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「インター校生・現地校生のための国語(日本語)学習」編

2019.01.22

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<必見!Springウェブサイト限定!>
取材にご協力いただいた教育機関の先生方から
貴重なアドバイスをいただきました

日本語文化継承学校・IB教師
磯崎 みどり 先生

【共通】

Q. 日本語と英語を両方ネイティブレベルに学ぶことは可能だと思いますか。そのためには、日本語はどの時期にどのような学びをすることが必要だと感じますか。

私共の学校である日本語文化継承学校(以下継承学校)は、海外に長期滞在し日本に帰国する直近の予定がない方々、もしくはシンガポール永住者のお子さん方を対象とした学校です。そのため片親が日本人ではないご家庭が数多くいらっしゃいます。したがって、日本語と英語という二か国語だけではなく、中国語やフランス語、ドイツ語と言った三か国語が、メイン校のみならず、ご家庭でも使用される環境の中で育つ子ども達が多く、日本語は第三言語であるお子さんも多く見られます。
継承学校は、できる限り学齢通りの教材を使用し、最低これだけはカバーすべきであるという内容の指導を行う学校であるため、その状態を前提に幼児期、小学生の時期の内容を回答していきたいと思います。
一方で、私自身はタングリントラストスクール、オーストラリアンスクール等でIBの母語レベル(第一言語レベル)の日本語指導教師であり、更には、日本の学校では一度も学んだことのない中でIBディプロマと共にバイリンガルディプロマも満点で取得した娘を育てた母親でもあります。母としての立場と、それぞれの学校の教師としての立場から回答していきたいと思います。
まず、「日本語と英語の両方をネイティブレベルに学ぶことが可能かどうか」というご質問に対しては、可能だと答えます。しかしながら、日本語と英語の両方をネイティブレベルに高得点で習得して成長する、つまり本物のバイリンガルを達成できるのはごく一握りの子ども達であることを知る必要はあります。誰もが達成できるゴールではなく、才能と本人・家族の努力の上に初めて達成できるものであることを理解した上で目指すのでなければ、両言語ともに中途半端になる可能性のある、危険をはらんだ取り組みであることも強調したいと思います。ましてや日本語が第三言語である場合、単純にトリリンガルを目指す、と考えるより、どの言語が学習言語で、第二番目はどれか、ということをご家族の生活スタイルや必要に応じて明確にしていくことが大切だと考えます。
併せて本当に二言語が全く同じレベルになるバイリンガルを達成させることが必要なのかどうかもよく考えるべきです。特に国際結婚家族の場合、ご夫婦・家庭内の共通言語である、英語が最重要である場合が多いので、その際、子どもが日本語学習の意義を見つけられない、習得も難しい状態になりがちです。それにもかかわらず無理強いすることはよい結果を生みません。
日本語は簡単なコミュニケーションができるレベルでよい、もしくは家族内で会話できるだけでよい、というように考えることも、場合によっては必要でしょう。日本語は学習言語としての位置づけを目指さない、つまりバイリンガルは目指さない、ということは、恥ずかしいことでもなんでもなく、お子さんの言語に対する力を見極めて決めて行くことだということを理解することが第一段階だと思います。繰り返しますが、日本語・英語を両方聞かせておけば、誰でもがバイリンガルになれるわけではありません。
どの時期にどのような学びをするかということについては、年齢によって違うため、追って詳細をお伝えしたいと思いますが、就学年齢になると、どうしても学習言語が最も重要な言語となってくるでしょう。具体的な事物を示す言葉ばかりではなく、抽象的な内容を学ぶようになる10歳ごろからは、学習言語をしっかりと身に着けることが大切です。したがって、日本語が第二言語、もしくは第三言語になる可能性があるのであれば、学習言語を学び始める前に、日本語の文法的な基礎をしっかりと身に着けることができると、後は習得速度はゆっくりでも少しずつ力をつけて行けるのではないかと思います。

【幼児編】

Q. 海外で生活しながら日本語を母語として習得するために、気をつけるべきことや考え方をご教示ください。

母語、最初に親から学ぶ言語が日本語である場合、しっかりと日本語の母語話者から基礎を学び、身に着けることが必要です。その話者は、必ずしも親である必要はありませんが、母語である日本語を一番身近に聴かせることができるのがお母さんです。お母さんと一緒にいて、日本語で話す、日本語を聞く時間をできるだけ多くとることが大切です。
保育園・幼稚園で英語や中国語を習得させるために、まだ日本語が確立しないお子さんをほぼ終日預けっぱなしにされる方々がいらっしゃいますが、これはかえって英語など日本語以外の習得も確実なものにはできず、セミリンガル(どの言語も中途半端)の子どもを作ることになりかねません。
英語を少し話すようになったからといって、実際によくよく英語を聞いてみると、単語の羅列だけで文章を構成できない、語彙レベルも年齢相当とは思えないような幼稚な単語のみを使用している場合なども見られます。
小学生になる直前までは、母語の確立が最も重要なので、一日の起きている時間の半分より長く母語以外に触れ続けることを避け、母語である日本語を使用する時間をできるだけ長くとれるよう、努力することが必要でしょう。
そして、英語で学んできた語彙が日本語では何というのかを同時に指導していくことは、この時期から習慣づけておくといいでしょう。英語と日本語をつなぐのはご家庭での保護者の役割だと考え、具体的なものの名前を覚えていく時期からつなぐ役割をしっかりと果たしていけば、就学時期になっても続けて行けるものと思われます。

Q. 幼児期に家庭で取り組める具体的なことを教えてください。読書の仕方のアドバイスや読み聞かせにおすすめの本などがあれば教えてください。

とにかく覚えるまで、暗記させるまで同じ本を繰り返し読むことです。言葉はまねをすることが習得の第一歩です。間違っている所を直しながら、何度も覚えるまで読み聞かせるといいでしょう。子どものお話は、全般的にお決まりの繰り返しが多いものですが、繰り返しの多いお話を選び、子どもと一緒に繰り返しの言葉を楽しみながら読むといいでしょう。しっかり読み聞かせすることで、耳で聞いて言語を覚える力を養います。いくつか一緒に楽しめる本を決めたら、その日読み聞かせる本は子どもに好きものを選ばせるといいでしょう。
読み終わった後に、どんなお話だったかを振り返る習慣を幼児期に身に着けると、小学生以降も本を読んだら内容を振り返るようになるのでいいと思います。実際、我が家では幼児期に毎日読み聞かせをした後、その内容を娘に説明させ、それを私が記録していました。記録することで、どんなことが理解できていたか、理解できていなかったかが分かり、成長を見守ることができました。
そして、日本語、英語を問わず、お話を読んだらママにその内容を自分の言葉で伝えることが当然のこととして身についていたことから、新しく読んだ作品に感動したら必ずそれを伝えるということを高校生になっても続けていました。人に分かるように内容を説明する習慣にもつながるので、お勧めの方法だと言えます。

Q. 小学校入学前の年齢、幼稚園の年中・年長の時期にひらがなの読み書きはやっておくべきでしょうか。

子どもが自分から興味を示した場合、遊びを通して一緒に書いてみるのがいいでしょう。しっかり覚えさせるためにテストをしたり、覚えていないからと強制したりするのはよくありません。覚えることが楽しくなる方法、指書きやなぞり書きは効果的でしょう。
子どもはある時期になると、必ず文字に興味を持つようになるものです。興味を持つように、目につくところに文字を見せることは大切なので、カルタを置いたり、文字表を壁に貼ったりして、興味を示したら、一緒に声に出して音と文字を結び付けるところから始め、紙に鉛筆で書いてみるのは最後の段階と考えておくと親子ともにストレスにならないかもしれないですね。

Q. 英語環境のせいか、家庭でも特に兄弟間などで日本語よりも英語の方が簡単に出てきてしまいます。たしなめたりすると、日本語を強制されたように感じて嫌いになってしまうのではないかと心配です。おすすめの対処法があれば教えてください。

兄弟姉妹同士で英語で話すのは友達との会話の延長です。問題視する必要は全くありません。
それより、母語として日本語を身につけさせたいなら、保護者のうち、日本語話者は日本語を使用し続けることです。どんなに英語やその他言語で話しかけてきても、日本語で返答することを続けて行くことは、耳から学ぶ日本語を入れ続けることにつながるため、日本語を保持し続ける必要があるなら、是非心掛けていただきたいと思います。

【小学校低学年編】

Q. 「母語としての日本語の学習」という意味で、この時期に保護者として注意すべきことはどのような点でしょうか。

幼児期同様、できるだけ日本語を使う機会を作ることに加え、どうして日本語を学習する必要があるのかを本人に伝え始める時期でしょう。幼くとも自分で必要性を感じられる子どもは学習を継続することを自ら望むようになります。逆に言えば、日本語の学習の必要性を感じない子ども達は、メイン校外での学習としての日本語は邪魔で仕方がないものにしかなりません。
親子で楽しみながら学べる、将来的にも使えると楽しいことがある言語が日本語である、と意識させることが必要でしょう。

Q. カタカナや漢字はドリルなどで練習させていますが、なかなか身が入らず定着しないようです。おすすめの具体的な学習法があれば教えてください。

カタカナは、アルファベットを使用して生活している子ども達にとって、一番定着しにくい表記法です。カタカナ表記が必ずしも英語の発音通りに表記されないことが理由ですから、英語のどの単語がカタカナでどの語彙にあたるのかをしっかりと結び付けられるようにしていくことが大切です。場合によっては、英語とカタカナを並べた一覧表を作ってみるのもいいでしょう。

Q. 普段話していると日本語は年齢相応にできているように感じますが、先生方が「日本語がおかしい」と気づくようなポイントがあれば教えてください。

「正しい日本語を使用」していると言えるのは、語彙力は今後も養われていくものであることを勘案しても、日本語の文章を構成する上で文法的な面を理解した上で正しい語順が分かることだと考えます。つまり、小学校低学年までに正しい語順で文章を構成できない場合は、「日本語がおかしい」ということになります。多少語彙の使用法を間違ったり、助詞、いわゆる「てにをは」の間違いがある程度は、この時期の子どもにはありがちなことであり、「日本語がおかしい」とは言えません。

Q. 国語の教科書を一緒に読んだり本の読み聞かせなどをしていますが、他に気軽に取り組める学びの形があれば教えてください。

とにかくこの小学校低学年の時期にも多くの本を読み聞かせ、その内容を理解したことを自分の言葉で伝えさせる取り組みが必要です。それと同時に、子どもが自分一人で音読するだけでなく、誰かに読み聞かせをする楽しさを覚えると、更に自分で本を読みたくなります。
文字を読む楽しさ、言葉の持つ力を実感できるのは、今後の学習に繋がる大切な経験です。弟妹、お友達の弟や妹、いとこなど、自分より年下の子ども達相手だと、簡単に読み聞かせ出来るものを選べるでしょう。誰でもいいので読み聞かせをする時間を取るのは良い勉強になると思います。
もちろんこの学齢期の後半には、すでに自分一人で読書を楽しむことができるようになっている時期ですから、その際は子どもが読んだ本の内容を親子で一緒に味わう経験も大切です。話題になった映画の元になっている本を読み聞かせるのもいいでしょう。内容を理解しているだけに、言葉が多少難しくても理解しやすくなります。

【小学校中・高学年編】

Q. この時期の国語力維持・向上について、注意すべきことがあれば教えてください。

実はこの時期の言語習得への取り組みが、後の言語習得における大きなキーとなると言えます。それにも関わらず、特別な近道は全くありません。努力だけが成功に結び付くと考え、幼児期・小学校低学年の時には親子で取り組んでいたことが、この時期には緩くなりがちなところを、気を引き締めて家庭での支援に取り組むべきです。

Q. 日本語より英語の方が語彙が多く、なかなか日本語の言葉の幅が広がらないようです。対処法があれば教えてください。

本当に英語の方が語彙が多く、日本語の語彙が増えていないでしょうか。英語でぺらぺら話すようになったからといって、英語の単語を別の語彙に置き換える、類義語をどれほど知っているか、もしくは実際に使っている英語の語彙を他の状況で使用できるかどうかを確認してみると、意外にわかっていないことも多いはずです。実はフレーズとして覚えて使っているだけで、本当に語彙の意味を理解しているかどうかは怪しい時もあります。逆に言えば、特に抽象的な概念を表す語彙の場合、本当に語彙の意味を理解していれば、それに相当する日本語を当て
はめ、覚えていきさえすればいいことなので、学習言語である英語で完全にその概念を説明できる様、しっかりと理解させるべきです。

Q. 中学受験を考えていますが、インター校生でも受験の国語力を養うことはできるでしょうか。家庭でできることがあれば教えてください。

継承学校の生徒には、中学受験をする生徒は非常に少ないですが、今までにもいないわけではありません。ご家庭で取り組むべきは低学年までと同じですが、受験に向けては問題集に取り組まねばならないでしょうから、日本語の習得を確実なものにするためにも、日本語を使う時間を増やすことが最重要で、そういう意味では家庭でも意識して日本語使用時間を増やし、日本語で考える、日本語を読む・書く時間を増やすことを意識するしかないのではないでしょうか。

Q. 理科や社会などを日本語で学んでいないので、帰国後が心配です。何とか国語の教科書程度はできても、日本で他の教科の勉強にはついていけるでしょうか。

幼児期から心掛けることとして、英語と日本語をつなぐ役割を保護者が担うべきと書きましたが、それを続けてさえいれば、理科や社会なども英語では学んでいるわけですから全く心配する必要はありません。英語で学んでいた内容を日本語でも理解できるようになっていないなら、それを理解できるように、できるだけ今まで学んだことを日本語で振り返る時間を取れば十分でしょう。
とにかく英語で学んだ内容が理解さえできていれば、心配は不要です。だからこそこの時期までに本当に英語で学習している内容を理解していることは重要だと考えます。毎日の学校での学習がきちんと身についているかを確認する作業は保護者の役割として必要だと思います。

Q. 英語も日本語も中途半端になっていくようで親子ともに自己嫌悪に陥っています。子どもたちにどんな言葉をかけていけば良いでしょうか。

英語も日本語も中途半端になることが一番避けたい状況で、この年齢の時に差が広がっていきます。先にも書いていますが、英語と日本語をつなげる支援さえしていれば、中途半端になることはありません。英語も日本語も中途半端になっているのは、毎日学校で使用し過ごしている英語での学びが身についていないためですから、もしこのあとも英語での生活が続くのであれば、この時期こそ、日本語学習の時間を減らしてでも、しっかりと英語を身につけるべきでしょう。そうでなければ、学校でも何も学ばないままになります。

【中学・高校生編】

Q. この時期の国語力維持について、注意すべきことがあれば教えてください。

幼児期より海外で育ち、日本での教育を受けないままこの時期まで日本語力を維持してきたお子さん方は、バイリンガル候補者となり得ます。ここまで維持することができてきたなら、それはご家庭の手厚い支援があったこと、または本人の語学能力が高かったことを意味するものでもあります。ここまでくれば、あとは本人の力です。
継承学校中高生コースでは、IBの準備段階であるMYP及びAレベルに相当する内容の指導を行っているため、継承学校におけるMYPやAレベルの学習に取り組む場合とハイスクール以上の学年で母語としての日本語(シンガポールにおいてはIB母国語レベルが一般的)を学習する場合の2つに分けて注意点を書きたいと思います。
継承学校の中高生コースで取り組んでいるのは、新聞レベルの文章を読み、意見文を書くことです。意見文を書く上で大切にしていることが二つあります。一つ目は現代社会についての意識を高め、様々な課題を知ることです。二つ目は日本の文化と滞在地であるシンガポールの文化の違いを知り、学ぶことです。
一つ目については、中高生にふさわしい内容の文章を読むことが、自分たちが生きる社会についての理解につながると考えます。漢字や熟語など障壁が大きいため諦めてしまう生徒もいますが、少しずつ短いものでよいので読み続けることで力をつけていけます。
二つ目については、外国語としての日本語を学ぶ際にも求められるものですが、「日本を知る」という意味合いがあります。後にIB母語レベル日本語の学習を目指す生徒であれば、IBがアイデンティティーを知ることを大きな目的としたプログラムであることを勘案し、文化の違いを学ぶことが大きな学びになると考えています。英語と日本語間の翻訳をする練習をするのも両言語の力を確認することにもなるため、必要な取り組みでしょう。
次にIB母語レベルの日本語教師でもある立場からコメントすると、英語で学んだ授業の内容を日本語に翻訳することができるレベルの日本語力があれば、思考言語が日本語である必要はありません。つまり、日本語で考えることができなくても、英語で考えた文章を日本語に置き換えることができればそれで十分ですから、あとはとにかく学習言語である英語で受けている授業の内容をしっかりと身に着け、それを日本語で学習する内容に盛り込んでいけるように、日本語・英語を横切って表現できる力をつけることが大切だと言えるでしょう。
つまり、単純に日本語の力、英語の力などという個別のものとして学習をとらえるのではなく、全ての科目か
ら学ぶ姿勢が日本語にも生かせると考えます。ですから、中高生の時期になるまでに英語をしっかりとした学習言語、思考言語にすることが最も重要だと言えます。
一方、同じくIB母国語レベル日本語を選択する生徒たちの中には、中高生になってから海外で生活をするようになった生徒も含まれます。IB科目に日本語があるおかげで、中高生からの海外生活を決断することができる利点もあるわけですが、そういった生徒たちの場合は、日本語の保持よりも英語の習得の方が学習全般に影響するため、緊急に解決すべき課題として日々の生活を送っていることでしょう。日本語学習時間の時間が長すぎると、英語の習得が遅れるという状況にありながら、たとえいわゆる高校レベルの「国語」が得意でなかったとしても、日本語を選択せざるを得ない面もあり、日本語選択が更に英語の習得速度を遅らせるというジレンマに陥ることもあると思われます。
しかし、そういう生徒は、幼いころから海外で育った生徒とは全く逆に、すべての科目を日本語で理解し、それを英語に置き換えるという学び方が頭に残っていく学習方法であると考えます。したがって、日本語で全ての科目を補うべく、自分で日本語の参考書を元に、メイン校で学んでいる内容を日本語でも理解しておく、日本語で書かれた問題集を解く、などといった努力が必要でしょう。

Q. 敬語や熟語など大人の日本語がきちんと使えるようになるには、どのような工夫が必要で
しょうか。

大人が正しい敬語を使い、その使用法を教えることです。周りにいる大人が正しい敬語を使用し、ある程度の年齢になったところで、どのように敬語を使用して話すべきかを伝えることで、正しい敬語を使えるようになると考えます。まずは保護者が正しく敬語を使ってほしいものです。保護者の多くが、正しく敬語を使えていないですから、子ども達が正しく使えるわけがありません。子どもに求める前に、まずは保護者がご自分の敬語使用が正しいのかを確認しながら伝えて行くことが必要だと思います。そして、遅くとも中学生ぐらいの学齢期になった時
には、敬語が使えないのは日本語を使用する社会の中では幼稚であると扱われることも併せて伝え、大人になっていくマナーとして敬語使用が必要であることを指導すべきでしょう。

Q. 高校受験では「記述式」の問題が増え、帰国受験に作文が含まれる学校もありますが、どのような対策をするべきでしょうか。

継承学校の生徒の場合、高校受験で帰国受験する生徒はほとんどいないものと思われます。しかし、前述のような、社会で起こった事象を知り、それに対する意見文を書く練習をしておくことが適切な対策になると思われます。

Q. IBで日本語を取る上で、気をつけるべきことを教えてください。IBDPでバイリンガルディプロマを目指したいと思っていますが、アドバイスがあればお願いします。

まずは、バイリンガルディプロマを目指すと決めた以上、二言語(英語と日本語の場合)とも学習言語として学ぶということを本人が覚悟して取り組むことが最重要でしょう。バイリンガルディプロマ取得を目指すということは、IBDPに加えて、もう一つのディプロマを取得することを意味するので、当然のことながら、二つの言語を母語レベルで学習するだけに、取り組まなければならない課題は、IBDPだけを取得する場合より多くなります。限られた時間の中で多くの課題をこなしていくためには、スピードが必要です。日本語を速読する力をIB以前に身につけておくことは、IBでの成功につながっていくと思われます。したがって、IB準備段階で多読を心掛けるようにしてほしいものです。IB母語レベルの文学(母語レベルには「文学」と「言語と文学」の二種類あります)を選択した場合は、TOK(知の理論)と結び付けて理解すべき課題が多く科目を横切る思考が大切なため、常にすべての科目から学ぶ姿勢を心掛けるとよいでしょう。

Q.その他、日本語の維持・習得において普段のご指導の中で気づいた点や海外で子育てをしている保護者に伝えたいことがあればお願いいたします。

海外で、特にシンガポールで子育てをしていると、メイドさんに子どもを預けたままの方々がいらっしゃいます。そういった保護者を非難するつもりはありませんが、そんな環境の中で日本語も勝手に育つと思うのは大きな間違いであることは理解されるべきだと考えます。メイドさんに預けるのであれば、日本語は育たないかもしれないことを十分理解した上で、その状況を受け入れるべきです。日本語話者が身近にいて、日本語を英語と同程度頻繁に使用することで初めて日本語と英語のバイリンガルが成り立つものであることは、忘れてはならないことです。
とにかく言語習得には時間がかかります。日本に本帰国することが近々にあるのであれば、日本人学校で学ぶ、日本語学習の時間をメイン校(国際校や現地校)に行っている時間より優先する、など、取り組むべきことがあります。
私自身が子育てしてきた中では、いつでもなにか大きな変化が起こり、急に日本に本帰国しなければならないことが起こるかもしれないと、備えの気持ちで娘の日本語が母国語レベルを保持できる様、気を付けてきました。その一方で、英語を学習言語にしなければ、幼児期には米国で身近に日本語学習機関のない中で成長したため、英語を学習言語として強固な基礎を固めていなければ、苦労するのは娘本人であると考え、日々英語の習得の確認を続けてきました。
つまり、英語と日本語の両言語を常に天秤にかけ、どちらかが重すぎないよう、軽くなってしまった方の言語にはテコ入れをしながら、少しずつ両言語の力が高まっていくよう、読み聞かせる本の言語(英語と日本語)にも気を使ってきました。
学校での学習時間が長くなる小学校高学年からは、学習言語として据える英語の重要性が増すのに加え、外国語としての学習言語の中国語の学習時間も増え、内容も高度になってきました。私は娘が中国語の宿題に取り組む中で、日本語と中国語の共通点と相違点を明確にし、中国語学習が日本語学習をも促進できる様心掛けました。
自分で本を読めるようになっても読み聞かせは続けました。英語のインプットは学校で十分あるため、親である私がインプットする言語は日本語と決めたのは、小学校高学年になるごろだったと思います。英語力を確かめるためには、「ママに読み聞かせをしてね」と寝る前には英語の本を音読させました。日本語の音読は、すぐ隣に座っていなくても正誤が理解できるので、食事の準備をしながらや運転している時などに取り組ませることで、特別な時間を取らずに補うようにしました。母親の私が負担を感じずに続けることができたことが、後に社会人として日本語でも金融、法務用語を読めるレベルになるまでの基礎を作り上げたと思っています。
家庭ごとに、どこで何年生活するかは様々です。その年数や場所によって、お子さんの日本語の習得度合いも変わってきます。我が家が米国滞在中には、お子さんの英語習得が進まないと悩みながらも近くに日本人学校がなく、どうにもできず親子で途方に暮れる方々もいらっしゃるのを見てきました。一方、広い米国では場所によっては日本人を探すことさえ難しい地域もあり、日本語はすっかり忘れてしまった、というお子さんもいました。シンガポールは日本にほど近く、小さい国でありながら日本人の数も多く、日本語の本も簡単に手に入るという地域柄、子ども達の日本語保持は他の地域に比べて随分手軽にできるといえます。
それだけに子どもに求められる日本語レベルが高いことも事実です。最終的には日本語を学習し続ける道を選択するかどうかは子ども自身が決めることですが、言語というものがアイデンティティーと切っても切れないものであることを親も十分理解し、たとえ学習言語になり得なかったとしても、親から子へと継承していってほしいと切に願うものです。
また、IBDP科目として科目を選択する際、「◯点を取れないなら、日本語を選択しない方がよい」という考えは、シンガポールでは学校によってはそのように指導しているものの、他の地域のIBスクールの状況を見てきた立場から言うと、合格点(7点満点中4点が合格点)を目指せると本人が思うのであれば、あきらめずに取り組むことで得るものもあるのではないかと思っています。実際、米国の国連高等学校ではIB日本語を選択する生徒のほとんどにとって「努力して学習する科目」であり、「点数が取れるから選択する科目」ではありませんでした。
それでも選択しているのは、自分のルーツを見つめるというIB理念に則り、日本語を学習する中で見出すものが重要だと考えているからです。IBDPにはテストが課され、大学もその点数を重視しますが、全人格を形成するプログラムとして、ボランティア活動や運動、音楽活動も同様に重視されて点数となり、更には卒業論文で自分の得意とする科目を表現するわけですから、単純に日本語の点数だけを考えて選択するしないを決めるものではないと考えます。

【ご協力いただいた教育機関】(種類別アルファベット順)
<幼稚園・プレスクール>
アーツハウス インターナショナル幼稚園石栗 好恵 先生アーツキッズ ひまわり幼稚園吉弘 美輝 先生アーツキッズ インターナショナル幼稚園みき 先生このはな幼稚園毛利 安孝 先生<幼児教室>
Happy Train川守田 宏美 先生こどもクラブ山出 亜弓 先生<日本語教育機関>
日本語文化継承学校・IB教師磯崎 みどり 先生シンガポール日本語補習授業校山村 薫 先生<学習塾>
KOMABA石川 晋太郎 先生、川口 美波 先生MES佐藤 剛 先生オービットアカデミックセンター満仲 孝則 先生WAOシンガポール川中 大和 先生早稲田アカデミー インター校五十嵐 敢 先生<インターナショナルスクール>
ISSインターナショナルスクール津村 美穂 先生

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