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21世紀のICT教育

21世紀のICT教育 第5回

2014.06.25

  • ICT教育
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日本の教育現場におけるICT  わが国におけるICT教育   ~学習効果の向上を目指して~

文部科学省 生涯学習政策局 情報教育課長 豊嶋 基暢 氏

◆「 学びのイノベーション事業」概容とICT教育の効果

情報通信技術(ICT)の進歩や急速なグローバル化に伴い、わが国でも子供たちの学びの場に変革が求められています。欧米やアジア諸国でもICTを活用した革新的な授業が進んでおり、日本でもそれらを活用することで単に答えを覚える作業だけではなく、自分の意見を自分で探し判断していく「課題解決型の教育」をすることが重要になっています。
文部科学省では2011 ~ 13年度の3年間に、総務省と連携して「学びのイノベーション事業」を実施してきました。この事業では、全国から公募で選ばれた小学校10校、中学校8校、特別支援校2校が実証校となりました。児童生徒が1人1台の情報端末を使用し、すべての普通教室に電子黒板や無線LAN等を整備した環境の下でICTを活用した教育の効果・影響の検証、効果的な指導方法の開発、モデルコンテンツの開発等の実証研究を行いました。
3年間実施して分かったことは、ICTを取り入れることによって明らかに「子供の興味関心が持続する」ということです。一般に日本の学力は高いと言われますが、国際的に見ると学習への関心は低い傾向にあります。そのため、どのような授業を行えば子供の関心、理解力、表現力が向上するのかを研究しており、ICT等の活用による「新たな学び」が当事業で実証された効果は大きいと言えるでしょう。 国の目標としては2020年度までに児童生徒一人一台の教育用コンピュータによる教育の本格展開に向けた方策を整理することにしており、その中間目標として2017年度までに3.6人に1台使用できる環境を整備することを目指しています。

◆ 協働学習を強化するICT

ICTを組み込んだ点です。他地域・海外の学校との交流学習に加えて、教室内で各児童生徒が使用するタブレット端末を電子黒板につなぐというネットワーク機能を加味しました。各自の考えを電子黒板に転送し、多様な考えを一瞬で共有できることが特徴です。

◆ 従来の教科書とデジタル教材の併用

については、単に紙媒体の教科書をそのままデジタル化するだけではありません。ネットワークで繋がる利点を活かし、学習履歴の把握・共有など紙の教科書では得られない付加価値をつけようとしています。具体的には以下のような機能が備えられます。

ICTを活用することで、何となく理解できたような感覚に陥ることもあるため、観察や実験など体験的な活動も組み合わせて学習内容の定着を図る必要があります。多彩な機能を持つデジタル教科書は紙の教科書での理解を更に高める補助的な役割がありますが、あくまでも紙の教科書との併用が求められます。児童生徒は机上に紙の教科書、デジタル教科書(タブレット)、紙のノートの3つを置き授業を
受けるのが理想と考えています。

◆根幹となる「教育」とは

創造するか」にかかっています。「教育」はいつの時代も変わらず人間が人間に教える行為であり、ICTそのものが学習意欲を高めたり、学力を上げるわけではありません。根幹となるのは、児童生徒が確かな学力と21世紀を生き抜く力をしっかりと身に付けるために、興味を持続させるための教育法を確立することだと考えます。

つくば市における学校ICT教育推進プログラム

日本の教育現場でも、ICTの導入が積極的に行われています。
30年以上前に日本で初めてICTを取り入れた、つくば市の現在の取り組みを取材しました。

つくば市教育委員会教育長  柿沼 宜夫 氏

つくば市のコンピュータ教育は、全国に先駆けて昭和52年から進めてきました。現在つくば市のICT教育が日本でも突出した存在になり、その成果・実績が認められていることは、つくば市学校教育の誇りです。今後も全世界に冠たるICT教育先進都市を目指しながら子どもたちの学習環境の一層の整備を進め、ICTを生かした学力向上への取り組みを推進していきたいと考えています。

■ICT教育推進のために(導入事例)

● プレゼンテーションコンテストの実施
毎年市内全小中学校が参加して、テレビ会議システムを使ったプレゼンテーションコンテストを実施しています。このコンテストは、教育日本一を目指すつくば市が全国で先駆けて導入した小中学校を結ぶテレビ会議システムと電子黒板を使って、各学校の児童生徒が特色ある教育活動をプレゼンテーションするもので、情報収集力・思考力・表現力を競います。児童生徒の成果をたたえ、モチベーションにつなげています。

● スタディノートを使った創造的な学習
スタディノートとは、タブレットPCにあるソフトのことです。授業で学んだことを字・写真・動画などを使ったスライドにして記録・保存していきます。記録は電子掲示板にアップロードすることにより、市内52校の小中学生全員で情報を共有することができます。

● 充実した研修
教育現場で生徒児童に指導する教員のICT機器活用のスキルアップと、授業改善のための研修を行います。

● ICT指導員の派遣
市の教育指導課に、ICT指導員(総合教育研究所に常勤)を配置し、ICT機器操作や設置、校内研修などICT教育全般に対応しています。

つくば市の4C(協働力、言語力、思考・判断力、知識・理解力)学習

つくば市のICT教育では、ICTの「C」である Communication だけではなく、更に幅広い教育活動に利用するため「4C学習」を提唱しています。4Cとは「言語力(Communication)」に加え、「協働力(Community)」「思考・判断力(Cognition)」「知識・理解力(Comprehension)」を意味しており、未来の子どもたちに必要な「人間力」を育成する学校づくりに不可欠と考えています。

◇協働力(Community)を養う
● デジタルカメラを用いた取材、スタディノートによる学習のまとめ、電子掲示板による学校間協働学習。
● テレビ会議による博物館研究所との連携,職場体験,町探検,動植物調査,環境調査等。

◇ 言語力(Communication)を養う
● スタディノートで自分の考えをわかりやすくまとめる。
● 電子黒板を使って自分の考えをわかりやすく伝える。
● テレビ会議システムを使って他校や博物館、研究所と連携しプレゼンする。

◇ 思考・判断力(Cognition)を養う
● 小学校国語・社会、中学校英語デジタル教科書等をプロジェクターで投影し理解を深める。
● スタディノートを公開することで他の生徒の意見を聞き、思考を深める。

◇ 知識・理解力(Comprehension)
● 学校と家庭の双方からアクセスできるインターネット上の「つくばオンラインスタディ」では、小1 ~中3まで約1万題のeラーニング教材が利用可能。日頃の学習のまとめ、長期休暇や臨時休校での利用など、基礎・基本の習得に活用する。

~授業の様子を取材させていただきました~

                                             つくば市立吾妻小学校の授業の様子

6年生理科:風力による発電実験の様子。グループで実験に取り組み、スタディノートにまとめていく。記録はオンラインで掲示できるため、学校の枠を超えた市内の小中学生全員で学びを共有することができる。また、数人の記録を一つにまとめてレポートを作成する、先生に送信し指導してもらう、授業で電子黒板に映しクラス全体で閲覧する、といったことが可能。

Spring編集部より

実生活ではインターネットや端末の活用はもはや必要不可欠であり、その環境を小学校から自然な形で取り込む意義は大きいと感じました。ICT 機器を学習に取り入れることで、授業や家庭学習がより面白いと感じられるようになっており、今後はICT教育による双方向の学習が全国規模で更に充実していくと思います。同時に、革新的なツールが活用される今日でも「教育とはいつの時代も変わらず人間が人間に教える行為である」というお言葉が心に響きました。

 

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