近年、日本では男女別学から共学化する学校が増加傾向にあります。その一方で、特徴ある男子校・女子校は依然として人気が高く、親子三代で同じ学校に通われているというご家庭もあるそうです。海外の日本人学校やインターナショナルスクールは共学校が多いですが、「男女別学か共学か」という点は、帰国後の学校選びでも重要なポイントの一つになっているのではないでしょうか。
今回Springでは、読者の皆さまのご要望にお応えして、男子校・女子校の取り組みに注目し、男女別学ならではの魅力に迫りました。
※誌面と同じ一覧がPDFでご覧いただけます。
共学化が進む日本
日本では2000年頃から全国的に共学化が進んでいるようです。この背景には少子化に伴う受験生の減少や1999年に施行された男女共同参画社会基本法があるとされています。2018年度の全国高等学校数は約4,900校であり、そのうち女子校は299校(約6.1%)、男子校は107校(約2.2%)と男女別学が全体に対して占める割合は高くありません。
◆ 男子校・女子校・共学校の割合の変化
文部科学省「学校基本調査」より
海外では男女別学に注目
海外では英国を始めさまざまな国で、「男女別学」と「共学」を比較し、成績や素行、人格形成面にどのような違いが生まれるか、という調査が行われています。その結果から男女別学のさまざまな効果が認められ、注目されたそうです。
共学よりも男女別学教育を受けた生徒の方が学力は高い (2000年/オーストラリア/教育研究機関ACER、2002年/英国/国立教育調査財団) |
男女の学力差を埋めつつ、それぞれの能力を伸ばすには男女別学の教育が最適である (2005年/英国/ケンブリッジ大学) |
男女別学では性別の固定観念を打ち破りやすいが、共学はそれを強化しやすい (2003年/米国/バージニア大学) |
同性のみという環境は、他の性を意識しにくいため男女のジェンダー・ステレオタイプに捉われにくく、教育的に良い効果があると考えられています。
このような機運の中、米国では2006年法改正が行われ、公立学校の男女別学が認められました。男女別学のクラス編成は2002年の10数校から2012年には390校と大幅に増加しています。
<男子校><女子校><共学校>
それぞれの良さとは?
男子校の良さ
● 一般的に精神的な成長の早い女子生徒に臆することなく、男子だけでリーダーシップや組織運営力を養える
(開成学園中学校・高等学校)
● 「力仕事は男子」「食やお金に関することは女子」といった性別役割分担のバイアスがなく、どんな役割でも自分たちで成し遂げようという意識を持つ
(灘中学校・高等学校)
● 男の子は「やる気スイッチ」が入ると、決めたことに向かう力がとても強い。異性の目を気にせず自分たちのペースで成長できている
(聖学院中学校高等学校)
女子校の良さ
● 男子に頼むという発想がなく何ごとも自分たちで動くため、常に自分の能力を発見するチャンスがある
(桐朋女子中学校・高等学校)
● 女子だけですべてのことを成し遂げて行く中で、協調性や創意工夫する力が育まれる
(聖園女学院中学校・高等学校)
● 「軽やかなフットワーク」と「圧巻の実行力」がある
(大妻中野中学校・高等学校)
● 性差を意識することなく「ありのまま」でいられるため、常にのびのびしている
(富士見丘中学高等学校)
共学校の良さ
● 学校生活の中で自然に異性と接し、友だちになることができる
(茗溪学園中学校高等学校)
● 社会と同じ男女混在の状況で異性同士協力する経験ができる
(桐光学園中学校・高等学校)
体験談
灘中学校・灘高等学校 卒業生 Iさん
女子の目を気にする必要がなかったのは、気楽で良かったと思います。一風変わった同級生が多かったのですが、各自がのびのびと個性を発揮できる校風の中で、互いに刺激を与え合える仲間や先輩に出会えたことに感謝しています。授業では注意散漫な男子でもつい引き込まれるような話題を取り上げるなど、今思えば男子校ならではの教え方をふんだんに取り入れて工夫されていたように思います。
体験談
女子校(小学校~大学まで) 卒業生 Mさん
女子校には家族的なコミュニティがあり、家族や親戚も含めた良い人間関係を構築することができました。学生時代は良妻賢母や男女の性差について意識することなく、のびのびと過ごすことができたと感じます。また、女子校では語学教育に力を入れていることが多く、先生方も大変熱心で、自分の語学力を伸ばすにはとても良い環境でした。
編集部より
中学高校は子どもから大人へ、心身ともに成長の著しい時期です。各校は男女それぞれの特性を深く理解し、将来を見据えさまざまな取り組みを行っていることがわかりました。「男女別学か共学か」を検討することは、お子さまの性格や「どんな人に成長してほしいか」、「どんな学生生活を送ってほしいか」というご家庭の方針を改めて見つめ直すきっかけになると思います。帰国後の進学先をご検討される際に、ぜひそのような観点からもご家族で話し合ってはいかがでしょうか。
<男子校><女子校>
学校紹介
<男子校>海城中学高等学校https://www.kaijo.ed.jp/東京都新宿区大久保 3-6-1
全校生徒に対する海外生の比率 | 約9.7% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
特別講座では男子校ならではの視点で議論を展開
2017年度から課外特別講座が開講し、生徒の「とがった」興味関心を深掘りする学びの場となっています。その一つ「SDGsゼミ」では持続可能な開発目標(SDGs)について議論・研究しています。国連大学のシンポジウムでは本校生徒が男子校ならではの視点で「ジェンダー平等の提言」を発表しました。多様性の時代を生きていくために、広い視野と深い見識を身につけるための活動を行っています。
※海城中学高等学校の詳細はこちらhttps://spring-js.com/japan/939/
<男子校>開成学園中学校・高等学校https://kaiseigakuen.jp/東京都荒川区西日暮里 4-2-4
全校生徒に対する海外生の比率 | 中学 | 約1.9% | 高校 | 約5.2% |
英語習熟度別クラスの有無 | 無 |
男子だけでリーダーシップや組織運営力を養う
本校は帰国生入試を行っておらず、海外で生活していたということも多様性の1つと受け止める土壌があります。学校行事や部活動は生徒主体で行っており、自分の性格や得意に応じた役割をそれぞれが担い、不得手な面をも認め合い、開成生活を過ごしています。同期生、先輩、後輩の縦横の密接な関係から、ロールモデルが見つけやすく、自分の近未来を考えやすい環境です。
<男子校>逗子開成中学校・高等学校http://www.zushi-kaisei.ac.jp/神奈川県逗子市新宿 2-5-1
全校生徒に対する海外生の比率 | 中学 | 約7.1% | 高校 | 約7.4% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
ヨット製作・ヨット帆走、海洋人間学を学ぶ
目の前に広がる海や自然を生かした海洋教育を行っています。ヨットの帆走や製作、遠泳実習では常に変化する自然を相手に臨機応変に対応する力や困難に立ち向かう勇気、仲間と成し遂げる協調生を実践から学びます。この知的好奇心の刺激が、将来の目標づくりにも役立っています。また、解放的な雰囲気の本校には、異性の目を気にせずのびのび成長でき、同じ志向を持つ友に出会える、という良さがあります。
※逗子開成中学校・高等学校の詳細はこちらhttps://spring-js.com/japan/12419/
<男子校>聖学院中学校高等学校https://www.seig-boys.org/東京都北区中里 3-12-1
全校生徒に対する海外生の比率 | 約5% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
率直な意見を出し合い議論ができる環境
本校の宿泊行事は、年齢を鑑みた取り組みでグループワークやプレゼンテーションの機会も多く、常に課題や解決策を模索しています。男子校だからこそ自分の率直な意見を述べやすく、他者に耳を傾け、より良い解決策や考えを導き出す力が身についています。高学年になるにつれてそれぞれの個性を認めることができるようになり、一人ひとりの賜物にも気づけるようになっていきます。
※聖学院中学校高等学校の詳細はこちらhttps://spring-js.com/japan/952/
<男子校>東京都市大学付属中学校・高等学校http://www.tcu-jsh.ed.jp/東京都世田谷区成城 1-13-1
全校生徒に対する海外生の比率 | 約13 % |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
主体的に考え表現する学習
中学では週1回、3年間で約60テーマにおよぶ「科学実験」を行い、その都度レポートを提出します。高校1年時の「中期修了論文」では、1年間に渡る指導を経て論文を執筆し、プレゼンテーションを行います。論理的思考力と表現力を磨くための取り組みは、新大学入試制度にもしっかり対応したカリキュラムです。生徒たちは男子同士、積極的に意見を出し合い主体的に学んでいきます。
※東京都市大学付属中学校・高等学校の詳細はこちらhttps://spring-js.com/japan/7508/
<男子校>灘中学校・高等学校http://www.nada.ac.jp/神戸市東灘区魚崎北町 8-5-1
全校生徒に対する海外生の比率 | 約2~3% |
英語習熟度別クラスの有無 | 無 |
どんな役割でも担う ジェンダー・バイアスがない環境
本校には校則も制服もなく、生徒の自主性・主体性を涵養する校風の中で、多くの学校行事が生徒主導で行われています。中でも文化祭は、連日1万人を超える来場者がある一大イベントで、企画立案から進行に至るまでほぼ全ての仕事が生徒主導でなされます。男子校ゆえに誰もがどんな役割も分担しなければならず、ジェンダー・バイアス解消という視点で大きなメリットがあると感じています。
<女子校>育英西中学校・高等学校https://www.ikuei.ed.jp/ikunishi/奈良県奈良市三松 4-637-1
全校生徒に対する海外生の比率 | 1%以下 |
英語習熟度別クラスの有無 | 無 |
立命館大学と連携し自立した女性を育成
国際バカロレア教育の中学生向けプログラム(MYP)の候補校として、さまざまな取り組みを行っています。立命館大学との連携により大学進学を保証した上で、受験勉強にとらわれない独自の教育を実践しています。本校での活動を通して、日本や世界の現状を知り、実際に「誰かに貢献する」という経験を重ねることで、将来社会で活躍できる「自立女子」を育成することを目指しています。
<女子校>大妻中野中学校・高等学校http://www.otsumanakano.ac.jp/東京都中野区上高田 2-3-7
全校生徒に対する海外生の比率 | 11%以上 |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
帰国生が輝ける環境
「海外生活」という宝物を最大限輝かせるために、本校には帰国生が輝く環境とプログラムが豊富に用意されています。道徳の授業で全員が学ぶ「茶道」「華道」「礼法」は、日本人としてのアイデンティティーを発見し、多様性の重要性を意識する大切なプログラムです。女子校だからこその「フットワークの良さ」と「圧巻の実行力」で毎年約40名以上の生徒が海外留学へ旅立っています。
※大妻中野中学校・高等学校の詳細はこちらhttps://spring-js.com/japan/3619/
<女子校>昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校https://jhs.swu.ac.jp/東京都世田谷区太子堂 1-7-57
全校生徒に対する海外生の比率 | 中学 | 約7.1% | 高校 | 約7.4% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
多様な体験を通じリーダーシップを育成
本校には31のクラブがあり、その中心は高校1年生が担っています。上級生・下級生を取りまとめる経験から、社会でたくましく生きていくための「コミュニケーション力」や「調整力」が養われています。高校生の授業「サービスラーニング」では、実地体験を通して社会的な課題を発見し、解決方法を探ります。「社会に還元する」という体験を通して、自分自身が取り組むべき課題を見つけていきます。
※昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校の詳細はこちらhttps://spring-js.com/japan/12446/
<女子校>白百合学園中学高等学校http://www.shirayuri.ed.jp/東京都千代田区九段北 2-4-1
全校生徒に対する海外生の比率 | 8% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
女性としての「キャリア教育プログラム」
「キャリア教育」の一環として、不妊治療を専門にしている卒業生の産婦人科医を招き、高3生を対象として「出産、子育てを踏まえた上での女性のキャリア構築」をテーマに毎年講演会を実施しています。不妊治療は年齢を重ねるごとに成功率が低くなるという現実を踏まえ、結婚・出産・仕事をどうバランスをとり続けていくかについて高校時代から考え、女性としての「キャリアプラン」をしっかり立てて生きていく大切さを学んでいきます。
※白百合学園中学高等学校の詳細はこちらhttps://spring-js.com/japan/12408/
<女子校>田園調布学園中等部・高等部http://www.chofu.ed.jp/returnee/東京都世田谷区東玉川 2-21-8
全校生徒に対する海外生の比率 | 約4% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
体験重視の理数系学習で、生徒半数は理系を選択
異性の目を気にせず目標や夢に向かって取り組むことができる環境の下、まず「自分でやれることは何か」と考える校風があります。理系選択の生徒も多く、理科や数学の授業では苦手意識を払拭し興味関心を引き出す授業を展開しています。理科では中学3年間で80もの実験を実施し、数学では立体図形の模型を作成するなど、抽象的内容を具体的にイメージできる「体験重視」の授業を行っています。
※田園調布学園中等部・高等部の詳細はこちらhttps://spring-js.com/japan/12962/
<女子校>清泉女学院中学高等学校http://www.seisen-h.ed.jp神奈川県鎌倉市城廻 200
全校生徒に対する海外生の比率 | 約5% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
輝く女性になるための多彩なプログラム
本校独自の「ライフオリエンテーションプログラム」は、自らの力をどう活かして生きるかを考え、社会で強く自分を持ち、輝ける女性になるための体験型プログラムです。また「ライフナビゲーションプログラム」は企業や卒業生などの協力によるキャリア教育で視野を広げる機会となっています。女性の社会進出が目覚ましい現代で、将来の夢を実現するためのキャリアプログラムを多彩に揃えています。
※清泉女学院中学高等学校の詳細はこちらhttps://spring-js.com/japan/9354/
<女子校>東京女学館中学校・高等学校http://www.tjk.jp/mh/東京都渋谷区広尾 3-7-16
全校生徒に対する海外生の比率 | 約4% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
自国を理解し、インクルーシブ・リーダーシップを育成
茶道や華道体験などの「自国文化教育」により、深い教養、礼節ある人格、豊かな心を育てます。伝統文化を身につけ穏やかな心や美しい所作を備え、国際社会で活躍することを目指しています。また、生徒主体で行事を運営することで「インクルーシブ・リーダーシップ(リーダーとサポート双方の立場で協力し合う力)」を育みます。中高6年間の国際学級では、国内外の大学進学を目指します。
※東京女学館中学校・高等学校の詳細はこちらhttps://spring-js.com/japan/12403/
<女子校>桐朋女子中学校・高等学校http://www.toho.ac.jp/chuko/東京都調布市若葉町 1-41-1
全校生徒に対する海外生の比率 | 約9.2% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
「積極性」と「リーダーシップ」が自然と養われる環境
「女子であること」がスタンダードなため、性差を意識することなく学校生活を送っています。学校行事でもすべての役割を女子がこなすことから、自然と「積極性」や「リーダーシップ」が養われます。進路指導では、常に「自分は何がしたいのか」を問い、自分で考えることを求めています。その積み重ねから、将来のイメージを明確にし、その実現に向けての努力が学校のサポートのもと進められます。
※桐朋女子中学校・高等学校の詳細はこちらhttps://spring-js.com/japan/962/
<女子校>富士見丘中学高等学校http://www.fujimigaoka.ac.jp/東京都渋谷区笹塚 3-19-9
全校生徒に対する海外生の比率 | 約20% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
「国際性豊かな若き淑女の育成」を目指す
「グローバル・コンピテンシーを育てる」という理念のもと、多彩な「探究学習」を展開しています。教科横断型授業や高大連携授業、国内フィールドワークを通して、環境問題や貧富の格差問題などサステナビリティ(持続可能性)の視点で問題意識を持ち、課題を解決できる女性を育てています。生徒は異性を気にせずのびのびと学び、自分たちの力でやり遂げる行動力や実行力を身につけていきます。
※富士見丘中学高等学校の詳細はこちらhttps://spring-js.com/japan/1016/
<女子校>聖園女学院中学校・高等学校http://www.misono.jp/神奈川県藤沢市みその台 1-4
全校生徒に対する海外生の比率 | 約8% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
女性としての成長につなげる研修
高校1年生で「愛といのち」をテーマに研修を行います。研修では助産師の方を講師に招き、妊婦や胎動などの体験学習を通して命を生み出す女性として逞しく生きる力を学びます。自己の存在や命の大切さに気づき、これからの成長につなげます。また、6年間、女子だけですべてのことを成し遂げていく中で、協調性や創意工夫の力が育まれ、自らの能力を発見するチャンスにめぐり会えます。
※聖園女学院中学校・高等学校の詳細はこちらhttps://spring-js.com/japan/8182/