駿台・海外担当
長嶋 秀保先生
これまで帰国生(高校生)の進路相談や面接指導などを20年近く担当してきた中で、「大学で何を勉強したいかわからない」「何も得意なものがない」という悩みをよく聞きます。生徒本人からだけでなく、保護者からも「うちの子は何も特技や関心事がないのです」などと相談されます。帰国生入試やAO入試で受験をする場合、自分の考えや志望動機を面接や志望理由書で問われますが、いざ入試直前に準備しようとすると途方にくれてしまうケースが多いようです。そんな相談を聞いて私が感じるのは、多くのお子さんたちが「自分らしさ」や「自分の魅力」に気づいていないということです。
帰国生関連の入試で求められているのは、一斉に測れる学力測定だけではありません。「海外生活の中で君はどう育ち、何をつかんだのか」、「その学びが、この大学での勉強にどのようにつながるのか」、更には「社会に出た時に、どう活かせるのか」という、過去と現在、そして未来に描く自分の姿との関係を明確に伝えられることです。
せっかく「海外生活」という特別な経験をしているにもかかわらず、それが当たり前の生活となってしまうことは、皆さんに共通することです。そんな毎日の中でおすすめしたいのは、自分が物ごとを見る時の「視点」や「切り口」に注目することです。同じ場所で同じものを見ても、人によって感じることはさまざまです。
例えばシンガポールで有名なCHIJMES※という場所を訪ねても、生徒によってその見方はさまざまです。「文化遺産の保存」という歴史、建築、あるいは都市計画などの観点で興味を持つ子もいれば、「かつて孤児院だった場所」として社会福祉という切り口で捉える子、「日系の飲食店が立ち並ぶ場所」としてビジネスの観点で見えている子もいるでしょう。自分ならではの見方、感じ方に気づくことで、自分の関心が何に向いているのかを考えるきっかけになります。
何気ない街歩きの中にも、そういった「自分らしさ」に気づくネタは沢山あります。まずはご家族や友だちと話す中で、「この人はこんな見方をするのだ」「自分はこういう方向で見ていたのだ」と意識して、自分の興味の方向を探ってみてはいかがでしょうか。
※CHIJMES(チャイムス)…1800年代にフランス人宣教師や修道女によって作られた歴史的建造物で、修道院、孤児院、女学校を併設した。その後文化遺産として大規模保存改築工事を経て、現在は多くの飲食店がある観光スポットとしても人気。
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