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この人からエール

大妻中野中学校・高等学校 校長 宮澤 雅子氏

2016.04.25

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~「教育」の可能性は無限~

はじめに

私は、教育の現場に立ち40年近くになります。その長年の経験から持ち続けている確固たる信念があります。それは、人間が持っている力は無限で、想像をはるかに超えるほどの可能性を秘めており、それを最大限引き出すお手伝いをするのが教師の使命だということです。

自然災害や民族紛争など、今現在も地球規模で解決すべき課題が次々に起きています。 この日々刻々と変化する問題を解決し、より良い世界に変えていくことができる唯一の方法は、「教育」です。「教育」をもってこそ、全人類が理解し合え、恒久の平和が実現できるのではないかと思います。「知識注入型」教育が中心の日本は先進国に遅れをとっていると評されており、また、不十分な英語スピーキング力でも、世界におけるコミュニケーションで遅れをとってしまうことは明らかです。まずは自分の学校から変えていき、社会のさまざまな局面で柔軟に対応できる人材を送り出すことが出来れば、それこそが真の社会貢献になると信じています。

大妻中野中学校・高等学校 校長 宮澤 雅子氏

大妻中野中学校・高等学校 校長 宮澤 雅子氏

「やる気スイッチ」を入れるには

親御さんは皆、お子さんには社会で活躍できる人になってほしい、と願っていることでしょう。ところが、現実は思うようにいかないことの方が多いと思います。でも、「もっとお子さんを信じてください」とお伝えしたいです。なぜなら、子どもは皆、必ず秀でた何かを持っているからです。しかし、その才能を遺憾なく発揮できる子とそうでない子がいるのは確かです。では、その違いはどこから来るのでしょうか。その違いは極めて明解で、「やる気スイッチ」を入れることが出来たか否かです。そのためのポイントとなるのは、以下の4つだと考えています。

一つ目は、目標を「高め」に設定することです。実際には近くまでは届くけれど目標には届かない。ならば、はじめから目標設定を引き上げようではありませんか。

私は、校長職とともに、本校の合唱部を創部から40年近く育てています。これまで数々の全国大会に出場し、TBS全国音楽コンクールで2年連続の優勝も経験しました。そこまで、100人以上の部員の指揮をとり、全国大会常連校の座を保ち続けるのは決して簡単なことではありませんでした。今日までいかに生徒のやる気を引き出すかを日々模索し続けています。

いつも生徒に言っていること、それは「人生は一度きり、だからこそ自分が持っている良いものを最高まで伸ばそう!」です。掲げる目標はもちろん「絶対に日本一になる」。こうして生徒たちの士気を一気に高め、やる気スイッチを「オン」にします。この作戦で毎回成功できるわけではありませんが、結果のみでなく、大きな目標を掲げそこまで行こうとするその過程にこそ意味がある、と考えています。

二つ目は「成功したイメージを与える」ことです。具体的なイメージなくしてやる気を持続させることは非常に難しいと感じます。合唱部の指導では、卓越した同年代の演奏をいくつも実際に聴かせるようにしています。すると、生徒たちは「何でこんなに美しく心に響く歌声になるのだろう」と奮い立つ気持ちになり、模範となるイメージに到達したいと強く願うことで、やる気をさらに強化することができます。具体的なイメージを持たなければ、過酷な練習に励もうとはしないでしょう。

三つ目は「自己肯定感を持たせる」ことです。「あなたは、なくてはならない大切な存在だ」という思いを、ことあるごとに意識的に伝え、その子自身に自分の存在意義をしっかり芽生えさせるのです。自己肯定感は安心できる、心の居場所につながります。どんな人間も完璧ではありませんが、必ず良いところがあるはずです。そこを見出し認めてあげれば、それがきっかけとなってすべてのことに自信が持てるようになり生き生きとして、更なる高みに向かって挑戦できるのです。特に多感な中学生の時期に自己肯定観をしっかり確立できれば、その後の精神的な成長にも良い影響をもたらすと言われています。

四つ目は、「あえて壁を作る」ことです。何ごとも向上していく過程では、幾多の壁を乗り越えなくてはなりません。「火事場の馬鹿力」とか「断崖絶壁」という言葉がありますが、人間は岐路に立たされたときに、その人が持つ限界に近い力が発揮できるものです。あえて目の前に乗り越えるべき高い壁を作ってあげることが、その子を更に伸ばす秘訣だと考えます。

例えば、大切なコンクールの前は、皆必死で練習に取り組んでいます。「よく頑張ったね」とねぎらう言葉をかけてあげたい気持ちを抑え、あえて厳しい言葉を伝えます。培った力を直前にもう一ランク引き上げるには、そのタイミングでねぎらってしまうと、緊張感がゆるんでしまいます。こうするには、日頃から培った互いの信頼感がないと難しいですが、心を鬼にして子どもたちのために更に目の前に高い「壁」を作ります。そうすることで、本番で実力以上の力が発揮され、結果的に大きな達成感を得ることが出来るのです。

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