今年も、世界経済フォーラムがジェンダーギャップ指数を発表しました。日本は156ヵ国中120位で過去2番目に低い順位となり、主要7ヵ国(G7)の中では最下位という結果でした。特に日本は「政治」「経済」の分野で男女の活躍に大きな差が出ていると言われています。世界では、この長引くコロナ渦で、政治においてリーダーシップを発揮する女性が目立っていた一方、日本国内で指揮をとり国民に呼びかける多くの政治家は男性であることを再認識した方も多いのではないでしょうか。
近年、男女が社会で対等な構成員として活躍できる「男女共同参画社会」にも注目が集まってきています。これには幼い頃からの意識の醸成も欠かせません。
ジェンダーギャップ指数ランキング(2021)
1位 | アイスランド |
2位 | フィンランド |
3位 | ノルウェー |
4位 | ニュージーランド |
5位 | スウェーデン |
54位 | シンガポール |
120位 | 日本 |
日本におけるジェンダーギャップ指数
教育現場における実態と取り組み
「ジェンダー」に関する女子高校生調査報告書2020(ガールスカウト日本連盟)によると、「女の子だから」という理由で何らかの制限をうけたことがある女子高校生は47パーセントもいたそうです。
●「 女の子だから」という理由で何らかの制限を受けたことがある...47% ● 何かをしなくていいと言われた...29% ● 不公平・不平等を感じた...24% ● 何かをやらされた...15% ● 何かをあきらめた...11% -------------------------------------------------------------------------------------------- 「女の子だから」という理由で「何かをしなくていいと言われた」「諦めた」 ● 行事の準備などの力仕事 ● 男子しか入れない部活への入部 ● 理系の大学への進学 ● 職業選び ● 海外留学 ● 人前でリーダーシップを十分に発揮すること ● 生徒会長への立候補 ● 結婚願望がないことを口にすること |
出典:「ジェンダー」に関する女子高校生調査報告書2020(ガールスカウト日本連盟)
教育現場では、ジェンダーギャップを解消するためのさまざまな取り組みがされているようです。 〈女子生徒向け〉 ● 卒業生によるキャリア・ライフプランニング相談・講演会 ● 制服にキュロットやズボンの導入 ● 理系分野に興味を持つ生徒を集めた「特別授業」や「専門コース」の設置 〈男子生徒向け〉 ●「 ジェンダー平等啓発ワークショップ」への参加 ●「 アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」をテーマにジェンダーバイアスを学ぶ特別授業の開催 ● 乳幼児を持つ女性との対話や赤ちゃんとの触れ合い通して学ぶ勉強会 |
男女別学の場合、異性を頼ることができないため全ての役割を自分たちで分担・遂行していく必要があります。そのため、ジェンダーバイアスが自然と解消していくようです。また、性差でなく「個」の違いが重視されるため、生徒一人ひとりが持つ強みや興味を存分に発揮できる環境があると伺います。そのような経験は、社会に出てからも自信となり、性差に捉われない活躍につながるでしょう。今年もSpringでは「男女別学」ならではの魅力や各校の取り組みをご紹介します。
<男子校><女子校>
それぞれの良さとは?
男子校の良さ
● 男子が持つ良い意味での「オタク」の部分を存分に引き伸ばすことができ、だれ一人として埋没することなく各人の才能を発揮できる。
(海城中学高等学校)
● 「一般的に精神的な成長の早い女子生徒に臆することなく、男子だけでリーダーシップや組織運営力を養える。
(開成学園中学校・高等学校)
● みんな素の自分でいられるため、本当に仲の良い友達と出会い、本当に好きなものをとことん突き詰めることができる。
(佼成学園中学校・高等学校)
● 男子校では、「自分らしさ」を安心して表現でき本音で語り合える仲間たちが、男子をグンと伸ばす。
(逗子開成中学校・高等学校)
● 男子校には、周囲の目を気にすることなく、それぞれが自分の興味を持てる分野に没頭できる環境がある。それは、自身の将来を決定するかもしれない「何か」を発見する貴重な6年間となる。
(東京都市大学付属中学校・高等学校)
● ティーンエイジという多感な時期を、胸襟を開いて語り合い助け合いながら過ごす中で、一生の親友関係が育まれます。
(灘中学校・高等学校)
女子校の良さ
● 女子生徒しかいないので、自分らしさを伸びのびと表現できる。結果として社会に出ても自分の考えをしっかりと発信できる。
(大妻中野中学校・高等学校)
● 人間形成の大切な時期に伸びのびと過ごすことができ、卒業生や先輩などの良いモデルを身近に見られるので、将来の進路やビジョンについて考える機会が多くある。
(学習院女子中等科・女子高等科)
● 部活や好きな活動に一生懸命に打ち込んで充実した毎日を過ごし、男子を意識した「女子力」よりまず「人間力」を磨くことができる。
(カリタス女子中学高等学校)
● 異性を気にせずさまざまなことにチャレンジすることができ、自分の可能性を広げるチャンスに出会える。
(昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校)
● 女子校の生徒は、どんな仕事も男子に頼ることなくこなしていくことで、自立した人間に育ちやすい。
(清泉女学院中学高等学校)
● 男子に頼むという発想がなく何ごとも自分たちで動くため、常に自分の能力を発見するチャンスがある。
(桐朋女子中学校・高等学校)
● 同じ興味・関心を持つ人同士が団結でき、リーダーシップやフォロワーシップが養われる。
(豊島岡女子学園中学校・高等学校)
● 性差を意識することなく「ありのまま」でいられるため、常に伸びのびしている。
(富士見丘中学高等学校)
海外の研究で明らかにされる男女別学の良さ
近年、海外ではさまざまな国で「男女別学」と「共学」を比較し、学力面や人格形成面でどのような違いが生まれるか、という調査が行われています。その結果から男女別学のさまざまな効果が認められています。さらに、男女別学という環境は、異性を意識しにくいため男女のジェンダー・ステレオタイプに捉われにくく、教育的に良い効果があると考えられています。実際にシンガポールでも、成績上位校に男女別学の学校が多く存在しています。
● 共学よりも男女別学教育を受けた生徒の方が学力は高い (2000年/オーストラリア/教育研究機関ACER、2002年/英国/国立教育調査財団) ● 男女の学力差を埋めつつ、それぞれの能力を伸ばすには男女別学の教育が最適である (2005年/英国/ケンブリッジ大学) ● 男女別学では性別の固定観念を打ち破りやすいが、共学はそれを強化しやすい (2003年/米国/バージニア大学) |
編集部より
今回ご紹介した各校の取り組みから、男女別学の学校では「個」の良さを伸ばし、「自己」を大切にするためにさまざまな取り組みをされていることがわかりました。中学・高校の多感な時期は心身の成長が著しいため、学校での環境がお子さまの人格形成にも大きな影響を与えることでしょう。この時期、多くの学校がオンライン説明会を開催しています。各校の特色を把握され、ご家族で話し合われることをおすすめします。
<男子校><女子校>
学校紹介
(学校掲載は五十音順)
<男子校>海城中学高等学校 https://www.kaijo.ed.jp/ 東京都新宿区大久保 3-6-1
全校生徒に対する海外生の比率 | 約11.2% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
特別講座では男子校ならではの視点で議論を展開
2017年度から課外特別講座が開講し、生徒の「とがった」興味関心を深掘りする学びの場となっています。その一つ「SDGsゼミ」では持続可能な開発目標(SDGs)について議論・研究しています。国連大学のシンポジウムでは本校生徒が男子校ならではの視点で「ジェンダー平等の提言」を発表しました。多様性の時代を生きていくために、広い視野と深い見識を身につけるための活動を行っています。
※海城中学高等学校の詳細はこちらhttps://spring-js.com/japan/939/
<男子校>開成学園中学校・高等学校 https://kaiseigakuen.jp/ 東京都荒川区西日暮里 4-2-4
全校生徒に対する海外生の比率 | 中学 | 約2% | 高校 | 約4% |
英語習熟度別クラスの有無 | 無(課外特別授業あり) |
男子だけでリーダーシップや組織運営力を養う
本校は帰国生入試を行っておらず、海外で生活していたということも多様性の1つと受け止める土壌があります。学校行事や部活動は生徒主体で行っており、自分の性格や得意に応じた役割をそれぞれが担い、不得手な面をも認め合い、開成生活を過ごしています。同期生、先輩、後輩の縦横の密接な関係から、ロールモデルが見つけやすく、自分の近未来を考えやすい環境です。
学校一体となって応援する伝統のボートレース
<男子校>佼成学園中学校・高等学校 https://www.kosei.ac.jp/boys/ 東京都杉並区和田 2-6-29
全校生徒に対する海外生の比率 | 中学 | 22名程度 | 高校 | 27名程度 |
英語習熟度別クラスの有無 | 有(別途取り出し授業も設置) |
※佼成学園中学校・高等学校の詳細はこちらhttps://spring-js.com/japan/9378/
<男子校>逗子開成中学校・高等学校 http://www.zushi-kaisei.ac.jp/ 神奈川県逗子市新宿 2-5-1
全校生徒に対する海外生の比率 | 中学 | 約7.1% | 高校 | 約7.4% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
海を通して自分と世界を学ぶ
「海洋人間学」は、目の前に広がる海や自然を生かした「海と人との関係」について学ぶ教科横断型総合教育活動です。ヨットの製作・帆走や遠泳実習では常に変化する自然を相手に臨機応変に対応する力や困難に立ち向かう勇気、仲間と成し遂げる協調性を育みます。海洋学特別講義では大学や専門機関の先生の講義から学問の面白さや奥深さ、スケールの大きさを知り、知的好奇心を刺激して将来の進路にも役立てています。
※逗子開成中学校・高等学校の詳細はこちらhttps://spring-js.com/japan/12419/
<男子校>東京都市大学付属中学校・高等学校 http://www.tcu-jsh.ed.jp/ 東京都世田谷区成城 1-13-1
全校生徒に対する海外生の比率 | 約17% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
※東京都市大学付属中学校・高等学校の詳細はこちらhttps://spring-js.com/japan/7508/
<男子校>灘中学校・高等学校 http://www.nada.ac.jp/ 神戸市東灘区魚崎北町 8-5-1
全校生徒に対する海外生の比率 | 約2~3% |
英語習熟度別クラスの有無 | 無 |
ジェンダー・バイアスがない環境で真のpeer教育が実現
「精力善用・自他共栄」の校是の下、生徒の自主性・主体性を涵養する校風の中で、先輩・後輩のきずなが強く、生徒同士が助け合い教え合うpeer教育が実践されています。中でも文化祭は外部に公開する本校最大のイベント(本年度はコロナ禍のため規模を縮小して実施予定)で、企画立案から実施まですべてが生徒主導です。男子校ゆえに誰もがいろいろな役割を分担しなければならず、ジェンダー・バイアス解消という視点で大きなメリットがあると感じています。
助け合うことで仲間との絆が深まる野外活動
<女子校>大妻中野中学校・高等学校 http://www.otsumanakano.ac.jp/ 東京都中野区上高田 2-3-7
全校生徒に対する海外生の比率 | 11%以上 |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
帰国生がのびのびと過ごせる環境
「帰国生が異文化体験から得た特性を伸長させる」「帰国生と一般生とを相互に啓発させる」という教育を掲げて20年。海外経験の有無に関わらず「アドバンストクラス」と「グローバルリーダーズコース」の2つのコースへの変更も可能なため、帰国生と一般生が一緒になって一つの学校環境を作っています。女子校だからこそ、個々の生徒が一層自分らしさを出せることが魅力です。
※大妻中野中学校・高等学校の詳細はこちら https://spring-js.com/japan/3619/
<女子校>学習院女子中等科・女子高等科 https://www.gakushuin.ac.jp/girl/ 東京都新宿区戸山 3丁目20番1号
全校生徒に対する海外生の比率 | 約10% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
品性と知性を身につけ、全人格的な陶冶を目指す
委員会、学校行事、クラブ活動に生徒一人ひとりが活発かつ主体的に取り組んでいます。学習面では実験・実習をはじめ、本物に触れる機会を多く取り入れ「進度より深度」を大切に掘り下げる授業を展開しています。「ライフサイクル講座」では、専門の先生をお招きし「あなたらしい人生を ~現代女性の心とからだの健康~」と題した講演を行いました。帰国生対象の「海外英語取りだしクラス」は3年間同じクラスで、強い絆と連帯感が生まれます。
卒業生の講演(オンライン)からキャリアを考え、進路に生かす
<女子校>カリタス女子中学高等学校 https://www.caritas.ed.jp/ 神奈川県川崎市多摩区中野島 4丁目6-1
全校生徒に対する海外生の比率 | 約4% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有(英語アドバンストクラス) |
日仏交換留学などを通じて国際感覚を磨く
カナダやセブ島、マルタでの研修、オーストラリアやニュージーランドでのターム留学、日仏交換留学など、生徒は憶せず出かけていきます。中・高時代の女子はコミュニケーション力や共感力が発達しています。また一般的に女子の方が精神的・身体的な成長が早いものです。そうしたアドバンテージを生かして、男子に遠慮することなく、生徒たちは早くから世界に飛び立ち、国際感覚を磨いています。
※カリタス女子中学高等学校の詳細はこちら https://spring-js.com/japan/9734/
<女子校>昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校 https://jhs.swu.ac.jp/ 東京都世田谷区太子堂 1-7-57
全校生徒に対する海外生の比率 | 中学 | 約8% | 高校 | 約6% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
※昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校の詳細はこちら https://spring-js.com/japan/12446/
<女子校>清泉女学院中学高等学校 http://www.seisen-h.ed.jp 神奈川県鎌倉市城廻 200
全校生徒に対する海外生の比率 | 約5% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
輝く女性になるための多彩なプログラム
本校独自の「ライフオリエンテーションプログラム」は、自らの力をどう活かして生きるかを考え、社会で強く自分を持ち、輝ける女性になるための体験型プログラムです。また「ライフナビゲーションプログラム」は企業や卒業生などの協力によるキャリア教育で視野を広げる機会となっています。女性の社会進出が目覚ましい現代で、将来の夢を実現するためのキャリアプログラムを多彩に揃えています。
※清泉女学院中学高等学校の詳細はこちら https://spring-js.com/japan/9354/
<女子校>桐朋女子中学校・高等学校 http://www.toho.ac.jp/chuko/ 東京都調布市若葉町 1-41-1
全校生徒に対する海外生の比率 | 約9% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
「積極性」と「リーダーシップ」が自然と養われる環境
「女子であること」がスタンダードなため、性差を意識することなく学校生活を送っています。学校行事でもすべての役割を女子がこなすことから、自然と「積極性」や「リーダーシップ」が養われます。進路指導では、常に「自分は何がしたいのか」を問い、自分で考えることを求めています。その積み重ねから、将来のイメージを明確にし、その実現に向けての努力が学校のサポートのもと進められます。
ネイティブ教員を交えたグループ学習
※桐朋女子中学校・高等学校の詳細はこちら https://spring-js.com/japan/962/
<女子校>富士見丘中学高等学校 http://www.fujimigaoka.ac.jp/ 東京都渋谷区笹塚 3-19-9
全校生徒に対する海外生の比率 | 約20% |
英語習熟度別クラスの有無 | 有 |
「国際性豊かな若き淑女の育成」を目指す
グローバル・コンピテンシーを育てるという教育目標のもと、多彩な「探究学習」を展開しています。教科横断型授業や高大連携授業、国内フィールドワークを通して、環境問題や貧富の格差問題などサステナビリティ(持続可能性)の視点で問題意識を持ち、課題を解決できる女性を育てています。生徒は異性を気にせずのびのびと学び、自分たちの力でやり遂げる行動力や実行力を身につけていきます。
※富士見丘中学高等学校の詳細はこちら https://spring-js.com/japan/1016/
<女子校>豊島岡女子学園中学校・高等学校 https://www.toshimagaoka.ed.jp/ 東京都豊島区東池袋 1-25-22
全校生徒に対する海外生の比率 | 約1%(帰国3年以内) |
英語習熟度別クラスの有無 | 有(高2と高3の一部) |
伝統を守りつつ、新しいチャレンジ
70年以上続く「毎朝5分の運針」は、集中力を高め無心に努力を積み重ねる大切さを身をもって知る場となっています。最近は未来を創る女性の育成を目指し、探究活動に力を入れ、国際的な広い視野を育むグローバル教育も盛んです。また、キャリア教育の一環として卒業生インタビューなどを行っています。誰かに気兼ねすることなく何にでも本気で打ち込め互いに切磋琢磨して成長していく雰囲気があります。
英語のみで行われるエンパワーメントプログラム
※2021年6月25日現在の情報です。最新情報は各機関に直接ご確認ください。