均的と思われている日本人像に左右されるよりも、お子様の成長にフォーカスして考えた方が健康的です。平均的な日本人像というのはバーチャルな存在であって、そんな人は実在しないかと考えます。

【中学・高校生編】

Q. この時期の国語力維持について、注意すべきことがあれば教えてください。

漢検3級レベルの語彙を使いこなせること、自分の考えを具体例や根拠とともに説明できることです。中学生になると、漢字・語句のテストでぐっとスコアが落ちることがあり、本人もボキャブラリーの幅についていけず、あきらめたくなるようです。しかし、せめて出会った言葉は大切にするという姿勢を崩さないことです。

Q. 敬語や熟語など大人の日本語がきちんと使えるようになるには、どのような工夫が必要でしょうか。

このご質問は、話し言葉から書き言葉への成長についての重要なポイントを含んでいると考えます。まずは大人がそのレベルの言葉で子供と会話することでしょう。具体例を挙げたり、根拠を言わせることを普段からさせることです。そして、自分が英語で読んでいる本の日本語版を読むことも大切かと思います。

Q. 高校受験では「記述式」の問題が増え、帰国受験に作文が含まれる学校もありますが、どのような対策をするべきでしょうか。

インター生/現地校生は、書くこと自体には抵抗感はないかと思います。それを誰かが丁寧に添削して、大人の言葉遣いと言い回しに直してあげる環境が必要です。ワンポイントアドバイスとしては、「理由」を答える問題が一番簡単なので、まずはここから手を付けることでしょう。

Q. IBで日本語を取る上で、気をつけるべきことを教えてください。IBDPでバイリンガルディプロマを目指したいと思っていますが、アドバイスがあればお願いします。

中学生段階から、「書く」訓練をすることです。また、現在の日本を知るためにニュースを読ませることです。IB日本語では批評的な読みを必要としますが、それには引用して具体例を挙げることや、根拠の提示が必要です。そのためには、話し言葉ではなく、実際に自分の手で書いてみて、誰かのチェックを継続的に受けることが有効です。一朝一夕にはできず、最低2年程度は下積みが必要かと思います。
『本を読む本』(講談社学術文庫 J・モーティマー・アドラー (著), V・チャールズ・ドーレン (著), 外山 滋比古 (翻訳), 槇未知子 (翻訳))を読むととても役に立ちます。古典的な名著です。
その他、日本語の維持・習得において普段のご指導の中で気づいた点や海外で子育てをしている保護者に伝えたいことがあればお願いいたします。できるだけ具体的なお話をお伺いできれば幸いです。  
保護者の側が、グローバル化、2020年大学入試改革、AIによる雇用減少という3点セットを恐れないことです。大切なものは、時代が変わっても変わらないからです。「母国語で読み、書き、考える」という3点はもっと古くて大切な課題です。
また、すぐに成果を求めるのではなく、長い目で継続を旨とすることです。目の前にある小さなつまずきより、お子様がご両親の年齢になったときに必要なものに目を向けるといいのではないでしょうか。
最後に、マスティズム(~ねばならない)という考え方を捨て、鷹揚(おうよう)であることです。これまで書いてきたことは、必要条件であって充分条件ではありません。本人の「学びスイッチ」は本人が押すものであり、それは親の課題ではないと考えます。親の課題は「環境を作ってあげ、見守り、待つ」ことではないでしょうか。そのためには、少々の気楽さを心に持つことが長続きのコツだと思います。

早稲田アカデミーの詳細はこちら。
https://spring-js.com/singapore/1518/

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