特別企画
帰国受験の今 ~2018年の中学・高校・大学受験を振り返る~
海外在住のご家族にとって、「帰国後の学校選び」「帰国受験の傾向」は最大の関心事の一つと言っても過言ではありません。日本の教育現場ではどのような学びが重視され、受験はどのように変化しているのでしょうか。
今回は大学受験や中学・高校の編入試験にも注目し、帰国受験を熟知する、日本・シンガポールの学習塾10塾にSpringが取材しました。
【Springウェブサイト限定!】
次ページ以降では取材にご協力いただいた日本とシンガポールの学習塾からの詳細回答をお届けします。
日本・シンガポールの学習塾に聞きました。
取材協力(敬称略、アルファベット順)
※は日本が拠点。
enaシンガポール/河合塾※/KOMABA/馬渕教室※/ORBIT ACADEMIC CENTRE/駿台国際教育センター※/駿台シンガポール校/WAOシンガポール/早稲田アカデミー国際部※/早稲田アカデミーシンガポール
Q1 帰国受験で、最も気になった最近の変化は?
【中学受験】
●中学受験での「英語入試」の拡大
●帰国入試だけでなく、一般入試でも「英語力重視」へ
●英検を始めとする検定試験の資格を加点※する学校が増加
※英検2級の場合には、入試の得点に20点追加するなどの措置。
●英語試験の難易度が上がり、英語力が高い生徒にとっては有利 ●面接や作文を通した「思考力」「判断力」「表現力」重視へ |


資料提供:首都圏模試センター

資料提供:馬渕教室
【中学受験】 【編入試験(中・高)】 【大学受験】 |
Q2 帰国までに取得すべきおすすめの資格試験は?
☆受験学年により英語資格の種類は異なる
●大学受験では、TOEFLのスコアを要求する大学がほとんど。 ●良いスコアが出せるよう、一度ではなく複数回の受験を。 |
Q3 帰国受験や編入を目指す際のアドバイスは?
◆「編入」の心得とは
【中学受験】
【高校受験】
●準備期間に余裕を持って取り組もう
●早めに情報収集することがおすすめ
●編入はタイミングが大切。定期的に募集している学校と、欠員が出ると募集する学校の2種類がある。気になる学校があれば直接問い合わせるなど、こまめに情報収集を。 ●帰国直前になっての相談が増加。急な帰国に備えるためにも、早めの対策を。 |
◆受験と親子の関わりについて
☆反抗期を迎えたお子さんに「勉強しなさい」と言う直接的な声がけは、かえってマイナスになってしまうことも。
◆受験準備のコツ
☆偏差値よりも大切なこと
【中学受験】 【高校受験】 ●一言で「海外生」と言っても、千差万別。「他の人がやっているから自分もやる」といった、国内でありがちな発想を捨てよう。 ●偏差値だけでなく踏み込んだ学校情報を収集しながら、お子さまの個性に合わせた学校選びを。 ●小学生の内は点数ばかりを気にしているとストレスが溜まりやすい。上手にリラックスできるよう対策を。 |
【大学受験】 ●小論文を課される入試が多いが、文章作成能力や論理力はすぐには上がらないので、受験期を迎える前からの継続的な日本語学習を。 ●小論文の書き方の基本も大事だが、それ以前に書くための「知識」が必要。日本の新聞(例:朝日、読売、日経など)に毎日目を通すこと、そして教養書(岩波新書や岩波ジュニア文庫など)を読むことが欠かせない。 ●インター校で学ぶ理数系分野は日本の高校に比べて学習範囲が狭いため、現地で学ばない分野については、自学の必要がある。 ●学内推薦・指定校推薦は、日々の学習の積み重ねが必須だと意識して対策を。 |
◆海外生に求められること<大学受験>
☆海外生であることに誇りを持って!
<中学受験>
<高校受験>
<編入試験(中・高)>
●海外での体験を自分の言葉で語れること。
—> そのまま面接・作文/小論文 対策につながる。
<大学受験>
●課外活動やボランティアが活発な海外での環境を生かした活動をする。
—> 大学のAO入試の受験資格として求められる。受験の選択肢が広がる場合も。
◆学校選び
☆入学後の自分を想像してみよう
【中学受験】
【高校受験】
【編入試験(中・高)】
◎「取り出し授業・サポートがあるか否か」を判断基準に学校選びをすることがおすすめ。
●海外で身につけた英語力の伸長を望む場合 英語の取り出し
●インター校や現地校出身のため今まで日本語で理社を学んでいない 理社のサポート
●インター校や現地校と似た環境を希望する場合 国際学級のように完全に帰国生だけのクラス編成
●日本人学校出身や、取り出し授業にこだわらない場合 一般クラス
◎帰国生入試があるから受けてみるのではなく、まずはご家庭で「どのような教育を受けさせたいのか」を話し合うことも大切。
【大学受験】
●医学部や国立大学をめざす
—> 理系を日本語で学ぶため、「取り出しなし」を選択。
●海外大学進学の可能性もある
—> インターナショナルコースがある学校や国際バカロレア(IB)コースを選択。
●進路が決まっていない
—> 国公立・私立・海外など「出口の広い学校」を選択。
シンガポールの帰国受験事情
シンガポールで暮らす受験生の皆さんの受験事情について、伺いました。
~シンガポールにある6塾に聞きました~
Q 受験者が多い受験形式は?
Q 何校受験しましたか?
enaシンガポール
帰国枠受験の資格が緩くなり、新たに帰国入試を始める学校も増えたため、帰国生一人あたりが受験できる数が増えた印象です。高校受験については、都内の場合、中学に籍を残して海外に出ている人も増えているようで、受験者自体は減っている印象です。難関校と言われる学校でも努力をすれば届きます。高い目標を持って頑張ってください。
河合塾
TOEFLを採用する大学が圧倒的に多く、英語試験が「受験英語→外部試験スコア(主にTOEFL)」にシフトしています。IELTSは、英検やTOEICよりは出願条件として認められていますが、TOEFLほどではありません。
帰国生が受ける入試は「帰国生入試」です。誰もが経験できるわけではない「海外生活」を経験しているからこその入試ですから、小論文や面接でPRすることに最も努力をしていただきたいと思います。
KOMABA
とにかく、学校見学や情報収集は早めがおすすめです。急な本帰国で一番混乱してしまうのは子どもたちです。「海外滞在が続く場合」と「帰国する場合」の両方の進路を考え、専門家に早めに相談しましょう。数年前とは異なった取り組みをしている私立校がありますので、偏差値だけでなく、踏み込んだ学校情報を集めることで、お子さまの個性に合わせた学校選びが可能になるでしょう。
馬渕教室
公立中高一貫校の台頭や2020年の大学入試改革を見据えて、関西圏でも「適正検査型入試」「思考力型入試」を実施する学校が増えています。
高校入試は、関西圏では一般入試を経由して受験する帰国生が多いので、5教科の学力をバランス良く伸ばしておく必要があるでしょう。志望校選びは大学受験を見据えて行うべきです。海外大学を希望するのでしたら、そのような実績を持っているかがポイントになるでしょう。
ORBIT ACADEMIC CENTRE
英語の難易度が年々上がることで、英語が得意な生徒に有利な状況になりつつあります。海外の環境は、多文化・多様性のある社会ですから、日本の中高一貫校以上に貴重な環境だと認識してください。豊かな海外体験を語れることは、そのまま面接・作文対策にもつながります。
多様な入試方式の導入や、教育制度における評価の観点の変化により、従来の偏差値を基準とした学校の序列が崩壊しつつあります。
駿台国際教育センター
中学・高校受験ともに、英語試験の難化が進むと思います。インター校や現地校の生徒は、早い段階から英検やTOEFLなどを取得し、受験英語に慣れておきましょう。高校入試でもスピーキングやライティング形式の出題が増える傾向で、4技能が重視されていると言えます。大学でも英語の重要性はもちろんですが、小論文が非常に大切です。母国語の表現力を身につけるだけでなく、書くための知識が必要です。知識の構築には日本の新聞に目を通し、教養書を読みましょう。
駿台シンガポール校
中学受験では「帰国生入試があるから受けてみる」というスタンスではなく、まずは「お子さまにどのような教育を受けさせたいか」を、ご家庭で何度も話し合うことが必要です。次に、高校受験では、中学1・2年生できちんとした学習習慣を身につけられるかどうかが鍵と言えます。大学受験については、高校の学習進度が早いことを念頭に、日々の学習の積み重ねこそが、将来への進学につながるという意識を持ちましょう。
WAOシンガポール
海外生の場合には個々の学習歴が異なるため、一般的な受験準備が当てはまらないことが多いと思います。そこで、学校の情報収集は早めにしながら、「偏差値」については過度に意識せず、「過去問演習」などで受験校の傾向をつかむことに集中しましょう。精神面のサポートも必要です。中学受験の小学6年生は特に初めての受験でストレスをためやすいので、上手にリラックスする必要があります。また、高校受験では、受験科目数が帰国地・志望校で3教科・5教科、帰国入試、一般入試で異なります。周りに流されずに受験準備を進めることが大切です。
早稲田アカデミー国際部
英語試験のある帰国枠最難関の中学受験では、合格ラインの「グレーゾーン化」が著しい傾向にあります。英検1級を取得していても不合格のことがあれば、準1級でも受かるケースがあります。これまでの学力ではなく、新しい基準の学力、すなわち面接や作文で判断する「思考力・判断力・表現力」が重視されつつあるようです。面接については、海外経験がキーワードですので、現地での体験を大切にしましょう。
早稲田アカデミーシンガポール
帰国枠だから何とかなるなどとは考えずに、小学3年生から学習の習慣付けを始めることが、突然の帰国や編入にも対応できる準備になります。受験や学校の情報はあふれていますが、教育の根源は「一対一の対話」です。お子さまとの対話はぜひ丁寧に。編入試験は保護者同伴の面接があるなど、保護者の役割も大きいと言えます。早期に情報収集をすることが肝要です。高校の志望校選択には本人の意思を相談し、保護者の方は相談に乗るスタンスでいましょう。
Spring編集部より
今回の独自取材では、2020年大学入試制度改革が帰国受験全般に色濃く影響を与えていることがわかりました。英語入試実施校の増加、帰国枠条件の緩和など、海外生がその強みを生かせる機会が多様な形で増えているように感じます。今後の日本の教育の動向に引き続き注目していきたいと思います。
Springウェブサイト限定!
次ページ以降では、今回のアンケート調査結果を更に詳細にご紹介しています。
●受験時期はいつ?
●各塾からの回答の詳細 など
【取材先(※各学習塾名をクリックすると該当の塾の回答ページに移動します)】 enaシンガポール河合塾KOMABA馬渕教室ORBIT ACADEMIC CENTRE駿台国際教育センター 駿台シンガポールWAOシンガポール早稲田アカデミー国際部早稲田アカデミーシンガポール |
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