徹底的に考えよう、本当の英語力
英語を使って仕事をするビジネスパーソンや海外に住む日本人が増加しているだけでなく、日本国内に住んでいても外国人や観光客に出会うなど、英語に触れる機会は急速に増加しています。英語が話せることがごく当たり前となる時代に、「本当に求められる英語力」とは一体何でしょうか。
Springでは読者のご要望にお応えし、シリーズで特集しています。今号では、インターナショナルスクールでの
取り組みをご紹介します。
取材にご協力いただいたインターナショナルスクール Canadian International SchoolEtonHouse International SchoolOverseas Family SchoolStamford American International SchoolThe Grange Institution |
---前号の特集はこちら---
「社会で通用する英語力とは」https://spring-js.com/global/10179/「幼児・学童期に育む英語力」https://spring-js.com/global/10946/「小学校で育む英語力 日本人学校の取り組み」https://spring-js.com/global/12155/「中学校で育む英語力 日本人学校の取り組み」https://spring-js.com/global/12496/
「海外在住の機会に英語をしっかり学んでほしい」という思いから、お子さんをインターナショナルスクールや現地校で学ばせているご家庭は増えています。シンガポールでは、Springが取材したインターナショナルスクール29校に少なくとも2,060人以上の日本人のお子さんが在籍しています(2019年3月調べ)。
※学校によっては幼稚園児の人数も含まれた統計です。
日本の学校から編入するお子さんにとって、英語圏の学年相当の英語力まで追いつくことは容易なことではありません。このためほとんどのインターナショナルスクールでは、英語を集中的に強化するための「第二言語(またはもう1つの言語)としての英語(English as a Second Language、以下ESL、またはEnglish as an Additional Language 、以下EAL)」と称される英語学習のための特別クラスを用意して、取り出し授業などを行っています。
※学校により、別途授業料がかかる場合もあります。詳細は各校に直接お問い合わせください。
◆ ESL/EALとは
ESL/EALは、英語を母語としない生徒が英語を学ぶためのクラスです。多くの場合、ESL/EAL教師としての国際資格(CELTA、TESOL、TEFLなど※)を有している専任の教師が教えます。授業の実施方法は学校によってさまざまですが、以下のような形が一般的です。
※CELTA :Cambridge Certificate in English Language Teaching to Adults
TESOL :Teaching English to Speakers of Other Languages
TEFL :Teaching English as a Foreign Language
❶ 全日ESL/EALクラス型
ESL/EALの生徒たちが同じクラスで一日過ごし、英語だけでなくすべての教科をこのクラスで学びます。各科目の学習すべてで英語を補強していくアプローチをとるため、インターナショナルスクールが初めてのお子さんには馴染みやすいでしょう。
❷「英語」の時間だけ、取り出しクラス型
基本的には一般クラスで過ごしますが、「英語」の科目の授業時間だけ、ESL/EAL生は取り出しクラスでレベルに合わせて英語の強化学習を行います。
❸「外国語」の時間だけ、取り出しクラス型
❷の方式と似ていますが、このタイプでは一般クラスで「英語」の授業も受け、取り出しが行われるのは他の生徒が第二言語・外国語の授業を受けている時間です※。
※フランス語やスペイン語、中国語など、学校によって小学校から第二言語を学ぶ学校も あり、ESL/EAL生はこれら外国語の学習をせず、英語強化に時間を充てます。
❹ 放課後補習型
基本的に他の生徒たちと同じクラスで同じ授業を受け、放課後にESL/EALの授業に参加します。
❺ 混合型
お子さんの英語のレベルや学年によって上記のいくつかを組み合わせて行っているパターン。英語以外の科目の理解を助けるために、必要に応じて個別に補習サポートを行っている学校もあります。
◆ 年齢層別アプローチ
どの学校も、将来的には英語圏の大学で学べる素地としての「学問的(アカデミック)な英語」を習得することを最終目標にしていますが、年齢によって必要な英語力、学びのアプローチは異なります。
小学校低学年
コミュニケーションを楽しみ、授業が理解できるように
● 吸収の早い時期なので、遊びや会話を通して4技能の基本を身につけます。最初は学校生活で必要な言葉(「分からない」「具合が悪い」「お手洗いに行きたい」「…はどこですか」など)を学び、学校に慣れるよう支援します。
● 低学年の内に、特にフォニックスを通して重点的に「発音すること」「話すこと」を学びます。英語でのコミュニケーションに自信をつけ、言葉を学ぶ動機づけにつなげます。
● 単語力を養いながら「読んで理解する力」を身につけ、すべての科目の授業が理解できるようにサポートします。
小学校高学年
自分の考えを伝える力、教科学習に必要な語彙
● 教室で「話す」機会を増やし、自分の考えや学んだことを人に伝える力を養います。グループワークやプロジェクトベースの学習、プレゼンテーションなどの機会が多いインターナショナルスクールでは必須のスキルとして練習します。
● 教科の学習内容も高度になってくるこの時期は、文法とともに、各教科での学びに必要な語彙を身につけることで学年相応の深い学びができるように なります。
● 教師はこの頃から「教える人」から「手助けする人」に役割を変え、生徒が「自ら学ぶ力」「学びを深める力」を身につけられるように支援していきます。
中学生・高校生
アカデミックな記述力、深い読解力
● すべての科目で高度な英語力が必要になってくるため、幅広い語彙はもちろん、アカデミックな文章の書き方も身につけます。ESL/EALだけでなく、各教科の課題などを通して英語力を伸ばしていきます。ESL/EAL教師と各科目の教師とのより緊密な連携が必要になります。
● 授業時間内だけでは追いつかない場合は、自習のための教材やアプリなども活用します。英語のレベルも個人差が大きくなるため、レベルや希望する進路に合わせて個別に柔軟なサポートが必要になります。
ESL/EALの先生方に、ご家庭でできるサポートについてお聞きしました。
● アプリやオンラインの教材も活用しよう
英語で話す機会を作り、本や映画の感想やサマリーを英語で話したり、学校で学んだことを説明してもらいましょう。覚えた単語の記録「Vocabulary Journal」をつけて、使いこなせるように例文を考える練習も力がつきます。アプリやオンラインの教材も活用しましょう。(EtonHouse)
おすすめのアプリ:Duolingo(無料)・Rosetta Stone(有料) おすすめのウェブサイト: ブリティッシュ・カウンシル「Learn English Teens」http://learnenglishteens.britishcouncil.org/BBC「Learning English」http://www.bbc.co.uk/learningenglish/ |
● 関心のある分野を通して、語彙を増やそう
アカデミック英語の土台には、膨大な語彙を適切に使いこなせる力が必要です。ただ単語を覚えるのは苦痛ですから、自分の生活や興味のある分野の記事、小説、関心のある人の実話などを通して、多くのアカデミックな語彙に触れましょう。アカデミック・ライティングは中・高を通して練習を積んでいく必要があります。どんどん書いて添削してもらうことで力をつけましょう。(Canadian International School)
● 恥ずかしがらずにチャレンジしよう
学校の課題をこなす以外にも、読みものや音楽、テレビ番組や映画を通じて英語に触れたり、英語圏の文化の理解を深めていくことが、自然に語彙が増えていくきっかけになります。日本人の生徒は恥ずかしがる傾向があり、英語を話す練習の機会を逃しがちです。ご家庭でも、「たとえ間違えても、そこから学べれば良い」と伝えて励ましてあげましょう。(Overseas Family School)
●「 継続は力なり」英語と母語をつなぐきかっけにも
目指したいレベルの英語に日常的に触れることが、アカデミック英語の習得には必須です。毎晩必ず英語を読むことを日課として続けると良いでしょう。読んだ内容を日本語でも話してもらうと、英語の理解力だけでなく2言語をつなぐ練習にもなります。年齢の大きいお子さんの場合は、親御さんも同じ本を読んで「ブッククラブ」のように感想を論じ合ったりすることもおすすめしています。(Stamford American International School)
● 文化に適応する気持ちが、学びの原動力に
日本人のお子さんは一般的にご家庭で英語を学ぶ機会は限られていますが、適応能力が高いのでインターナショナルスクールの環境で学ぶと吸収は速いと感じます。学習意欲が高いお子さんが多いので、ご家庭でもそのような学習態度を褒め、励ましてあげましょう。(The Grange Institution)
ESL/EAL体験談
ESL が不要になるまでの期間には、個人差があることを理解しておこう
A君(大学2年生) ESL在籍時期:G4~6
安心感を与えてくれたESLで、焦らず基礎をしっかり
インターナショナルスクールに編入した当初は英語の読み書きはまったくできず、挨拶程度の会話を少し聞き取れるくらいでした。ESLは週3回の取り出しクラスで、自分と同じような英語力の生徒が多く、安心して落ち着いた環境で学ぶことができました。
一番苦労したのは、課題図書を読んで感想を書く宿題と基礎単語を覚える宿題で、ESLではない他の生徒よりも宿題が多くて大変だと思う時期もありました。
通常の授業を自然に理解してついていけるようになったのは、3年くらい経過した頃です。それでも教科によっては、日本語で学んだことのない内容は英語でも理解できず、家に帰ってから必死になって調べました。ESLで培った話す力や読解力の基礎は、インターナショナルスクールでの学習にはもちろん、帰国後の学校や大学受験でも大いに役立ったように思います。
B君(大学1年生) ESL在籍時期:G3の1年間
英文を真っ赤に添削されたことがモチベーションに
小学3年の時にインターナショナルスクールに入りました。英語は日本で少し学んでいましたが、実際には簡単な自己紹介くらいしか言えないような状態でした。先生の話が理解できず、宿題があることすら分からず、やらずに怒られるなど、当初は大変でした。
ESLは取り出しクラスで行われ、カードやゲームを使って英単語を覚えたりする楽しい授業でした。特にライティングとスピーキングの練習には力が入っていました。ライティングは、当初は殆ど全文を真っ赤に添削されていましたが、その添削の赤字が徐々に減っていくことが自分の中でのモチベーションとなりました。スピーキングの練習も、先生があらかじめ単語の意味を日本語で教えてくれましたが、「配慮されなくても会話ができるようになりたい」と思い、単語力をつける努力をしました。この時の努力が、アカデミックな英語を磨いていく上では大きな力になったように思います。
世界の第一線で働く先輩方のストーリーをシリーズでお伝えしています。
今回は、小学校低学年時に米国で現地校に通われた方のお話です。
Story
総合商社勤務
古山 馨さん
伊藤忠シンガポール会社
金属資源部門マネージャー
【プロフィール】
小学校低学年の頃、1年半をアメリカで過ごす。
現地校に通学。帰国後公立の小学校、私立の中学高校を経て、早稲田大学・国際教養学部に入学。
在学中にスペインに1年間留学。伊藤忠商事に入社後、2013年から2年半は南米コロンビアに駐在。
2016年からシンガポールに駐在。
「英語が強みになっている」と感じますか?
~コンプレックスを自信に変える~
社会人1年目から海外のクライアントと関わる仕事が多く、今では日本での勤務より海外の方が長くなりました。海外で働く機会を多くいただけたのも、英語力が一助になったと思います。大学では帰国生が多い学部だったため、周囲の英語レベルの高さに圧倒され、かつてアメリカに住んでいたことを隠したくなるほど英語をコンプレックスに感じていました。そこで、自分なりに努力し英語を強化したことで自信がつき、海外に対する抵抗感や、さまざまな国籍の人と関わることに対して敷居が低くなっていきました。
英語を習得するまでに、どのような努力をしましたか。
~会話を通じて英語力を上げる~
単語の暗記などに頼らず、話せる、聞けるということに重点を置きました。失敗を繰り返しながら、会話を通じて文法や語彙を増やすことを意識していました。また、英語話者と積極的に話すことで、相手が使う表現や言い回しを真似て自分のものにしたことも英語力向上の鍵となりました。英語の習得はスポーツと似ていると思います。自分の能力が上がると出来ることが増え、満足度も次第に上がっていくからです。
海外在住のご家族にアドバイスをお願いします。
~失敗にめげない気持ちを~
英語に限らず、時代が大きく変わっている中で、「新しいものを享受しよう」という感覚を大切にしていくことが良いのではないでしょうか。英語を習得中のお子さんは「間違えることで次のステップにいける」とポジティブに捉え、「失敗にめげない気持ち」を持ち続けてください。
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