特集記事
帰国受験の今 ~2017年の中学・高校受験を振り返る

海外駐在の多くのご家族にとって、いつかは訪れるのが「本帰国」です。海外生活を満喫しながらも、いざ帰国が決まった時に慌てないために、今号では「帰国受験の今~2017の中学・高校受験を振り返る」を特集します。日本の教育現場ではどのような学びが重視され、各学校は海外生に何を求め、受験はどのように変化しているのでしょうか。 帰国受験を熟知する、日本・シンガポールの学習塾9塾にSpringが取材しました。

帰国受験の今 ~2017年の中学・高校受験を振り返る(PDF版リンク)

【Springウェブサイト限定!】
次ページ以降では取材にご協力いただいた日本とシンガポールの学習塾からの詳細回答をお届けします。

日本・シンガポールの学習塾に聞きました。

取材協力 (敬称略、アルファベット順) enaシンガポール、KOMABA、馬渕教室、ORBIT ACADEMIC CENTRE、SAPIX国際教育センター、 駿台シンガポール校、WAOシンガポール、早稲田アカデミー国際課、早稲田アカデミーシンガポール

Q1. 帰国受験で、最も気になった最近の変化は?

1位 中学受験での英語入試の増加

回答抜粋(9塾のうち8塾が言及)

  • 帰国枠入試だけでなく、一般入試でも英語力重視へ
  • 2018年は英語入試が首都圏では更に増加すると思われる
  • 英語入試の難易度が上がった
  • 帰国枠の条件が緩和された(帰国時期、滞在年数など)
  • 英語力のある一般生も受験可能に

小学校での英語教科化や、大学入試の外部英語試験導入などの動きを見据えて、グローバル人材に必須の「英語」が、中学入試でも導入される傾向が顕著です。

首都圏の英語入試実施校数の推移(資料提供:首都圏模試センター)/英語入試を実施 30%: 1都3県(東京・神奈川・千葉・埼玉)の私立中289校のうち約30%が英語入試を実施(2017年現在)

  • 首都圏の英語入試実施校数の推移(資料提供:首都圏模試センター)
  • 英語入試を実施 30%: 1都3県(東京・神奈川・千葉・埼玉)の私立中289校のうち約30%が英語入試を実施(2017年現在)

2位 入試が多様化

回答抜粋(9塾のうち6塾が言及)

  • 試験形態の多様化(思考力入試・プレゼンテーション入試)
  • 面接や作文の実施で「思考力・判断力・表現力」を重視
  • 多様なバックグランド、能力を評価しようとする学校の増加
  • インター生、日本人学校生の両方を対象にする学校の増加

2位 更に受験しやすい体制へ

回答抜粋(9塾のうち6塾が言及)

  • シンガポールで入試を行う学校の増加(海外生でも受験しやすく!)
  • ウェブ出願方式採用校の増加(海外生でも受験しやすく!)
  • 日本国内で午後入試の増加

Q2. 帰国までに取得すべきおすすめの資格試験は?(複数回答、トップ2の集計結果)

1位 英語検定 (9塾)(英検は圧倒的な支持。)

一般受験では英検3級程度から準2級が目安になるが、多くの帰国受験では2級が最低ラインか。準1級・1級取得者も多数。ただし難関校になると1級取得者でも英語試験で不合格になることも。

2位 漢字能力検定(5塾)

3位 TOEFL(4塾)

早稲田アカデミーシンガポール「漢検で語彙力増強を」

  • 学年相当の漢字を海外で身につけることが重要。
  • インター校生であっても、英語力を磨きつつ平行して日本語とのバランスをとることが帰国前に必須と確信している。語彙力の強化となり国語の読解力の足腰となる漢検への挑戦は良い指針になる。
  • 英米圏での在住経験を持つ受験生にシンガポールの生徒が勝つためには、漢検や数検といった「3科目でのバランスの良さがもう一つの鍵になる。

ORBIT ACADEMIC CENTRE「TOEFL、TOEICもおすすめ」

  • 受験のための資格取得、という目的での英語学習では あまり意味がないため、受験はもちろん、受験後にも役立つ(≒汎用性が高い)資格としてアカデミック性・実用性の高いTOEFL、TOEICもすすめている。
  • インター生を中心に英語に強い生徒は、英検用の対策をしなくても受験時に英検2級(高卒レベル)を既に取得している生徒が多いことも理由。

馬渕教室「地域的な特徴も」

  • 関西では資格試験を考慮する学校が未だ少ないのが現実。
  • その中で、英語優遇措置をとる学校の8割は英検を基準としている。

Q3. 帰国受験をする際のアドバイスは?

enaシンガポール

「海外入試は10月・11月から。模試を活用しよう。」
海外での現地入試も含めると10月や11月から入試は始まります。帰国生に残された時間はそれほど多くありません。海外で日本の中高受験に向けて勉強している生徒さんには、最低限「模試の受験」を推奨します。十分な勉強をしていないからと言って模試を回避したがる生徒さんもいますが、模試は「学力の健康診断」でもあります。自分の課題が明らかになり、受験を乗り切る第一歩になるでしょう。

KOMABA

「進学後の学校の取り組みに注目。」
日本の教育現場の「入り口」情報ばかりでなく、進学後の学校の「取り組み」にぜひ注目してください。単に「英語力の高い帰国生を受け入れている」というだけでなく、帰国生の多様性を学校現場で活かそうという校風であるかどうか、お子さまの個性を伸ばしていけるか否かという点が、ますます大切になると思います。

馬渕教室

「常に目標校を持とう。関西の高校受験は5教科を準備。」
中学受験においては、「志望校合格」はゴールです。ゴール地点が分からないのに走り続けられるような精神力の強い小学生はそうはいません。だからこそ、常に目標校は持っていただきたいと思います。 関西に戻られる場合は、帰国生入試の枠そのものが少ないこともあり、私立も公立も一般入試を選ばざるをえないケースがあります。したがって高校受験では5教科(英・国・数・理・社)をきちんと学ぶ必要があります。

ORBIT ACADEMIC CENTRE

「海外生活は人生最大のアドバンテージ。」
長い人生を考えた時、多感な時期をシンガポールで生活できることは、ますますグローバル化が進展する時代において、人生最大のアドバンテージになります。「帰国枠資格が使えるうちに帰国して中学受験」という発想は捨てる勇気を持ち、「シンガポールに居られるだけいた方が良い」という発想への転換をして欲しいと考えています。豊かな海外体験がそのまま面接・作文対策につながるでしょう。

SAPIX国際教育センター

「難関進学校にチャレンジする帰国生も。」
ここ数年、難関進学校にチャレンジする帰国生が増加しています。インターネット環境など学習環境の向上により、最上位生にとっては高校受験で理社を含めた5教科受験が一般的になりつつあります。在外中にはいろいろな経験や活動を通して、豊かな感受性・人間性を身につけ、一時帰国中は一般生徒と一緒に季節講習などに参加し、一般生のレベルや学習量を肌で感じておくと良いでしょう。

駿台シンガポール校

「海外生活の意義や志望校について、親子で話し合う。」
第一志望を比較的早い時期に決めることが大切です。その際には帰国先の状況やご家庭の教育方針、お子さまの性格を踏まえてよく話し合うことです。その上で、学校見学をすることが大切です。面接対策の基本として、シンガポールという国に滞在したことの意味について、保護者の方も一緒に考え、話し合ってみることが必要だと感じます。

WAOシンガポール

「志望校選びには通学時間も重要。バランスのとれた生活を。」
志望校の選び方としては、周囲の評判ではなく、お子さまやご家庭の方針に合っているかという視点で見極めましょう。ドアtoドアで通学が1時間以内で収まる学校を選ぶことも重要で、通学時間は短ければ短い方が良いと思います。受験生活においては、学習だけにとらわれるのではなく、スポーツ・習いごと・家族行事などをバランスよく取り入れ、面接時の話題をまとめておきましょう。

早稲田アカデミー国際課

「中学受験は努力することの貴さを学ぶ。高校受験は本人主体に。」
保護者ばかりが一生懸命になって「とにかく受験する」という態勢は良くありません。中学受験は、学ぶこと、努力すること、目標に向かって頑張ることの貴さを知るためのツールとして考えていただきたいと思います。海外にいて学校見学が難しい時にも「保護者が気に入った中学」の価値をいかにお子さまに伝えるかが大きなカギです。高校受験は中学受験と違い「本人主体の活動」と捉え、自分の可能性を切り開くという意識を持つと良いでしょう。

早稲田アカデミーシンガポール

「スケジュールの選択と集中。苦手科目の徹底学習を。」
さまざまな入試制度の変化が注目を集めていますが、これらの変化は受験者視点で考えると「準備の負担が増える」ことも意味しています。皆がやっているからという理由でさまざまな習いごとを増やし続けると「帰国受験も、一般枠受験も、スポーツも、資格も、現地体験も」というスケジュール破綻に陥ることになりますので、やはり選択と集中も必要です。受験学年の夏までは苦手科目をとことん頑張り、夏以降は得意科目のウェイトをあげてください。

Spring編集部より

首都圏模試センターの調べによると、首都圏1都3県の中学受験者数は2015年より3年連続で増加しています。また、世界の中でもアジア諸国での小学生・中学生の在留邦人数は過去10年間で増加の一途をたどっています。日本国内の子どもの数が減る中、海外生は今後ますます増えることが予想され、日本の学校も海外生への門戸を更に広げる傾向にあります。

学力だけでなく、海外生活の多様な体験を重視する学校が増えていることも、海外生にとっては朗報です。入試動向は急速に変化し、多様化がますます進むでしょう。

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次ページ以降では取材にご協力いただいた日本とシンガポールの学習塾からの詳細回答をお届けします。

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今回のアンケート調査結果を更に詳細にご紹介しています
● 海外生の中学・高校受験の形態は? 2科目 or 4/5科目?
● 受験するのは何校? ● 各塾への取材回答の詳細 など

取材にご協力いただいた日本とシンガポールの学習塾からの詳細回答をお届けします。

Q「海外生の受験で、最も多い受験形態は?」

中学受験
1位:帰国受験 2教科(国・算)
2位:帰国受験 3教科(国・算・英)
3位:帰国受験 英語のみ
4位:海外受験 (シンガポールなど)
5位:一般受験 4教科(国・算・社・理)

高校受験
1位:帰国受験 3教科(国・数・英)
2位:海外受験 (シンガポールなど)
3位:一般受験 4・5教科(国・数・社・理・英)
3位:資格審査による推薦・書類選考
5位:帰国受験 英語のみ

Q「受験する学校数は?」

中学受験・高校受験ともに以下の通り。

1位:4校
2位:5校
3位:3校

Q「受験を目的に本帰国する時期は?」

受験学年の前学年と、受験直前の12月に本帰国する傾向で2極化。

enaシンガポール

Q1. 詳細 2017年の受験では、例年と異なる点はありましたか。

中学受験

  • (帰国枠)では、全体的に受験者数が増えました。例えば、大妻、逗子開成や市川の男子、山脇、かえつ有明の女子、都市大附属、広尾学園、渋谷幕張、立川国際でしょうか。出題形式・難易度・分量を変えたところもあります。渋谷幕張では1813年発行の長編小説「傲慢と偏見」が題材となり、エッセイでは「詩」が使われました。ネイティブの感覚のようなものを測ろうとしているかもしれません。頌栄女子学院では問題が難しくなり、問題量も増えました。男子の聖光や海城では、圧倒的な算数の力+英検準1級レベルの英語力が必要であることは昨年度以上に顕著かもしれません。ある学校の面接内容と別のある学校の作文の課題が全く同じということもありました。また、人気がばらけたという見方もできます。以前は、「男子ならとりあえず~~中は受験して」というのがありましたが、今年もそうではないようです。その中でも、広尾学園と学芸国際中等が人気だったようです(英語受験)。いずれにしても、全体的には「学力重視」や「バランスがとれた生徒」という傾向に拍車がかかっている気がします。

高校受験

  • 一言で言うと「全体的に入試問題は易しくなっている」ことに尽きます。今年度は慶應義塾や慶應女子が結果的には狙い目でした。必死に努力したら早慶のどれかには引っかかるという感じがします。その一方で国際基督教大学高(ICU)は以前より入りにくくなったように思います。現地校やインター校の成績は抜群で英検1級も持っているという生徒でも残念な結果になっています(SFCや慶應女子には合格しています)。自信があっても書類や面接だけに頼るのではなく、3科目の学習をきちんとしなければなりません。勉強した分だけ報われる(帰国枠受験実施高校の8割はそうだと思います)3科目入試の準備が不可欠です。

Q2. 2018年の受験ではどのような変化を予想していますか。

中学受験

  • 国語・算数・英語・面接・作文・適性検査/思考力型などを組み合わせた入試が多種多になってきていますので、人気の分散は起こるかもしれません。帰国生に期待している学校は非常に多くあります。帰国生に対する理解も面倒見も大変すばらしいです。その一方で、帰国生側もきちんと準備をしなければなりません。卓越した英語力、標準的な国語と算数の力。これらがあれば2018年度入試でも受験校選択の幅を狭める必要はないでしょう。

高校受験

  • 中学受験ほどではありませんが、高校受験でもさまざまな形態の試験があります。しかしながら、国語・数学・英語の3科目をきちんと準備することで、「努力が裏切られない」受験結果を得られる傾向は続くでしょう。その中身に、2020年度大学入試改革の流れに乗って、長文化・難文化・記述化などは加わっていくかもしれません。

Q3. 詳細 これから受験をするお子さまと保護者の方に具体的なアドバイスをお願いいたします。

  • 帰国枠受験は「情報戦」とも言えます。友人・知人、インターネット、一時帰国の際の学校訪問などを通じて、情報を収集し、取捨選択する必要があります。
  • 勉強面に関しては、「やっておいた方が良い勉強」と「やらなくてはならない勉強」を分けて考える必要もあります。特に、受験勉強開始のタイミングで遅れをとっている生徒さんにあてはまります。算数のそのレベルの問題はやるべきなのかどうか、理科・社会の学習は続けるべきなのかどうかなど、個々にアドバイスは異なります。海外会場での入試も含めると10月や11月から入試は始まります。帰国生に残された時間はそれほどはありません。
  • 英語力に磨きをかけてくれる学校、大学受験の準備をしてくれる学校、大学附属の学校などご家庭の方針により選び方も変わります。選んでいる最中には入試科目や難易度についても気になります。情報の入手が困難だったり、取捨選択に迷ったり、そういう場合は学習塾に頼っていただければと思います。
  • 海外で日本の中高受験に向けて勉強している生徒さんには、最低限「模試の受験」を推奨します。模試を受けることが念頭にあって日々学習をするのと、そうでないのとでは今後の成績への影響が大きく異なります。また、受験校の選定に関しても模試の成績資料がないとなかなか適切な判断や助言をさせていただけません。十分な勉強をしていないからと言って模試を回避したがる生徒さんもいますが、模試は「学力の健康診断」でもあります。受けてみてこそ、受験を乗り切る第一歩になると考えます。

KOMABA

Q1. 詳細 2017年の受験では、例年と異なる点はありましたか。

  • 日本人中学校のグローバルクラスの入級テスト
  • シンガポールでの入試実施校の増加
  • 国内での適性・思考力型入試実施校の増加
  • 中学入試において英語科目導入の増加
  • 早稲田渋谷シンガポール校の受験者数増加(前年比)

Q2. 2018年の受験ではどのような変化を予想していますか。

  • 入試形式の多様化の拡大
  • 2020年教育改革を踏まえた新傾向入試の増加
  • 私学の帰国子女受入校のゆるやかな増加

Q3. 詳細 これから受験をするお子さまと保護者の方に具体的なアドバイスをお願いいたします。

日本の教育現場の「入り口情報」ばかりではなく、進学後の学校の取り組みに是非注目してください。単に英語力の高い帰国生、というだけではなく、帰国生の多様性を学校現場で活かそうという校風で、お子さまの個性を伸ばしていくことが、ますます大切になると思います。

馬渕教室中学受験コース

Q1. 詳細 2017年の受験では、例年と異なる点はありましたか。

中学受験

  • 関西私立入試のフレームは変わらず。
  • プレテスト採用校62.2% 11月~12月実施
     →事前入試(県外入試)愛光・函ラ・北嶺・土佐塾・香川誠陵・岡山白陵・岡山・海陽がメイン
      ※北嶺は2年前から大阪会場本格参入、受験生を伸ばす。
      ※土佐塾は2018年入試から大阪会場廃止。
     →本入試
      ※高槻の共学化(女子募集)が大きな話題に。
      ※午後入試定着 初日55校、2日目39校が実施。全中学の49%。
      ※英語力重視入試実施校増加*。
  • WEB出願方式採用校の増加 2016年 8校→2017年 38校

*英語力重視入試例

高校受験

  • 西大和学園高校で「英語重視型入試」が導入され、帰国入試の枠組みが変わった。英語重視型入試は、国内生も受験できるので、英語に自信のある国内生との競争となった。

Q2. 2018年の受験ではどのような変化を予想していますか。

中学受験

  • 大事なことは「確定情報」をもとにベストな対策を打つということ。
  • 塾としては、いくつかの変化のシナリオを想定し、いずれに対しても適切に対応できるだけの準備をしています。
  • 情報発信は、確定後、対策とともに教室生に対して行います。

高校受験

  • もともと関西の帰国入試の枠は少ないので、大きな変化はないと思われる。

Q3. 詳細 これから受験をするお子さまと保護者の方に具体的なアドバイスをお願いいたします。

中学受験

(1) 志望校決定の時期
志望校決定の時期に最適な時期はいつでしょうか。5年生の夏、6年生の最初、6年生の秋、また3年生の段階で決めておくべき……、いろんな考え方があると思いますが、どれが正解だというのはありません。ただ、志望校合格は中学受験においてはゴールです。ゴール地点がわからないのに走り続けられるような精神力の強い人はそうはいません。まして、受験するのは小学生です。保護者の方は、まずゴール地点を明確にしてあげるべきではないでしょうか。当然、このゴール地点はその時期に応じて変わっていくと思いますが、それでもやはりゴールは必要です。そこから中学受験は始まるのです。「ゴールにたどり着くには何をすればよいのか」これを塾で学ぶわけです。ですから、「いつ」決定しなければならないのか、については、「常に目標校は持っておいていただきたい」というのが答えになります。

(2) 志望校とは
では、志望校とは何でしょうか。当然、「進学を志望する中学校」なのですが、ここで大事になるのが、「なぜ志望するのか」です。偏差値が高いから、有名だから、大学進学実績があるから……、その理由はさまざまだと思います。確かにそれらは必要条件かも知れません。ただ「それだけ」ではいけないのではないでしょうか。中学・高校の6年間に学ぶもの、それは学問だけではありません。少し大げさになるかも知れませんが「人生の基礎」を身につけるのはある意味この時期だと言えます。そんな大事な6年間を過ごす学校を選ぶわけです。まず、学校の情報をより多く集め、本当にお子さまにあった学校を選択されることをおすすめします。

(3) 志望校選びのポイント
続いて、「何を基準に志望校を選べばよいのか」というご質問が多いので、その際に参考にしていただきたいポイントをいくつかご紹介します。

  • 校風/教育方針……先にも述べましたが、「どんな校風の学校なのか」というのは非常に重要なポイントになると思います。私立中学校は公立中学校とちがい、学校の個性(校風・教育方針)を前面に押し出している学校がほとんどです。例えば、生徒の自由・主体性を尊重する学校、厳しいしつけに力を入れている学校、予備校的な要素が強い学校など学校によって校風はさまざまです。放任されるとだらけてしまう、逆に締め付けられるとストレスを感じてしまうといったお子さまの性格をよく考えて学校を選ばなければなりません。また、私立中学校は6年一貫教育を掲げている学校がほとんどですし、大学までの10年一貫教育をうたっているところもあります。お子さまが中学、高校、また大学と多感な時期を過ごすことになるわけです。当然、学校の校風や教育方針はお子さまの人間形成にも大きく関わってきますので、ご家庭の教育方針とも合わせて考える必要があります。学校の説明会に参加する、公開行事(文化祭・体育祭)に参加する、登下校の様子を見に行く、など、実際にご自身の目で見ることをお勧めします。評判やインターネットの情報サイトも確かに一つの情報ではありますが、それだけに答えを求めないことですね。
  • 附属校(エスカレーター校)・進学校の別……私立中学校は大きく附属校と進学校に分かれます。まず附属校ですが、一口に附属校と言ってもその実はさまざまです。無試験で大学まで進学できる学校、また選抜試験のある学校、推薦制度をとっている学校などの違いは中学校に入学してからの生活に大きな影響を与えます。また、附属校に入学すれば「とりあえず大学はついているのだから」と安心してしまいがちですが、学校によっては大学まで進学できるものの希望の学部に入るには外部受験以上の高倍率の試験にパスしなければならない、推薦枠が非常に少ないなどの問題もあります。逆に附属と名は付いていても、系列大学への進学以外に最難関国公立大学への進学率も見落とせない「進学校型附属校」もあります。これらは受験前に是非チェックしておきたい項目です。一方、進学校ですがこれは上記の校風・教育方針や大学実績・コース設定などを参考にしていただきたいと思います。最近では大学との提携のある学校や、推薦枠つきの学校も増えてきていますので新しい情報には敏感になってください。
  • 大学進学実績……中学受験は最終目標ではありません。教育ということに関してのゴールはやはり大学になります。また、その大学ですら将来の夢のためのステップに過ぎません。ですから、将来医者を志望している人が文系大学に強い中学校に進学するというのはお勧めできませんし、経営の方面で……という方に、理系大学に強い中学校をという場合も然りです。将来の展望を見据えて中学校選びをするというのも必要なことです。このときチェックしておくとよいのが大学進学実績の「現・浪」の別と、過去三年間の実績推移、そして学校の生徒数です。進学実績は単純に実数だけを見ればよいというのではありません。毎年実績を上げてきている学校にはそれなりの理由がありますし、逆に下げてきている学校にもその要因があるはずです。注意して見ておきましょう。また、生徒数と合格者の割合は見落としがちです。「300人の卒業生のうち20人」なのか「150人の卒業生のうち18人」なのかは大きな違いになりますので、実績を見るときには必ず生徒数も考慮してください。
  • 学校偏差値……当然のことながら、この偏差値も重要になってきます。3年・4年時はさほど気にする必要はありませんが、5年の後半から6年生になると、ある程度現実を見ていかなければならないことも否めません。現段階での公開偏差値から20ポイントもかけ離れているような学校を受験するのはいかがでしょう。逆に、確実性を求めて5ポイントも下の学校を受験するのも同じです。現段階での自分の実力をしっかりと把握して、これから努力すれば合格できるだろうという学校を選ぶのがよいかと思います。
  • 入試の出題傾向・入試科目・配点……中学校の受験指導の目安として偏差値が用いられることが多いので、偏差値だけを参考にして志望校・受験校を選んでしまうケースがありますが、これは間違いです。まず入試の傾向ですが、例えば国語一つにしても、記述式の問題が多いのか、選択式が多いのか、また知識事項・漢字の割合はどうか、詩・短歌・俳句からの出題はあるのか……とチェックしておかなければならない項目は数多くあります。理科や社会においては分野別になっていますので学校による差は非常に大きいと言えます。このように入試問題は学校によってまったく色の違ったものに仕上がっていますので、お子さまの得意分野・不得意分野と照らし合わせて考えておかなければならない項目です。各塾の発行している『入試分析集』などを活用して、お子さまが受験する学校の入試にはどんな傾向があるのかをきちんとつかんでおきましょう。また、試験科目や配点も合否を分ける大きな要素の一つと言えます。試験科目は3教科・4教科選択型が主流ですが、大阪方面は算・国に高い配点を与えている傾斜配点の学校がほとんどですし、学校によっては2教科入試を実施するところもあります。5年生の段階ではこれらを気にする必要はまったくありませんが、6年生にとっては大事な問題です。入試までの残り半年のあいだ効率よく勉強して志望校合格をつかみとるためにも必ず夏休み前に先生に聞いておくようにしてください。
  • 特別コース・新コースの設置……学校によっては通常コースと特別コースを分けているところがあります。もともと特別進学コースを設置していた学校もありますが、少子化の進むなか生徒集めのために新しいコースを設置する学校が増えてきました。その主なものは最難関国公立大学への進学をうたった特進コース・英数コースと呼ばれるものですが、最近では医進コース・医薬コースなど医薬系への進学を目指す生徒を育成するためのコースを設置する学校も増えてきました。また、大学と提携している学校や、大学への推薦枠を持っている学校なども特別コースを設置しています。大学進学実績と照らし合わせてチェックしておきましょう。新設コースはまだ実績があがっていませんので学校主催の説明会や秋に実施する『私立中学校説明会』に参加して学校側の取り組みの姿勢を見ておくとよいと思います。
  • このほかにも志望校を決定するときに注意していただきたいポイントはまだあります。『志望校の学習指導やカリキュラムはどうなっているか』、『附属大学から他大学への進学』、『学校設備・施設の充実』、『宗教色』、『男子校・女子校・共学校の別』、『クラブ活動』、『学費や交通の便』……すべて挙げればきりがありませんが、先にも述べましたように、志望校選びは大事なお子さまのあるいは自分の将来に関わる重要な問題です。より多くの資料・情報をもとに親子でじっくりと相談していただいて、本当に通いたい学校を選んでいただきたいと思います。

高校受験

  • 関西に戻られる場合は、前述の通り、帰国生入試の枠そのものが少ない。そのため、私立も公立も一般入試を選ばざるを得ないケースもある。従って、3科の学習を進めるのではなく、5科をきちんと学ぶ必要がある。同志社国際や立命館宇治の帰国入試は、推薦こそ競争倍率は低いが、その他は一般で受験する方が倍率が低い。大学を同志社、立命館に限定するのであれば、これら2校以外の附属校を一般入試で受験する方が良い。公立への進学を考える場合は内申点を確保することも重要。公立、私立とも将来の大学進学を見据えた志望校選びが重要。理科・社会もおろそかにせず、バランスの良い学習を進めてもらいたい。

ORBIT ACADEMIC CENTRE

Q1. 詳細 2017年の受験では、例年と異なる点はありましたか。

  • 前提として、海外生の受験の場合、在籍生徒の個々の事情に大きく左右される要素が多々ありますので、1年単位での塾内での傾向を分析することはあまり意味がないと考えています。数年単位のマクロな視点での傾向を分析する必要があると考えています。その上での傾向分析として、以下のとおり。
  • 英語力重視のトレンドは今後も続く。
    入試問題における英語の難度が年々上がることで、英語力の高い、英語が得意な生徒にとって有利な状況が起こっている。インター歴の長い生徒はもちろん、プラスアルファの英語力を保持する日本人学校生は安定して結果を出している。傾向としては、リスニングや記述(ライティング)、会話表現の増加など、できるだけ4技能の力を測る視点に変わってきている。
  • 一般枠、帰国枠を問わず、中学入試における入試方式が多様化しており、多様な能力やバックグラウンドをもつ生徒を受け入れようとする学校側の意識の変化が読み取れる。
  • 同時に、学力試験だけではなく学校成績や面接試験の重視される傾向が強くなり、学力面だけではなく、人物本位の選抜の色合いも強くなってきている。
  • いずれの変化も、近年のグローバル化の教育面への影響と、2020年の大学入試制度改革を踏まえた学校側の意識の表れであると考える。

Q2. 2018年の受験ではどのような変化を予想していますか。

  • 上記の傾向がますます強くなると思われる。具体的には、2020年の大学入試改革に向けて、単なる知識や技能だけではなく、論理的思考力・判断力・表現力や、主体性・多様性・協働性を測る視点での入試方式や出題形式になっていくと思われる。

Q3. 詳細 これから受験をするお子さまと保護者の方に具体的なアドバイスをお願いいたします。

  • シンガポールの環境は、日本の中高一貫校よりも貴重であることを認識してほしい。長い人生を考えたとき、多感な時期をシンガポールで生活できることは、ますますグローバル化が進展する時代において、人生最大のアドバンテージになる。そもそも志望校合格が人生のゴールではない。
    →「帰国枠資格が使えるうちに帰国して中学受験」という発想は捨てて「シンガポールにいられるだけいたほうが良い」という発想への転換をしてほしい。
    その前提で、シンガポールの環境を活かしつつ、英語学習と両立できるレベルで「どうなっても大丈夫」なように受験準備をしておく。豊かな海外体験がそのまま面接・作文対策につながる。
  • 偏差値やブランド、保護者の経験、価値観のみで学校選びをしない。
  • 国内生とは異なり、多様なバックグラウンドや特性を持つ海外生にとって「良い学校」は個々の生徒によって異なる。
  • 入試制度における多様な入試方式の導入や、教育制度における評価の観点の変化により、従来の偏差値を基準とした学校の序列が崩壊する。産業界におけるパラダイムシフトに表れているように、グローバル化により必然的に教育界においても世界基準の学校評価軸が普及すると思われる。つまり、グローバル時代の教育に即応できる学校や教育を実践しているかどうかがこれからの学校評価軸となる。
  • 高校受験での学校選びやシンガポールでの学校選び(日本人学校かインター校かの選択)は戦略的に選ぶ。なりたい職業、行きたい学部に応じて考える。
  • 入学後の「伸びしろ」を意識した学校選びをする。そのためにも、保護者は自分の子どもの特性を、他人と比較するのではなく冷静に見極めること、生徒自身も自分の特性を客観視することが必要。その上で、シンガポールで身につけた経験や学力、英語力を更に伸ばしてくれる環境かどうか、という視点で学校選びをする。

SAPIX国際教育センター

Q1. 詳細 2017年の受験では、例年と異なる点はありましたか。

高校受験

  • ICU高校(書類選考入試)の志願者が急増している。
  • 慶應義塾高が、2/12から2/10に一次試験実施日を変更した。この結果、開成、桐朋、早実、中大附属、中大杉並などと試験日が重複することになったため、各学校とも志願者数を大きく減らした。
  • 2021年の大学入学共通テスト(仮称)導入への不安から、附属校を志望する生徒が増加したが、一方で筑駒、開成、都立トップ校など5科目入試の進学校の人気も依然として高い状態。
  • 千葉県の私立進学校では、多くの高校の一般入試が理社も含めた5科目の試験になった。
  • 大阪府立高校入試で、TOEFL iBT、IELTS 、英検を利用した制度が始まった。
  • インターネット出願が可能な学校が増加。

Q2. 2018年の受験ではどのような変化を予想していますか。

高校受験

  • ここ数年、開成や筑駒、渋谷幕張など難関進学校にチャレンジする帰国生が増加している。帰国生でも塾やインターネットなど学習環境の整備により、最上位生にとっては理社を含めた5科目受験が一般的になりつつある。
  • 公立高校は制度改革や授業料無償化を背景に大学合格実績を順調に増加させ、都立日比谷、県立横浜翠嵐、県立浦和などの公立トップ校の人気は堅調。また、その影響から桐朋、城北、本郷、巣鴨などの中堅私立高校は公立校人気の影響から受験者を減らしていたが、東京都をはじめとする私立高校無償化制度の充実によって、充実した設備や独特な教育方針などそれぞれの魅力が見直される可能性がある。
  • 私立大学を卒業した学生の就職率が97%を超え、景気回復が数値として目に見えてきたこと、文部科学省通達によって私立大学が合格者を大幅に減らしていること、大学入試改革の先行きが不安なことなどの理由により、早慶やMARCH、関関同立などの私立大学附属に高校から入学したいという受験生が増えている。この傾向は来年以降も続くであろう。

Q3. 詳細 これから受験をするお子さまと保護者の方に具体的なアドバイスをお願いいたします。

  • 在外中にいろいろな経験や活動を通して、豊かな感受性・人間性を身につける。
  • 定期的に模擬試験を受験することで、自分の成績を把握することが大切。模擬試験の偏差値はあくまで現時点での実力を確認するためのもので、明確な苦手教科がある場合には志望校合格のために克服する手立てを講じる必要がある。
  • 長期休暇で一時帰国できることがあれば、一般生と一緒に季節講習を受講し、一般生のレベルや学習量を肌で感じておく。
  • 志望校は早めに決める。学校見学をしたり、文化祭や体育祭を見に行ったりして、その学校の在校生たちの姿や行事の様子を見ておくと良い。
  • 現地滞在中に、可能な限り英語力を伸ばす。

駿台シンガポール校

Q1. 詳細 2017年の受験では、例年と異なる点はありましたか。

中学入試

  • 英語入試が100校を超えた。
  • 試験形態の多様化。
    従来の2教科、4教科受験に加えて思考力入試、プレゼンテーション入試、
    記述問題を課すなど大学入試改革を意識した入試形態の増加。
    上記2点は2018年もその傾向は続く。
  • 午後入試実施校増加
    午後入試ができるようになり、ますます短期決戦へ。2月1日から3日までで
    5校受験する生徒も。

高校入試

  • 慶應義塾 の入試日程の変更 慶應志木→慶應義塾か
    早実→学院というようなパターンへ。従来のように早慶を受けれるだけ受ける形から
    早稲田系列か慶應系列の受験へ。
  • 昭和秀英 3教科から5教科入試へ。入試科目を増やす学校は珍しい。
  • 2016年から都立で実技4教科を重視した入試へ。

Q3. 2018年の受験ではどのような変化を予想していますか。

Q1に記載したとおり、同様の傾向が続くと見られます。

Q3. 詳細 これから受験をするお子さまと保護者の方に具体的なアドバイスをお願いいたします。

  • 第一志望校を比較的早い時期に決めることが大切です。その際には帰国先の状況やご家庭の教育方針、お子さまの性格を踏まえた上でよく話をすることです。その上で、ぜひ学校見学をしてください。一時帰国して学校を見学する機会は限られますので、早め早めの動きを意識することが大切です。
  • 面接対策の基本として、学校に対する魅力を見出しておくことは当然ですが、シンガポールという国に滞在したことの意味について、保護者の方も一緒になって考え、話し合ってみることが必要だと感じます。

WAOシンガポール

Q1. 詳細 2017年の受験では、例年と異なる点はありましたか。

  • シンガポールでの入試を実施する学校が増えたこと。
  • インター生/日本人学校生の両者に配慮する学校が増えたこと。

Q2. 2018年の受験ではどのような変化を予想していますか。

  • シンガポール入試がますます盛んになる。

Q3. 詳細 これから受験をするお子さまと保護者の方に具体的なアドバイスをお願いいたします。

(1) 志望校の選び方

  • 学校の教育方針に共感できるか。周囲の評判ではなく、お子さまやご家庭の方針に合っているかと言う視点で見ること。
  • 実際にお子さまが通学するイメージを思い浮かべ、ドアtoドアで通学が1時間以内で収まる学校を選ぶこと(通学時間は短ければ短い方が良い)。

(2) 偏差値の捉え方

  • 偏差値はあくまでも一つの目安である。過度に一喜一憂しないこと。

(3) 学習の進め方

  • 志望校を決めた上で過去問を解き、傾向や苦手分野を掴んで学習計画を立てること。
  • 志望校が複数である場合は、優先順位をつけて過去問を解いていくこと。

(4) 面接対策

  • 生活において学習だけにとらわれるのではなく、スポーツ・習い事・家族行事などをバランスよく取り入れること。
  • 面接時に困らないように、いくつかの話題をまとめておくこと。
  • まとめた内容を暗記しないで、自然に話せるようにすること。

早稲田アカデミー国際課

Q1. 詳細 2017年の受験では、例年と異なる部分がありましたか。

中学受験

  • 帰国枠入試、英語受験入試を導入する中学が年々増えてきている。もともと帰国枠を導入している中学が、資格を緩和する動きもある。
  • 合格ラインのグレーゾーン化が著しい。帰国枠最難関である渋幕・渋渋・慶應湘南藤沢は英語重視の入試だが、英検1級ホルダーでも落ちてしまう。しかし、英検準1級でも受かるケースもある。選考基準が、これまでの「学力」でなく、新しい基準の学力、すなわち面接や作文で判断する「思考力・判断力・表現力」が重視されつつあるようだ。

高校受験

  • 中学入試同様、合格ラインのグレーゾーン化が著しい。トップレベルの渋幕や慶應湘南藤沢はもちろん、 1月に事前に受けられる中大杉並・ICU・青山学院が、いわゆる「押さえ」にならなくなってきた。やはり、面接試験によって「思考力・判断力・表現力」が重視されていると分析される。

Q2. 2018年の受験ではどのような変化を予想していますか。

中学入試

  • 帰国枠入試、英語受験入試を導入する中学がさらに増加するのではないか。難関中学が、突如として算国2科目や英語入試を実施するかもしれない。大体、夏前くらいにはそれらも判明する。

高校入試

  • 帰国枠導入校が増えることはないだろう。増えたとしても、渋幕・慶應湘南藤沢のように、英検準1級以上の英語力が求められる入試ではなく、一般生と同じ試験を受けて、得点や内申点が優遇される程度だろう。

Q3. 詳細 これから受験をするお子さまと保護者の方に具体的なアドバイスをお願いいたします。

中学入試

(1) 保護者の役割

保護者ばかりが一生懸命になって「とにかく受験する」という態勢はよくない。サッカーが好きなのにバドミントンを無理やりやらせるようなもの。
学ぶこと、努力すること、目標に向かって頑張ることの貴さを知るためのツールとしての中学受験と考えていただきたい。
だとすれば、シンガポールにいる間は、「シンガポールにいるからこその経験」を積むことに重きを置くべき。語学力でもいいし、コミュニケーション能力でもいい。熱帯ならではの科学的、社会的教養を身に着けるのも大事。

(2) 志望校の選び方

上記を考えれば、「我が子に合った中学」を選ぶ基準は見えてくるはず。国内の一般生でも、保護者の希望がお子さまに伝わって志望校が決まることがほとんど。複数選んで、見学に行くなどして、最終的には本人のインスピレーションで志望順位などが決まってくる。
海外にいると見学に参加することは難しいので、「保護者が気に入った中学」の価値を、お子さまにどう伝えるかが大きなカギになってくる。間違っても、ネットでのデータだけを見せて「この中から選びなさい」ということはしてはいけない。

高校入試

(1) 保護者の役割

高校入試は、中学入試と違って本人主体の活動ととらえたい。
お子さまに、「社会人になるために自分の可能性を切り開くもの」という意識を持ってもらうよう誘導することを勧めたい。
「来年あなたは社会人なのだから、自分の将来について真剣に考えなさい。高校で勉強したいのなら自分で可能性を切り開きなさい。学費は出してあげる」というスタンスを提示することである。
自らの意思で、学ぶこと、努力すること、目標に向かって頑張ることの貴さを知るためのツールとしての高校受験と考えていただきたい。
また、海外生・帰国生としてのアイデンティティを持たせるために、シンガポールにいる間は「シンガポールにいるからこその経験」を積めるサポートが必要。語学力でもいいし、コミュニケーション能力でもいい。熱帯ならではの科学的、社会的教養を身に着けるのも大事。手取り足取り教えることは不可能でも、活動に取り組める環境の提供はできる。

(2) 志望校の選び方

高校受験の場合は、「本人による学校選び」も「受験」の一環ととらえたい。中3生であれば来年の今頃は高校生なので、意識は高いはず。
「自分は何者になりたいのか」「自分には何ができるのか」という自分への質問に答えるべく、インターネットの情報や、塾から得られる情報を主体的にリサーチしてもらいたい。
受験資格や合格基準については、保護者や塾の先生に頼るようにする。

中学・高校共通

(1) 偏差値をどうとらえるか

偏差値はあくまでも目安。一般受験も帰国枠受験も、本人の偏差値が、志望校合格に向けてどう有利・不利なのかは、専門家にしか見えないことが多い。特に、帰国枠入試でエッセイや面接を重視する中学・高校の場合は、模試の偏差値基準がまったく役に立たないこともある。

(2) 学習の進め方

志望校によって、同じ科目でもアプローチが違うことが多いので、専門家に相談する必要がある。たとえば、以下のような違い。

  • 選択肢問題が多いのか、記述式が多いのか。
  • 客観問題なのか、主観も問われるのか。
  • 知識重視なのか、思考力が問われるのか。
  • 英検2級で大丈夫なのか、1級でも難しいのか。
  • 英文法が大事なのか、エッセイのコンテンツを見られるのか。

出題傾向は、各中学・高校の「こういう生徒がほしい」というメッセージでもあるので、志望校選びにも大いに関係してくるといえる。

(3)面接の対策

中学・高校によっては、「人間性・人間力・海外経験値をみる」ことが目的だったり、「最低限のコミュニケーション能力をみる」ことが目的だったりする。「面接試験に向けて親子で練習することで受験する中学に対する意識を高めてほしい」と明言する中学・高校もある。
面接試験は、「大きな声ではきはきと元気よく」受け答えができれば大丈夫ともいわれるが、帰国枠入試に関しては一概には言えないのが現状である。高いレベルの「面接力」が求められる場合には、数か月の準備期間が必要で、こちらも専門家のアドバイスに従ってほしい。

取材先(※各学習塾名をクリックすると該当の塾の回答ページに移動します): 
enaシンガポールKOMABA馬渕教室

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